万年筆が割れた。
いやなに、万年筆が悪いわけじゃあない。外出先でメモを取ろうとした瞬間、誤って落としてしまったのだ。
それで常用筆記具は山歩きでいつも使っている鉛筆に決めた。万年筆はデスクで使い、シャツの胸ポケットには鉛筆がおさまることになった。
社会人になって以来、鉛筆を手にしたことさえない、という人も少なくないだろう。
だが鉛筆はいい。僕は日常的に使っている。
一体、鉛筆の何がいいのか。
それは、手元にありさえすれば、確実に書けることである。
保存性がよく、あらゆる場面で筆記できる鉛筆の魅力
横に向けても上に向けても、雨の中でも水中でさえも、残った本体の長さの分だけ、芯さえ削り出せば確実に書けるのである。インクが残っているのに何故だか書けない100円ボールペンのようなことはないのである。
鉛筆で書いた文字はインクのように褪色せず、水で流れることもない。摩擦に気をつければ保存性もいい。数百年前に描かれた画家の鉛筆デッサンがいまだに残されているように、僕が30年前に書いた小学校のノートだって、しっかり判読できるのだ。
こうした鉛筆のメリットを享受するには、当たり前だがまず鉛筆を削らなければならない。
カール事務器のベストセラー・エンゼル5

鉛筆削りなんてどれも同じだろうと思っていた。
だからカール事務器・エンゼル5による精巧な削り口を見たときは目が覚めた。
さっそく書いてみる。
書き出しで芯が欠けない、折れることもない。
鉛筆は削り方ひとつでこうも使い心地が変わるのか! これは新たな発見だった。
山ではナイフを使う。普段はまぁ、携帯にも便利だし、ポケット鉛筆削りで十分だろうと某ドイツ製有名ブランドのものを使っていた。
が、鉛筆を常用して分かったのは、以外と出先で鉛筆を削ることがないということ。よく研いだ鉛筆を2~3本備えておけば事足りる。
ならば必要なのは、デスクに据え置く鉛筆削りだ。

カール事務器(株)は1954年に設立された日本の文房具・事務用品メーカーである。エンゼル5は同社を代表する製品で、1960年の誕生からすでに60周年を迎えたベストセラーモデルである。60周年を記念して、2020年に従来カラーから4色のパステルカラーにマイナーチェンジされた。僕が選んだのはクリームだ。シンプルで飽きがこない、しかしながらデスクの一角を華やかに彩る——そんな色合いだ。
エンゼル5が選ばれる理由
エンゼル5が選ばれ続けるのは理由がある。
まず頑丈な鉄製ボディーであるということ。これはカール事務器の環境への取り組み「長寿命商品を作る」を形にしたものだ。本体は手のひらに乗るぐらいコンパクト(これは意外だった)だが、ずっしりと重みを感じ安心感がある。質感も素晴らしく、所有欲を満たしてくれる。
そして、日本製の特殊鋼による爽快な削り心地はさすがの一言だ。

芯調節を選び、チャック部を引き出して鉛筆をセットする。
おもむろにハンドルを回す。
さらさらと小気味良い音をたてて、鉛筆が削られてゆく——。
そして「ムダ削り防止機能」が働き、ハンドルがふっと軽くなる。削り終えた合図だ。
この一連の動作が実に気持ちよく行えるのである。

削られた芯は長く、キリリととがり、滑らかに削られた木軸は毛羽立ちやひっかかりを微塵も感じない。わずかに弓なり状に内側に反った木軸は、ペン先の視認性がよく、これが画数の多い日本語の筆記に適しているのだという。
鉛筆削りに迷ったらエンゼル5・ロイヤル3で決まり
鉛筆削りに3,000円以上は高いかなと正直迷った。しかし、エンゼル5で正解だったのだ。中途半端な製品を何度も買い換えるより、品質の優れた製品を長く大事に愛用するほうがよほど経済的だしエコである。

ちなみにエンゼル5には「プレミアム3」と「ロイヤル3」の2種類がある。違いは削り具合を調整できる「2段階芯調節機能」の有無で、僕は調節が利く「ロイヤル3」を選んだ。本体価格にしてわずか数百円の差であるから、幅広く対応できる「エンゼル5・ロイヤル3」を迷わずおすすめしたい。
もちろんカラーはお好みで。そして良い鉛筆ライフを——。
鉛筆は学生のためだけの筆記具では決してないのである。

