阿里山森林鐡路

旅行

台湾の避暑地「阿里山」への登山列車の旅|おすすめホテルもご紹介

2019年8月19日

台湾の避暑地「阿里山」のホテルで、男性スタッフが観光案内をしてくれた。

「サムライ列車には乗るかい……? そう、サムライ列車だよ」

カウンターごしに丁寧に説明してくれるが、私と妻は、サムライ列車が何のことかさっぱり分からない。

「ガイドブックにはそんなのなかったぞ……」

男性スタッフの隣に座っている小柄なおばあさんが、笑顔で私たちのやりとりを見守っていた。

夏休みを利用して、義父が駐在している台湾を訪れた。台湾といえば台北(タイペイ)や九份(キュウフン)が有名で、もちろん訪れる予定だ。

しかし、今回のメインは、台中の山岳地帯に位置する阿里山を走る、登山鉄道の旅である。それにしても、サムライ列車って何だろう?

目次

世界三大登山鉄道、阿里山森林鐡路(アーリーシャンセンリンティエルー:ありさんしんりんてつどう)とは
旅の始まりは北門(ペイメン)駅から
奮起湖(フェンチーフー)で昼食と乗り換え スタッフがとても親切!萬國別館(ワンコウ・ホテル)
祝山(ヂューシャン)からのご来光

世界三大登山鉄道、阿里山森林鐡路(アーリーシャンセンリンティエルー:ありさんしんりんてつどう)とは

阿里山森林鐡路

阿里山森林鐡路は、台湾の中部にある阿里山山脈の主峰「阿里山:ありさん/アーリーシャン:標高2481m」と、台中の嘉義(かぎ/チヤイー)駅を結ぶ登山鉄道である。

インドのダージリン・ヒマラヤ鉄道、チリからアルゼンチンを結ぶアンデス山鉄道とともに、世界三大登山鉄道の一つに数えられている。嘉義駅を出発した列車は、標高差2000m以上を登りつめるのだ。

1904年、日本統治時代に日本人による森林開発が進められ、1912年にほぼ開通した。それ以来、檜木(ひのき)、扁柏(へんはく)、スギの良材を産出し、日本の名だたる寺社の建材として利用された。

戦後は観光列車として運行されている。阿里山はかつて台湾三大林場の一つだったが、現在では伐採が禁じられ、環境保護や森林観光が推奨される、台湾の主要森林区の一つとなった。

※参考書籍

旅の始まりは北門(ペイメン)駅から

阿里山森林鐡路
北門駅

朝8時すぎ、高鐵嘉義(コウテツ・カギ:新幹線の嘉義)駅に到着してタクシーに乗り込こみ、ドライバーに行き先を告げた。本来は、森林鉄道の始発駅である嘉義駅から乗る予定だったが、タクシードライバーいわく、北門から乗ったほうがいいという。ということで、一駅先の北門(ペイメン)駅に降り立った。

「もしかしてだまされたか?」と不安がよぎったが、実はそうではなかった。

近代的な嘉義駅よりも、あえて一駅先に進み、往年の森林鉄道の駅を彷彿(ほうふつ)させる「北門駅」から乗る観光客も多い。ドライバーは「嘉義駅よりも北門駅を見たほうがいいよ」と伝えたかったのだ。おかげで、木造でレトロな駅舎の雰囲気を楽しめ、当時の森林鉄道の様子を垣間見られた。

タクシー料金も400元(日本円で約1,440円)と、高鐵嘉義から嘉義までの金額で、その先の北門駅まで行ってくれたようだ。ありがとう、タクシードライバー。

駅周辺を散策して、いよいよ到着した列車に乗り込む。念のために窓口で切符を確認してもらった。

「この切符で乗れますか?」

「もちろんだよ! でも、切符にある十字路(シーツールー)駅までは行かないよ。終点は途中の奮起湖(フェンチーフー)駅までだ。そこで払い戻してもらってね!」

なんだと、途中までしか行かない? 予想外の返答にこの先の旅程を心配したが、とにかく列車に乗り込んだ。

奮起湖(フェンチーフー)で昼食と乗り換え

阿里山森林鐡路 奮起湖
奮起湖での乗り換えの風景

阿里山森林鐡路は、本来は嘉義駅から阿里山駅まで運行されていたが、現在は自然災害の影響で、途中の十字路駅、もしくは、さらに手前の奮起湖駅までしか運行されていない。

購入した切符は十字路駅行きである。てっきり十字路駅まで行けると思っていたので、奮起湖駅からの交通がわからない。まぁ、慌てても仕方がないので、散策しながら昼食をとることにした。

