登山のための体を作る具体的なトレーニング方法と糖質制限食

 登山愛好家なら、誰しもが安全に快適に、余裕をもって山を楽しみたいと考えることだろう。山行のたびにバテてしまっては、せっかくの楽しみが半減してしまう。

 そこで大切なのが、日常のトレーニングと健康的な食習慣だ。ここでは、僕が実践するトレーニングと糖質制限食をご紹介しよう。

目次

登山に必要な体力とは

登山

 登山には、持久力や筋力、俊敏さ、柔軟性などさまざまな身体能力が求められる。特に重要なのが、筋持久力と全身持久力である

 登山は有酸素運動であり、運動強度が適度に高く、長時間にわたる運動だ。それに耐えられるだけの心肺能力や筋力が欠かせない。

 とはいえ、登山は歩く運動であり、瞬間的なスピードやパワーは必要ない。100m走をウサギだとすると、登山はカメのスポーツだ。高い身体能力を必要としないため、年齢を重ねても楽しめる生涯スポーツである。

 だが、登山の負荷は予想以上に高いことが次の表で分かるだろう。

運動の強度運動の種類
7メッツ台一般的な登山、ジョギング、サッカー、テニス、スケート、スキー
8メッツ台バリエーション登山、ランニング(分速130m)、サイクリング、水泳、階段を上がる
9メッツ台トレイルランニング、クロスカントリーラン、ボクシング:スパーリング
10メッツ台ランニング(分速160m)、柔道、空手、ラグビー
11メッツ台ロッククライミング、速く泳ぐ、階段を駆け上がる、ランニング(分速180m)

 メッツとは運動の強度を数値化した単位のこと。登山はジョギングやランニングと同等の運動強度であり、それに耐えられる体づくりが必要なのだ。

登山のための具体的なトレーニング方法3選

 登山の体づくりには、以下の3つのトレーニングをおすすめしたい。

  1. 山行回数を増やす
  2. ジョギング
  3. 階段トレーニングと歩荷(ぼっか)

 それぞれ詳しく見てみよう。

1.山行回数を増やす

 登山は不整地の坂道を長時間歩くスポーツである。そのための歩行技術は、山に行くことでしか身につかない。山行そのものが、大切なトレーニングなのだ。

 登山の励行も重要である。これは山に行く人ほど疲労しにくいというきれいな関係となる。

引用:登山の運動生理学とトレーニング学(著)鹿屋体育大学教授 山本正嘉『登山時の疲労しやすさに関わるさまざまな要因』

 上記は、鹿屋体育大学の山本教授が『登山時の疲労しやすさに関わるさまざまな要因』についてのアンケート結果による考察だ。

 それによると、登山の体力は基本的に年齢や性別は関係がなく、山行頻度の高い人ほど疲労しにくいという。

 僕は幸いにも自宅近郊に手頃な低山があり、最低でも週に一度は山に出かけている。

 月に1回の山行よりも2回。さらには週に1回と、なるべく山行回数を増やすことが、良いトレーニングとなるのだ。

2.ジョギング

 山行回数を増やすことがトレニーングになるとはいえ、毎週山に出かけることが難しい人も多いだろう。そんな人におすすめなのがジョギングである。

 前述のように、一般登山はジョギングと同程度の負荷であり、登山にはジョギングに耐えられる体力が必要である。

 また、ジョギングは登山のトラブルを解決するのに効果的なトレーニングでもあるのだ。

 たとえば筋力トレーニングをしている人は……(中略)トラブルの発生率が小さい。ジョギングをしている人ではもっと多くのトラブル防止に効果的であることがわかる。

引用:登山の運動生理学とトレーニング学(著)鹿屋体育大学教授 山本正嘉『日常のトレーニング種目と登山中のトラブル発生との関係』

 具体的には、息を切らさない、会話ができる程度のスピードで、30分〜1時間のジョギングを、週に4回程度行うとよいだろう。

クッションのない足袋やルナサンダルで走っている。

 さらに僕の場合、普通のジョギングではなくナチュラルランニングを実践している。

 ナチュラルランニングとは、もっとも理にかなった人間本来の走り方のこと。クッションの効いたシューズを脱ぎ捨て、裸足感覚シューズで走ることで、人間本来の理想のフォームへ近づくことができる。

 登山の歩行技術の基本である”フラット着地”も、ナチュラルランニングを実践することで自然と身につくだろう。

 ただし無理は禁物だ。

 長年にわたりシューズで保護されてきた足をいきなり開放すると、故障の原因となる。1km程度の距離から徐々に慣らすことが大切である。

 ナチュラルランニングとルナサンダルについてはこちらの記事を参考に。

3.階段トレーニングと歩荷(ぼっか)

登山 歩荷
米10kg、水、ダンベルなどを背負って階段を登り下りする。

 全身持久力と筋持久力を同時に鍛えられるのが、階段を使った歩荷トレーニングだ。

 歩荷トレーニングとは、普段の登山より重たい装備を背負って歩くトレーニングのことである。これを僕は自宅マンションで行っている。

 例えば、1階〜10階(標高差約34m)を10往復すれば、標高340mの低山山行と同等の負荷を体にかけられる。これにより、実際に山に行けなくても、擬似的な山行回数を増やせるといえるだろう。

