暗い谷筋を息を切らしながら登っていくと、登りついた稜線には視界を遮るものはなく、パノマラ展望が広がっていた。
気持ちよい汗をかいた後、山頂で食べる弁当は何気ないのに特別で、見上げた空は過去のどの空よりも最高に青く、眼前に広がる山々の稜線は遥か遠くまで連なって見えた。
ハイキングの魅力は僕の拙い語彙ではとでも言い表せそうにない。そのハイキングを安全に、最高に楽しむためには装備が必要だ。これからハイキングを始めたい人は、何を用意すればいいだろうか。
ここでは「ハイキングを始めてみたいけど用意すべき持ち物が分からない」という人のために、持ち物リストをご紹介したい。
目次
ハイキングの持ち物リスト
カテゴリー | 装備 |
---|---|
ベーシックな登山道具 | バックパック(20~30L) |
登山靴 | |
レインウエア・雨具 | |
防寒具・着替え | フリース・ダウンジャケット・グローブなど |
着替え(靴下・Tシャツ・乾いたタオルなど) | |
ナビゲーションツール | 地形図、ガイド地図 |
コンパス | |
スマートフォンと地図アプリ | |
水と食料 | 水筒 |
弁当・行動食 | |
緊急用装備 | ヘッドライト |
ファーストエイドキット | |
エマージェンシーキット | |
生活道具 | タオル(手ぬぐい) |
ティッシュ・ロールペーパー | |
日焼け止め | |
貴重品 | |
時計 | |
保険証 | |
ゴミ袋 その他 |
上記の表は、無積雪期に近郊の低山ハイキングを想定した場合に最低限用意しておきたい装備の一例である。
ハイキング初心者にとって『道具やウエアは何が必要か』ということは大きな悩みのひとつだろう。表を参考に道具をそろえれば、まず間違いない。ステップアップして山ご飯を楽しんだり、テント泊山行に出かけたりしたい場合は、少しずつ道具を追加していけばいいのだ。次項から、最低限用意したい装備と必要な理由をご紹介しよう。
ベーシックな登山道具

- バックパック
- 登山靴
- レインウエア・雨具
これら3点の道具は『三種の神器』と呼ばれ、ハイキングはこの3点をそろえることからスタートする。
どの山を目指すかにもよるが、バックパックは20〜30Lクラスの体に合ったサイズのものを用意し、登山靴も足に合ったモデルを選ぶことが基本だ。意外かもしれないがバックパックにもサイズがあり、靴とともに店頭でフィット感を確かめて購入するのが望ましい。

そして、忘れてはならないのがレインウエアだ。上下セパレート式の、防水透湿素材を使用した登山用モデルを選び、たとえ晴れでも必ず持参したい。
レインウエアは雨の侵入を防ぎ、体が冷えるのを防いでくれる。体がぬれて体温が奪われると大変危険であり、夏山でも低体温症で命を落とした事例もある。このあたりは『10分で学べる登山の服装・【レイヤリング】が大切なその理由とは』を参考にしてほしい。
雨が降らなくてもレインウエアは防寒着にもなる。必ずバックパックに携帯しておこう。バックパックや登山靴の記事も参考に。
防寒具・着替え

- フリース
- ダウンジャケット
- レインウエアを防寒着としても活用する
上で述べたように、ハイキング中に体を冷やすことは危険である。季節に応じた防寒着を用意しておこう。
山の気温は都市部の天気予報があてにならない。標高が100m上がるごとに0.6度気温が下がり、風速が1m上がるごとに体感温度が1度下がる。大汗をかいて下着がぬれてしまったら、さらに体感温度は下がってしまう。

体温の低下を防ぐために、フリースやコンパクトにたためるダウンジャケットなどを用意しておきたい。真夏であれば、レインウエアを防寒着として兼用するのもひとつの手だ。
ナビゲーションツール

- 地形図およびガイド地図
- コンパス
- スマートフォンと地図アプリ
都市近郊の里山であっても、山と高原地図に代表されるガイド地図や地形図、コンパス、そしてスマートフォンの山地図アプリを必ず用意しておきたい。それは山岳遭難の大きな原因である『道迷い』を防ぐためだ。
警察庁の『令和元年における山岳遭難の概況』によると、令和元年(2019)に発生した山岳遭難事故は2,531件であり、原因別では『道迷い』が38.9%ともっとも多かった。スマートフォンが普及し、各社から山地図アプリが提供され、地図の確認は以前と比べものにならないほど容易になったのに、これはどういうことだろう……。
実は、山岳遭難は高く険しい山ばかりで発生するのではない。ハイキング初心者がこれから登るであろう、近郊の里山こそ道迷いが発生しやすいのだ。
里山には登山道以外の道、例えば林業の作業道や鉄塔の保守作業道などが縦横に走っており、必ずしも道標が整備されているとは限らない。道標もなく、地図にも表記されていない分岐に出合ったとき、正しい判断を下す自信があるだろうか。