登山食堂のお弁当

奮起湖
奮起湖駅の鉄道レストラン

駅からすぐの商店で「登山食堂」という看板が目に入った。その屋台のような店舗の軒先には、椅子とテーブルが並んでおり、数人の観光客が弁当をおいしそうに頬張っていた。

台湾でも弁当(便當)は人気で、さまざまなコンビニや駅で売られている。弁当は日本統治時代に日本から持ち込まれ、台湾の文化に浸透したようだ。

「登山食堂」の窓口で「軟焼肉(メンシャオロー)弁当:130元:約470円」を注文すると、温かい弁当がでてきた。

「ここで食べますか? そこのテーブルを使うといいよ」

登山弁当

軟焼肉弁当は、日本の生姜焼き弁当に近かった。豚肉をタレにからめて焼いているようで、肉は生姜焼きよりも分厚く、そして生姜は入っていない。醤油ベースの甘辛いタレは日本人も大好きだろう。

おかずの下には白ご飯がいっぱいに詰められていた。付け合わせには、ごま油の香りがただよう青梗菜(ちんげんさい)や、きゅうり、人参が添えられている。

びっくりしたのは、ご飯を口の中にかきこみ、梅干しをつまんだ時だ。梅干しがスイーツのように甘いのだ。

後日、台北の九份でお茶を楽しんだ時に、お茶請けに甘い梅干しがあって納得した。なるほど、これは食後のデザートだったのだ。

奮起湖
奮起湖にはSLが展示されていた。

弁当を頂いてから、ふたたび駅の窓口に向かう。ここから先、阿里山にはバスで行けるようだがチケットの購入方法が分からなかった。

「すみません、阿里山へ行きたいのですが、バスのチケットはここで買えますか?」

「阿里山へ行きたいんだね? 僕が案内するよ」

台湾の人は本当に親切だ。若い駅員が満面の笑みで案内してくれた。

「バスは悠遊卡(ゆうゆうカード)で乗れますか?」

「もちろん!」

悠遊卡とは台湾の交通系ICカードのことだ。日本のカードと同じように、交通機関だけではなく買い物にも使える。空港や駅の券売機、コンビニなどで購入・チャージができる。台湾を訪れたら手に入れておこう。

スタッフがとても親切!萬國別館(ワンコウ・ホテル)

阿里山
阿里山のバスターミナル

奮起湖からバスに揺られること約1時間。ついに阿里山に到着した。エントランスゲートで阿里山国家森林遊楽区の入場券を購入し、まずは旅遊服務中心(ツーリストサービスセンター)に向かう。

ホテルは義父が代理で「ワンコウ・ホテル」を予約してくれた。しかし、予約情報のダウンロードをうっかり忘れ、台湾でのwifi契約もしていなかった。ホテルの名前は分かるが、住所もチェクイン時間も電話番号も分からない。それでよく阿里山までたどりつけたものだ。

ツーリストサービスセンターでホテルの場所を聞いた。

「您好!(ニーハオ:こんにちは)ワンコウ・ホテルはどこですか?」

スタッフが地図を出して説明してくれた。

「ここを出てすぐ左に曲がって、階段を降りたら右に曲がってください」

「わかりました、あっちですね?」

私が明後日の方向を指さすと、スタッフは大きな声と身ぶり手ぶりで、もう一度し説明してくれた。ちょっとイラッとしたようだ。

「ちがうちがう、左だよ左! 階段を降りたら右ね!」

「OK、こっちですね。谢谢!(シェーシェ:ありがとう)」

ごめんねスタッフさん。丁寧に説明してくれたのだが、問題は私の英語力である。

萬國別館

ツーリストサービスセンターから5分もかからず、無事にワンコウ・ホテルに到着した。時間は午後14時30分を過ぎているし、たぶんチェックインできるだろう。ホテルのカウンターに向かうと、男性スタッフが対応してくれた。

