60年代から変わらない、トンボ鉛筆のフラッグシップMONO100

トンボ鉛筆 MONO100

 手にした瞬間“これだ”と確信した。

 黒い軸に金色の箔押し、そこにはhighest quality(最高品質)と刻まれている。黒、といっても、その色の中にはグラデーションが存在し、色々な黒がある。「トンボ鉛筆MONO100」はわずかに青みがかった漆黒の軸色だ。手にした瞬間しっとりと手になじみ、筆跡はあくまで濃く、なめらかに筆記できるのは、さすがトンボ鉛筆の最高級品だけはある。

60年代に生まれたMONOの歴史

トンボ鉛筆 MONO100
重厚なケースに納められたMONO100。しかし脱プラスチックの観点から、紙パッケージに変更されないだろうか……。

 1913(大正2)年創立のトンボ鉛筆は、国内鉛筆メーカーにおいて三菱鉛筆と双璧をなす存在である。子供のころ、同級生とトンボ派、三菱派に分かれ、鉛筆選び論争を交えた人も少なくないのではないか。

 トンボ鉛筆が初代高級鉛筆「MONO」を発売したのは1963(昭和38)年8月、当時の価格で1本60円だった。これは日本銀行が発表する企業物価指数で考えると、2020(令和2)年の物価指数が1965(昭和40)年の約2倍(*)にあたることから、現在の価格で1本120円相当といえる。現行品「MONO」の価格が1ダース1,320円(税抜1,200円)であることを考えると、当時とほとんど変わらない価値で、現在も多くのユーザーに愛されているということだろう。

 そして1967(昭和42)年、トンボ鉛筆創立55周年を記念して、最高級鉛筆「MONO100」が発表された。現在1ダース1,980円(税抜1,800円)、1本あたり165円と、事務・学習用普及鉛筆が2〜3本は買える高級鉛筆である。

価格に見合うMONO100の魅力と使い心地

 実は、2021年からこれまでのノートに加え、NOLTY(能率手帳)の高級手帳を併用することにした。ビジネスマンや文具好きにはよく知られた「能率手帳ゴールド」である。革装に辞書レベルの堅牢な綴じ製法を採用し、万年筆でも裏抜けしない良質な紙を用いた、NOLTYのフラッグシップだ。ここで価格を述べると妻に何を言われるか分からないから、秘密にしておこう。

トンボ鉛筆 MONO100
MONO100と能率手帳ゴールドの佇まいがよく似合う。筆記具と本、これに辞書を加えた3点が、僕にとっての3種の神器だ。

 この高級手帳にふさわしい筆記具として、僕は極細の万年筆を使っていたのだが、うっかり落としてしまい、キャップが割れてしまった。そこで能率手帳ゴールドに相応の、別の筆記具として選んだのがMONO100というわけだ。

 まずは外観から。

 能率手帳ゴールドの、金色に輝くロゴに黒い革装。このコントラストに、同じく黒軸にゴールドの刻印をあしらった、高級感漂うMONO100の佇まいが実にマッチする。半分以上は見た目で選んだと言っても過言ではない。しかし筆記具なのだから、書き心地ももちろん大切だ。

 MONO100を選出するにあたり、他メーカーの高級鉛筆もいくつか試してみた。三菱鉛筆の「Hi-uni」、ドイツの老舗、ファーバーカステルの「9000番」、ステッドラーの製図用鉛筆「マルス ルモグラフ」、いずれも日独を代表する鉛筆の雄たちだ。高度はすべてHBで試した。

 ドイツ製の9000番とマルスルモグラフは、同じHBでも日本製のそれに比べ書き心地が硬く、極細の線をカリカリと筆記する印象だった。細く書ける点は手帳には好都合だが、少し筆跡が薄く感じられた。

 Hi-uniはさすが高級鉛筆だけあり、筆記の滑らかさではMONO100を一段上回るかもしれない。ドイツ製鉛筆より色が濃く、外観の高級感も申し分なかった。

トンボ鉛筆 MONO100
カール事務器「エンゼル5」でキリッと仕上げた芯先。詳しくは愛され続けるベストセラー鉛筆削り・カール事務器エンゼル5を参考に。

 MONO100はドイツ製の2本と比べて柔らかく滑らかに書ける印象だが、Hi-uniよりわずかに硬く、“しっかり感”を感じる。手帳に細かく書き込むなら、このしっかり感が僕には心地よく感じられた。芯の紙への定着もよく、色も濃く書き込める。

 しかし、鉛筆なんてどれも同じだろうと思っていたが、メーカーや品番が異なるとこうも違うものなのか。漢字圏の鉛筆と、英語圏の鉛筆でも特色が異なるのかもしれない。意外と奥が深いぞ、鉛筆。やはり、こりだせば沼が存在するのだろう。

 鉛筆選びに精を出すある日、こんな記事を見つけた。

[関心アリ!]子どもの鉛筆 2B〜6B主流 「書き心地滑らか」

◆10Bや12Bも登場

 小学校の入学式が終わり、子どもが本格的に勉強に取り組み始める時期になった。勉強に使う鉛筆は、40代の自分が子どもだった頃はHBやB。だが、子どもがいる同僚に聞くと、最近は2Bから6Bが主流で、10Bや12Bという鉛筆もあるという。

引用:読売新聞2021年4月20日朝刊

 僕が小学生だった30年前は、筆記用鉛筆といえばBやHBが主流だった。それが今では、小学校が入学前に行う保護者向け説明会でも、2B〜6Bの濃い鉛筆が指定されることが多いという。子供の筆圧の低下や教育方針の変遷などいくつかの理由があるらしいが、それにしても、10Bや12Bの鉛筆が選ばれるなんて——。

 30年もたてば時代は変わるものだと、僕もその移ろいを感じる年齢に達し、しみじみと感じ入るこの頃である。30年の間、バブル崩壊に就職氷河期、急速に進む生活のデジタル化やグローバル化、昨今の感染症の世界的流行など、思い起こすだけでもその奔流に流されそうになるが、それでもMONO100のように1960年代から変わらず愛される製品があるのだ。丹精こめて生産されるその1本1本を、僕は大切に使っていきたい。

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