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革靴の手入れ|新品の革靴に手入れが必要な理由

 靴の製造工程は優に100を超える。

 一般的なビジネスシューズで120工程ほど、これが高級本格靴になると190を超える工程をへて、一足の靴が生まれてくる。

 デザインを型紙におこし、裁断、縫製、釣り込み、底付けと続くその工程で、最後を担うのが「仕上げ」である。

 さまざまなクリームや業務用仕上剤を用いて、靴に付加価値をつけていく。もちろん、革が傷まないように、保革の意味もこめて。

 靴作りを仕事にしていた頃、仕上げブースの片隅で、スプレーガンを片手に特殊な仕上剤を駆使し、アイロンをあて、一足ずつ丁寧かつ素早く仕上げていたことが懐かしい。

 革靴は、このようにクリームで保護された状態で手元に届くのだが、実は履き下ろす前の手入れが欠かせない。

 なぜ新品なのに手入れが必要なのだろうか。

 ここでは、新品の革靴に手入れが必要な理由と、その方法をご紹介しよう。

目次

新品の革靴は乾燥している

革靴
リーガルシューズの定番「リーガルウォーカー JJ23AG」を購入した。指の動きを妨げないオブリークトゥー(爪先の形状)が特徴で、オンにもオフにも使える。

 なぜ新品の靴に手入れが必要なのか。その答えは「新しい革靴は乾燥しているから」である。

 製造工程の最後で、クリームを塗布して保革していることはすでに述べた通りだ。

 しかし、できあがった革靴を出荷し、小売店の店先に並び、履く人の手元に渡るまでには数ヶ月以上かかることも珍しくない。

 例えば婦人革靴メーカーの場合、秋冬用のブーツの生産は6月ごろから始まり、春物のサンダルは、秋のブーツ生産が一段落したら――10月末ごろだ――もう始まる。しかし、実際に靴が店先に並ぶのはもっと先のことだろう。

 新品の革靴がいくらクリームで保革されていても、出荷を待つ間に水分や栄養分が抜けて乾燥してしまうのだ。

乾燥した状態で履くと、ひび割れや傷の原因になる

 革靴を乾燥した状態で履くと、革のひび割れの原因となり、傷も付きやすい。柔軟かつ強度にも優れ、足になじむ素材の特性がすっかり失われている状態だ。

 そこで、革靴を履き下ろす前には、ぜひクリームでの栄養補給を施したい。

 クリームを塗布することで栄養を補給し、革の表面に薄いクリームの膜を作る。このひと手間が、傷やひび割れを防ぎ、靴を長持ちさせる秘訣である。

靴の購入と一緒にクリームも購入しよう

 そこで提案したいのが、「靴の購入と同時に手入れ用品を購入する」ことだ。

 靴の手入れ用品は素材に応じた各種の品があり、同じ用途の製品でも、製品ごとに特色が異なる。かれこれ10年以上靴業界に携わった私でも、選ぶのが難しいことがある。

 もし迷った場合は、店員に靴の手入れについて質問してみよう。良心的な店の店員なら喜んで答えてくれるだろうし、靴に合った手入れ用品を提案してくれるだろう。手入れ用品の使い方や修理についても教えてくれるはずだ。

 逆に、手入れや修理の知識のない店員は、少し疑ったほうがいい。

 そうして手に入れたクリームやブラシをうまく使えば、購入した革靴は長く愛用できる。次項から具体的な手入れの方法や、どのぐらいの頻度で手入れを行えばいいのか、について解説する。

革靴の手入れの手順

 履き下ろす前の手入れといっても特別なことはない。通常の靴磨きの手順どおりに進めていく。

 この手順は革靴だけではなく、カバンや財布、レザージャケットなど、革製品であれば広く応用できるので、ぜひ覚えておきたい。

道具をそろえよう

靴磨き
シュートリーをセットした靴と、道具類。リーガルの靴にビルケンシュトックのシュートリーだが、形状が合えば他社製を使っても問題ない。
  • 靴ブラシ(馬毛と豚毛の2種類)
  • 毛羽立たない布
  • 靴クリーナー(新品の状態では使わない)
  • 靴クリーム
  • シュートリー(木製のものがおすすめ)

 靴の手入れに使う道具は上記の通り。このうち、シュートリーは無くても何とかなるが、できれば木製のものを用意したい。

 シュートリーは洋服のハンガーのような役割を果たし、型崩れを防いでくれる。木製のものは革靴の大敵である湿気を吸収してくれるし、なおかつ作業性も向上する。靴に合ったものを、靴の購入時に用意しておきたい。