「予約していた川口です」

「OK、パスポートをみせてください……宿泊代から前金を差し引いて、残り1200元いただきます」

「これが部屋の鍵です。荷物をおいて一息ついたら、観光の案内をしますから、カウンターに来てくださいね。それと、トイレの紙は流さず、ゴミ箱に捨ててください」

「シェーシェ!」

その男性は、色黒で痩せ型、メガネをかけていて優しそうな雰囲気だ。たぶん40代ぐらいだろうか。英語が堪能である。穏やかな口調で、英語が苦手な人でも理解できるよう、簡単な単語でゆっくりと説明してくれた。

その隣には、70代ぐらいの小柄なおばあさんが座っていた。たぶん男性のお母さんだろう。家族で経営しているようだった。日本語も英語もあまり分からないようだったが、私と男性のやりとりを、隣でにこやかに眺めていた。

部屋は広さ12畳ほどの洋室で、ツインベットが中央に備えられている。壁には薄型の液晶テレビがかけられ、室内にシャワー・トイレルームがある。部屋の窓際の小さなデスクには、ホテルの案内や観光パンフレットがきれいに並べられていた。

荷物を置いてシャワーを浴び、観光マップを手にふたたび男性のもとへ向かった。

「観光を案内するね。今、ここにいます。レストランやお土産やさんはホテルの南側のエリアで、階段を登ればすぐだよ」

ホテルから5分ほど歩いた場所に商店街やレストラン街があるのだが、その手前にある階段がくせものだった。ほんの20〜30段ぐらいの階段で駅の階段を登るようなものだが、ここは標高2100mである。酸素がうすい。階段を上っただけで息が上がってしまい、これにはまいった。

阿里山観光マップ
阿里山の観光マップに、所要時間や観光ポイントを詳しく書き込んでくれた。

「遊楽区には遊園バスが走っているから利用するといいよ。バスから降りて、ここまでは歩いて20分ぐらい……ここまでは歩いて30分ぐらい。全部歩きだと1時間10分ぐらいかな」

男性は地図を指差して説明しながら、時間や観光ポイントを地図に丁寧に書き込んでくれた。その熱心な仕事ぶりと、おもてなしの精神に感激した。隣では、やはりおばあさんが和かにやりとりを見守っている。

「ところで、サムライ列車には乗るかい?」

私と妻は顔を見合わせてポカンとした。

「サムライ、サムライ……サムライ列車だよ」

男性は私が英語を聞き取れなかったとみて、ゆっくりと言葉を繰り返してくれたが、それでも何のことかわからない。観光列車の一種だろうか?

世界一の親日国と言っても過言ではない台湾のことだ。列車には日本のお城や桜吹雪が描かれ、甲冑(かっちゅう)を身につけた添乗員がパフォーマンスしてくれる情景が目にうかぶ。しかし、なぜ阿里山で?

「サムライ列車、サムライ列車……、えっと……4時30分、チケットは阿里山駅で買えるよ」

朝4時30分、ずいぶん早い時間ではないか。いやまてよ?

「4時30分、阿里山駅……あぁ! 日の出列車!」

サムライ……サムライ……sun(サン)ライ、sunrise(サンライズ:日の出)。

ようやく理解できた。”sunrise”がサムライに聞こえていたのだ! やっと伝わったと安心する男性と、笑いころげる私と妻。台湾での空耳アワー事件である。

  • 住所:605嘉義縣阿里山鄉中正村45號
  • 電話:+886 5 267 9777
  • 公式WEBサイト:http://wanguo.emmm.tw/?ptype=info
  • 言語:日本語× 英語は通じます

宿泊予約は世界中8000万人が利用する話題のホテル検索サイト『トリバゴ』、もしくは【Booking.com】がおすすめ。

九九九餐廳(999レストラン)で夕食

阿里山
レストランと商店街

阿里山駅で日の出列車の切符を購入し、レストラン街を散策した。店を見てまわると、観光者向けの中級レストランと、屋台とレストランの中間のような、庶民的な食堂があった。私たちは台湾のローカルフードを味わいたくて、迷わず庶民的な食堂へ向かった。

入店するとーーといってもドアはないーー店員からメニューを渡されるも、写真がなく漢字がずらりと並んでいるだけだ。しかし、そこは同じ漢字を使う日本人だ。漢字を見ながら料理を想像して注文した。思い通りの料理が食べられるだろうか。

  • 麻婆豆腐(マーボードウフ。これはわかる):120元
  • 炒牛麵(チャオミューメン):80元
  • ちゃんぽん麺(料理名を記録するのを忘れた):80元
  • TAIWAN BEER 600ml:80元
  • しめて360元(日本円で約1,300円)
阿里山 九九九餐廳