とはいえ、地形図やガイド地図の使いこなしは初心者にとっては難しい。だからこそ、グーグルマップ感覚で扱える各種山地図アプリを必ずインストールしておきたい。分岐や休憩ポイント毎に地図アプリを確認すれば、道迷いにおちいる可能性をグッと下げられるだろう。山地図アプリや地図の基本的な使い方は以下の記事を参考に。
水と食料

- 水筒
- 弁当・行動食
ハイキングは想像以上にエネルギーを必要とするスポーツだ。国立健康・栄養研究所身体活動のメッツ表によると、一般登山の運動強度はジョギングやサッカー、スキーなどに相当する。その強度に耐えられるだけのエネルギー、つまり水や食料を持参しなければならない。
基本は昼食用に弁当を用意し、行動中にすぐ食べられるナッツ類やエナジーバーなどを持参するといいだろう。出かける山やコースにもよるが、水は夏場なら2リットル、冬場は1リットルを目安に用意すればまず大丈夫。
行動中はお腹が空く前に行動食をつまみ、喉が乾く前に一口水分を含む。こまめに補給することが大切だ。
緊急用装備

- ファーストエイドキット
- エマージェンシーキット
- ヘッドライト
あまり考えたくないことだが、ハイキングは怪我をしたり、毒虫に刺されたりといったリスクがつきまとう。もし事故にあっても街中のようにすぐ病院に行けるわけではない。必ず応急手当ができるファーストエイドキットを携帯しておこう。

さらに、もし何らかのアクシデントで予定が遅れた場合に、ヘッドライトを用意しておくこと。経験者なら分かってもらえるだろう。街灯のない真っ暗闇の山中は恐ろしい。視界が効かず、宿泊装備を何も持たずに山中に取り残されたら——。
ヘッドライトの明かりさえあれば暗闇の山中でも比較的安全に行動できる。ヘッドライトは「持って行こうかどうしようか……」と悩む道具ではない。必ず携帯しておくこと。緊急用装備の具体的な中身は以下の記事を参考に。
生活用品

- タオル(手ぬぐい)
- ティッシュ・ロールペーパー
- 日焼け止め
- 貴重品
- 時計
- 保険証
- ゴミ袋など
最後に紹介するのは各種生活用品だ。タオルやティッシュペーパーは何かと役に立つし、今のご時世ならマスクや消毒液が装備に加わるだろう。視力矯正が必要な人は眼鏡やコンタクトレンズの予備も必要だ。個人が必要であろうものを考えてリストに加えてほしい。以下の記事では生活用品の一部、僕のお気に入りをご紹介しよう。
いきなり道具をそろえるのは大変!そんなときはレンタルサービスを利用しよう
以上の装備が、無積雪期の里山ハイキングに用意したい持ち物リストだ。これらの装備があれば、当面は安全に楽しく山を楽しめることだろう。
ただ「以外と道具が必要なんだ」とか「山道具は高価なんだなぁ」と、戸惑う人もいるのでは? 山道具は命を守るための道具だから、日常生活で使う道具より高品質で高価だ。いきなり全てをそろえるのは躊躇(ちゅうちょ)するかもしれない。そんなときは登山道具レンタルサービスを利用してみよう。
- 登山レンタルなら「そらのした」
- 登山道具のレンタルなら【やまどうぐレンタル屋】
まずはレンタル用品とハイキングに使えそうな所持品で山を歩いてみて、趣味として続きそうなら少しずつ道具を購入するのもいい。僕も現在の装備に行き着くまでに約8年ほど費やしている。
山道具は高価だが、耐久性が高くそうそう買い換えるものではないから、レンタル用品でじっくりと試してみてから本当に気に入った道具を用意すれば失敗もないだろう。
道具をそろえたら、さっそく山に出かけてみるべし。多くのハイカーを魅了してやまない、素晴らしい世界がそこには広がっているのだ。