ブラシでほこりを落とす

 まずは馬毛ブラシでほこりを落とそう。新品の場合は汚れていることはないだろうから、簡単にでよい。履き下ろした後は、使用毎のブラッシングが必須作業となる。

保湿用クリーム(デリケートクリーム)を塗布

 本来の靴磨きは、ほこりを落とした後に靴クリーナーで汚れを落とす。しかし、新品の場合にその作業は必要ないので、デリケートクリームを塗っていく。

 デリケートクリームは、革の栄養分である水と油が中心のクリームだ。伸びが良くシミもできにくいため、幅広い革製品に使えるのが特徴だ。革の保湿にこれほど適したクリームはないだろう。

 新品の革靴は乾燥しているため、デリケートクリームを塗った側から、スッと染みこんでいくのが分かるはずだ。新品の時は布に多めにとり、全体にしっかりと塗り伸ばしていこう。

乳化性クリームを塗布

 乳化性クリームは、水と油に蝋分(ワックス)と染料を加えたクリームで、栄養補給と色落ちの補色、つや出しができる。デリケートクリームを塗布した後は、乳化性クリームを塗っていく。

 乳化性クリームを塗ることで表面にワックスの膜ができる。それにより、傷が付きにくくなり、汚れがついても落としやすくなるのだ。

 靴を長持ちさせるためには欠かせない作業である。新品のうちに必ず乳化性クリームを塗っておこう。

豚毛ブラシでクリームをなじませる

 クリームを塗り終えたら、豚毛ブラシを使って全体にクリームをなじませる。これが靴磨きの”磨き”に相当する作業だ。

 ブラシでクリームをなじませるうちに、徐々に光沢が出てくる。自然な光沢がでればOKだ。最後に毛羽立たない布で余分なクリームを拭き取れば完了である。

 革靴の手入れについてはこちらも参考に。

靴磨きの基本と10年履ける靴の選び方

朝、目が覚めると、先輩がテーブルの上を整理し、おもむろに靴とその手入れ道具を並べはじめた。寝起きで靴磨きを始める光景を見たのは、後にも先にもその時かぎりだ。  その先輩は、顔を洗うよりも朝食をとるよりも、昨日履いた靴の手入れをしなければ気が済まないらしい。  彼の家は一般的な単身者用のマンションであったが、靴の棚だけは、さながら高級ブランド店の陳列棚のように彩られていた。 ...

革靴の手入れの頻度

 さて、革靴の手入れで多い疑問が「どのぐらいの頻度で手入れをすればいいのか」ということだ。

 結論からいうと、汚れを落としてデリケートクリームや靴クリームを塗る本格的な手入れは、2週間に1度程度で十分である。

 靴を数足用意し、ローテーションさせながら丁寧に履けば、そうそう傷むものではない。

 履き終えた靴はシューツリーをセットし、ブラシでほこりを落としてから1日休ませておくといい。保管場所はなるべく風通しがよい場所を選び、靴箱での保管は湿気がたまるためNGだ。

 ただ、靴の状態をよく観察しつつ手入れの頻度を考えよう。

 2週間に1度で十分とはいえ、「革の表面が乾燥しているな」と感じればクリームを塗っておく。雨でぬらしてしまった場合は、まず水分をよく拭き取り乾燥させてからクリームで栄養補給をする。

 このように、靴の状態に応じた手入れが必要だ。だからといって難しく考えることはない。要はお肌の手入れと同じように考え、汚れはしっかり落とし、乾燥してしまう前にクリームで保湿すればよいのだ。

まとめ

 新品の革靴は履き下ろす前の手入れが欠かせない。乾燥した革に栄養を補給し、クリームの膜をつくることで、その靴は長く愛用できる一足となる。

 履き下ろした後は、履くたびにブラッシングをし、2週間に1度はしっかり靴を磨いておきたい。丁寧に磨かれた靴を履けば、まわりからの印象も違ったものになるだろう。

靴の手入れ用品はこちらを参考に

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Takashi

元靴メーカー勤務の職人、現在はWEBライターとしてアウトドア系メディアで執筆しています。靴業界での10年以上の経験、趣味のアウトドア経験を活かして書きます。大阪府山岳連盟「青雲会」所属・読図ナヴィゲーションスキル検定「シルバーレベル」・2018年「狩猟免許」取得・ランサーズ「認定ランサー」・フルマラソンベスト3時間29分。

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