私が注文したのは「炒牛麵」である。炒めた牛肉をのせたラーメンを想像していたが、炒められていたのは麺のほうだった。つまり焼きそばだ。想像とは違った料理だが、うまいので良しとする。

中華料理は辛くて油っこいイメージがある。しかし、中華の中でも台湾料理は薄味で日本食に近いものを感じた。麻婆豆腐にはグリーンピースと人参が入っており、辛さの中にも優しい甘みがある。TAIWAN BEERは、キリンやアサヒの辛口ビールとはちがい、フルーツ系のクラフトビールのようだった。

2人前で1300円。満腹、幸せである。

台湾で最も標高が高いセブン-イレブン

阿里山 セブンイレブン

阿里山駅の近くには、24時間営業のセブン-イレブンがる。「セブン-イレブン神木店」は標高2200mであり、台湾のセブン-イレブンで最も標高が高い。ちなみに、日本で最高標高のコンビニは、長野県の「ローソン 白樺湖蓼科店」の1420mである。店内のスナック菓子の袋が、気圧の関係でパンパンに膨らんでいたのが面白かった。

祝山(ヂューシャン)からのご来光

阿里山森林鐡路

午前4時にホテルを出発し、息をきらせながら階段地獄を登りきり、阿里山駅にて「日の出列車」の到着を待った。

阿里山駅から列車で30分ほどの「祝山」からのご来光は、阿里山観光の名物である。しかし、当日はあいにくの雨で霧が濃かった。おそらくご来光はおがめないだろうが、せっかく切符を買ったし、祝山駅まで出かけてみた。

祝山駅のすぐ目の前には「祝山展望台」がある。多くの人はここからご来光を望むが、前日にホテルで詳しく教えてくれていた。

「祝山駅から少し歩くけど、小笠原展望台まで行ったほうがいいよ。そこには360度の展望が広がっているんだ」

「もし何か分からないことがあったら、いつでも聞いてね」

本当に親切に教えてくれて、感謝している。

小笠原展望台には、数名の観光客が傘をさしながら日の出を待っていた。日本語もちらほら聞こえてくる。

「すみません、東の方角はどちらか分かりますか?」と日本人女性にたずねられ、こちらですよと説明したその先の視界は、雨と霧で真っ白であった。

小笠原展望台

日の出予定時間は午前5時40分。予定時間を過ぎて、辺りはすでに明るくなっていたが、残念ながら太陽の姿は見えない。

「これは見えないなぁ……」

どこからともなく日本語が聞こえてきた。先ほど方角を訪ねてきた女性も、とぼとぼと駅に向かって歩きだした。心残りだったが天候だけはどうにもならない。台湾は近い、また来ればいいじゃないか。

ホテルで荷物を整理して、カウンターに向かうと昨日の小柄なおばあさんが座っていた。

「チェックアウトします」

「あぁ……チェックアウト……チェックアウト」

そう繰り返しながら、おばあさんは何とも名残惜しそうな表情をみせた。この時のおばあさんの顔が脳裏に焼き付いている。

「バイバイ、バイバイ」

おばあさんは寂しさと笑顔が混じった顔で手をふった。

「また来ます! 谢谢!(シェーシェ)」

無事に阿里山にたどり着けたのも、いろいろサポートしてくれた義父やタクシードライバー、駅の係員、ツーリストセンターのスタッフ、そしてワンコウ・ホテルのスタッフのおかげだ。駅やバス停を歩いていると、地元の人が声をかけてくれた。その人たちの親切のおかげで台湾旅行を楽しめたのだ。

ここを離れるのが名残惜しかったが、気持ちを切り替えて、嘉義駅行きのバス停に向かって歩き出した。

台湾は近い。台湾人の人懐っこさと温かさが恋しくなったら、また訪れればいいのだから。

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  • この記事を書いた人

Takashi

元靴メーカー勤務の職人、現在はWEBライターとしてアウトドア系メディアで執筆しています。靴業界での10年以上の経験、趣味のアウトドア経験を活かして書きます。大阪府山岳連盟「青雲会」所属・読図ナヴィゲーションスキル検定「シルバーレベル」・2018年「狩猟免許」取得・ランサーズ「認定ランサー」・フルマラソンベスト3時間29分。

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