自分にフィットする、よくなじんだバックパックが山をより楽しくすることは間違いない。
バックパックの選択が登山に与える影響は大きい。それだけにレインウエア、シューズと並び”三種の神器”のひとつとされるのだ。
数あるバックパックの中から私が選んだのは、1本締めのシンプルなバックパック『ライペン:クロワール35』である。
ここでは、クロワール35の詳細レビューをお届けしたい。
目次
アライテント(ARAI TENT)とは
アライテントは日本を代表するテントメーカーである。新井睦(あらいむつみ)氏により1965年に創業され、埼玉県に本社を構える。
現在、日本で一般的なツエルト (簡易テント)は、アライテントが開発し、普及させたものだ。1983年には自社ブランド『ライペン(RIPEN)』を立ち上げ、エアライズやオニドームなど、傑作テントを世に送りだしている。
今回ご紹介するクロワール35は、自社ブランドライペンの登山用バックパックだ。日本国内で生産される、信頼性の高いバックパックである。
クロワール35の概要

- 容量:35L+10
- 重量:1100g
- 背面長:41cm
- 素材:スパイダロン®リップ
- カラー:4色/ブルー、グレー、ブラック、マスタード
クロワール35の特徴と魅力
1本締め、1気室のシンプルさ

クロワールの最大の魅力は、1本締め、1気室であることだ。余計な機能は一切ついてない、この潔さがよい。
1気室のバックパックは仕切りがなく、パッキングの自由度が高い。スタッフバッグで荷物を小分けし、自分で仕切りを作れるからだ。

また、あらかじめ仕切りがないからこそ隙間を無駄なく使える。他の35Lクラスのバックパックよりも多くの荷物が入る印象だ。

最近のバックパックは高機能で、背面に荷物を支えるサスペンションを備えたモデルが多い。だが、クロワールの背面はフォームパッドを備えているのみで、サスペンションやフレームはない。
パッキングの良し悪しがダイレクトに背中に伝わるため、使い込むうちにパッキングが自然と上達するだろう。本体の外側にもポケットやメッシュの類はなく、岩場や藪でひっかかる心配もない。
必要最低限の機能を備えたバックパック、それがクロワール35である。
軽くて頑丈

機能を絞ったぶん、本体は軽く頑丈にできている。
クロワール35に使われる素材は『スパイダロン®リップ』だ。これは、同じ太さなら鋼鉄の数倍の強度を持つといわれるPE繊維を織り込んだ素材のこと。特に、耐摩耗強度に優れている。
ただ軽さを優先するなら他の選択肢もある。昨今はウルトラライト系の軽量バックパックも人気だ。
30Lクラスでも500g程度の重量しかなく、ファストパッキングやトレイルランニングでは、私も軽量バックパックを使用する。
しかし、それらは総じて生地が薄く、岩場では破れないか心配になってしまうのだ。岩場や藪山を歩くには、バックパックの頑丈さが求められる。
「とにかく耐久性が高く、クライマーやプロガイドから長年愛されています」
クロワールの購入時に、専門店のスタッフからお墨付きをいただいた。
これならボロボロになるまで惜しげもなく使い込めるだろう。もっとも、使い込んでも”ボロボロ”になるかは10年後のお楽しみである。
35L+10の汎用性の高い容量

機能を絞ったシンプルなバックパックながら、35L+10の容量は守備範囲が広い。
バックパックは大きすぎても小さすぎても使いづらいことは、経験者なら分かってもらえるだろう。そのため、用途に応じたものを複数用意するのがベストだ。
だが、それだとバックパックがどんどん増えるし費用もかかってしまう。そこで幅広く使えるものを用意したいのだが、それが30Lクラスのバックパックだ。
35Lは日帰りでも大き過ぎることはなく、小屋利用登山では最適なサイズだ。さらに、クロワールの拡張部分と調整式の雨蓋を利用すれば、最大45Lまで容量を増やせる。
アライテントのWEBサイトには、クロワール35の夏山テント泊装備のパッキング例が紹介されている。
クロワール35は、日帰り登山から夏山のテント泊まで対応できる、汎用性の高いバックパックなのだ。
クロワール35のカスタマイズ

クロワール35は両サイドにギアラックが備えられている。ギアラックを活用し、自由にカスタマイズできるのも魅力のひとつである。
そこでカスタマイズの一例として、ストックホルダーを取り付けてみた。
材料

- ナイロンストラップ20mm×300mmを4本
- プラバックル20mm×4個
これらは登山用品店で手に入るので、最寄りの店舗で問い合わせてみよう。またはWEB通販でも入手できる。
ストラップの長さは300mmとしたが、取り付けたいもの(例えばマットをくくりつけたいなど)に応じて自由に調整すればよい。
作業手順
- ナイロンベルトにプラバックルを通し、両面テープで仮止めする
- ミシンで縫い付ける
- ベルトをギアラックに通して完成

バックルには向きがあるため、確認してから仮止めしよう。

仮止めした部分をミシンで縫い付け、ギアラックに通せば完成だ。
完成

これで、ストックやカメラ三脚をバックパックに取り付けられる。自分好みに仕上げれば、ひときわ愛着も増すことだろう。
クロワール35はポケットが必要な人には向かない
クロワール35はポケットが必要な人には向かない。
クロワール35のポケットは、雨蓋の表と裏にあるのみ。1気室で仕切りもないため、パッキングを工夫するしかない。その意味では玄人向け商品と言えるかもしれない。
それでも、一度パッキングの自由度に慣れてしまえば、手放せなくなることは間違いないだろう。ぜひ一度、1気室のバックパックを試してほしい。
クロワール35まとめ
クロワール35の魅力は、1本締め、1気室のシンプルなバックパックであるところだ。軽量かつ頑丈で、必要な機能は十分に備えている。
とはいえ、ギアラックを使ってのカスタマイズも可能で、自分好みにカスタマイズできるのも魅力だ。気になる人は、下記のリンクをチェックしてみよう。