 また、医療機関の遠い山中で体力を追い込むのはリスクがあるが、自宅マンションならそのリスクが小さい。(たまに住人に驚かれることがリスクといえばリスクか……)

 大学山岳部の歩荷では30kg〜40kgを背負うようだが、僕にはまだ無理だ。現在は20kgを背負っている。

 このように、体力に応じて回数や重量を調整し、主観強度で『ややきつい」程度のトレーニングを繰り返せば体は強くなるだろう。

 地味で面白味のないトレーニングではあるが、山に行けない人にとっては手軽で効果的なトレーニングである。

  • <参考>:『登山の運動生理学とトレーニング学』(著)鹿屋体育大学教授 山本正嘉『階段トレーニングの見直し方』

食習慣を見直そう:糖質制限食とは

 体づくりには、筋力や心肺のトレーニングと共に食習慣の見直しも欠かせない。そこで僕が実践しているのが「糖質制限」である。『スピードハイク入門:著 片山 貴晴 』を参考に始めてみた。

 糖質制限とは、食事の三大栄養素(炭水化物:糖質と食物繊維、タンパク質、脂質)のうち、血糖値を上昇させるのは糖質のみ、という原理に基づいた食事療法のことだ。 

 糖質を制限することで食後に血糖値が急上昇するのを防ぎ、インスリンの大量分泌を防ぐことが目的だ。

 インスリンとは、体内の血糖値を一定に保つ役割を担うホルモンのこと。

 血液中の糖質をエネルギーとして取り込むほか、余分な糖質を脂肪として蓄える働きをする。それゆえ、インスリンは肥満ホルモンとも呼ばれている。

 食事から得られない糖質は、体内の不要不急のタンパク質を材料に糖を生成する『糖新生』というシステムで補うため、血糖が不足することはない。

 さらに、糖新生で糖を生成するにはそれ相応のエネルギーが必要だ。

 そのエネルギーは脂肪を分解してまかなう。だから糖質制限を行えば、普通は痩せるのだ。

 ダイエット効果のほか、糖質制限では食後の急激な血糖値の上昇や、インスリンの大量分泌がなく、代謝やホルモンバランスが乱れない。

 おかげで、食後の眠気を感じることもなくなったし、頭がすっきりするのを実感している。

糖質制限は簡単に実践でき、効果は10日ほどで実感できる

 糖質制限は簡単に実践できる。

 糖質を含む炭水化物やお菓子類を控え、タンパク質や脂質を多く含む食品をたくさん食べればいい。カロリー制限の必要もなく、お酒も糖質の少ないものを選べば飲める。

 今日の食事から主食を抜いてみる、それだけで実践できる手軽さもいい。

 さらに効果を感じるスピードも早く、10日も続ければ何かしらの変化が体に表れるはずだ。

 僕は日常のトレーニングに加え、2020年1月から糖質制限をスタートし、2月現在でマイナス5kgの減量に成功した。

 とはいえ、いきなり米や小麦(パスタやパン)を抜くことが難しい人もいるだろう。その場合は、糖質制限プログラム「NOSH – ナッシュ」 ダイエット向けの宅食サービス などのバランスの良い糖質制限食を試してみるのもひとつである。

 僕の場合、糖質制限が体にフィットしたので続けているが、生活や食事は人それぞれだ。気軽に始めてみて、合わなければ元の食事に戻せばいい。

 もちろん、持病がある人や糖質制限の影響が心配な人は、医師に相談してから試してほしい。糖質制限につては「糖質制限とは|糖質制限を1ヶ月実践して体に起きた変化」も参考に。

  • <参考書籍>
  • 『人類最強の「糖質制限」論』(著)江部康二
  • 『炭水化物が人類を滅ぼす』(著)夏井 睦
  • 『スピードハイク入門』(著)片山 貴晴

登山の体力レベルを知る方法

登山 六甲タイムトライアル
引用:日本山岳会

 体力トレーニングを続け、食習慣も見直した。そこで「自分には登山の体力が身についただろうか?」という疑問が浮かぶだろう。そんな時は、『六甲タイムトライアル』を試してみよう。

 六甲タイムトライアルとは、関西山岳ガイド協会の三輪文一氏が提唱する、神戸の低山・六甲山で行う体力テストのことである。

 阪急芦屋川駅をスタートし、六甲最高峰までの標高差約1000m、標準タイム3時間35分のコースのタイムを計測し、山行の体力度をテストするのだ。

 例えば、4時間6分以上かかる人は低山ハイキングでも心許ないし、3時間5分以内で登れる人は、夏のバリエーション登山や雪山一般ルートでも問題ない、とされている。

 遠方の人は難しいかもしれないが、関西近郊の人で体力レベルを知りたい人は、六甲タイムトライアルを試してみてほしい。このコースの詳細は「六甲山の登山ルートガイド|芦屋川から六甲山最高峰〜有馬温泉を目指そう!」を参考に。

 登山を快適に楽しむためには、日常のトレーニングと健康的な食習慣が欠かせない。その中でも、なるべく山行回数を増やすことや、ジョギング、歩荷トーレニングが効果的である。

 トレーニングと共に大切なのが食習慣だ。僕は糖質制限食で体をしぼったが、生活や食習慣は人それぞれ。興味のある人は試してみてほしい。

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