近所の低山で楽しむマイナーピークハント|新たな山の遊びに足を踏み入れた

 僕は近郊の低山ハイクが大好きだ。よく整備され、道標も設置された安全な場所を歩き、眺望や山飯を思う存分に味わい、下山後は銭湯で汗を流して今日の思い出を肴に一杯ひっかける。僕だけじゃなく、アウトドア好きの友人たちをこんな山行に案内してあげると大変喜んでくれるものだ。

 でも何かが物足りない——。

 本来、山歩きはとは、そしてアウトドア遊びとは、何もかも整った登山道やキャンプ場を利用することだけじゃなかったはずではないか。

 山歩きを続けているとそこに冒険的要素を求めたくなるのは、どうやら僕だけじゃないらしい。世の中には誰も目を向けないマイナーなピークを訪れては密かに楽しんでおられる諸先輩方が大勢おられるようだ。

 どうやら僕もその先輩方に導かれるように「低山ピークハント」の世界に足を踏み入れてしまったらしいのだ。

低山ピークハントに必要な道具たち

  • 地形図
  • コンパス
  • ガイド地図
  • GPSもしくは山地図アプリ

 低山ピークハントをやるには、最低限上記の道具を用意しておこう。僕は地形図はもちろんのことガイドマップも用意し、コンパスもメインのサムコンパスと予備のプレートコンパスを装備に加えている。

 そしてもし低山ピークハントが読図・ナビゲーションの練習だとしても、GPSやスマートフォンの山地図アプリは備えておきたい。

 「GPSを使うと練習にならない」と考える人もいるかもしれないが、GPSは現在地把握の答え合わせに使えるし、何より本当に迷ってしまったら洒落にならないじゃないか。

 そんなわけで、僕は半ば毛嫌いしているスマートフォンに地図をダウンロードし、山に持ち出しているのである。

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箕面の森【標高点302】を目指して

 低山ピークハントを実行するにあたり、まず目をつけたのが箕面の森にある「標高点302」である。※地形図を表示

 これは国土地理院により現地測量される三角点とは違い、写真測量による標高点だ。したがって現地に目印はない。
 おまけに地形図を見る限りそこは樹林帯の中で、何か特別な眺望があるとか、あるいはそのピークを訪れる動機になるようなものも、一切ない。

 しかしである。登山道から外れたその場所に、誰にも目を向けてもらえないピークがひっそりと、そして確実にあるのだ。これは訪れるしかないだろう—そこに山があるから—と、誰かを同行させても喜ぶような場所ではないから、地下鉄とバスを乗り継いで一人で登山口へと向かったのである。

谷山尾根の登山口にある「水神白姫大明神」。

 箕面の森で人気が高いコースのひとつが「谷山尾根」だ。白島北から住宅街を抜け、そこから続く谷山尾根は古刹・勝尾寺へと至る。休日ともなればハイカーやマウンテンバイカーでにぎわうコースだ。

 さて、標高点302に行くにはどうすべきか。もちろん道はなく、この”考える”工程がすでに楽しみである。

 僕が考えたのは谷山尾根の途中から谷山谷へ下り、そこからピークを目指すというもの。地形図では途中まで徒歩道の表記があるから、これなら比較的安全に歩けるだろうともくろんだ。

谷山尾根を歩く。

 谷山尾根を順調に登り、途中すれちがったマウンテンバイカーと挨拶を交わしながらふと立ち止まった。どうやら予定の分岐を通りすぎてしまったようだ。はて、分岐などあったか?

 選んだ道が怪しいときは、確実に現在地を把握した場所まで戻るのが鉄則である。地形図上で、予定していた分岐まで戻ってみたが、現場には分岐も道もなかった。

 地図を読みながら山を歩いていると度々こういったことが起こる。地図が絶対に正しいとも限らないのだ。

 読図・ナビゲーション初心者から「地図が正しくなければ一体何を信じればいいのか」なんて嘆き声が聞こえてきそうだが、残念ながら”地図とはそういうものである”と受け入れ、乗り越えるしかないのである。

谷山谷へ下りてきた。この写真の場所は踏み跡もあり、道はまだマシだった。

 地形図上で道が記載されている斜面は、急ではあるが下れそうだった。慎重に下っていくとやがて谷底に到着した。たどり着いた谷底にも地図上では道があるが、踏み跡はずいぶん薄く、ほとんど誰も歩いていないらしい。おまけに倒木が多く、おせじにも歩きやすいとは言えなかった。

 地形図を頼りに、ときどきGPSで答え合わせをしながら谷筋を歩くと、驚いたことに人の痕跡を発見した。明らかに刃物で加工された薪と缶詰のゴミを見つけたのだ。この場所で一晩過ごしたのだろうか? いずれにせよ、こんなマイナーな場所を好むのはやはり僕だけではないのである。

ゴミを捨てるのはいかがなものかと思うが、こんな場所にも人が訪れるようだ。

 谷筋を進み、やがて標高点302に登れるであろう斜面に取りかかった。ヤブをかき分け茂みをかき分け、たどり着いた標高点は、やっぱり何もなかった。

 人が見たら言うであろう。こんな山歩き何が楽しいのかと。

 しかし、人がいない、そして訪れるはずのないそのピークには静かな時間が流れていた。

 そこでテルモスで運んだ温かいスープを飲みながらナッツをつまむ。ラジオをかけてみると、休日の昼下がりにぴったりな、80年代のクラシックポップやジャズが流れてきた。

 その音楽を聴きながら上着を一枚羽織ってマットを敷いて、30分ほどうたた寝をした。

 うん、これだよこれ。僕が求めていたのはこういう山歩きだ。

持参したラジオとフィールドノート。

 わずか300mほどの低山で、ラジオから流れる音楽を聴きながら静かで充実した山の時間を過ごしたのだ。

 うたた寝をして目が覚めると時刻は午後1時を少し過ぎていた。そろそろ下山しなければならない。標高点302から才ヶ原池を経由し、阪急箕面駅まで下ることにした。

 才ヶ原池の周辺は登山道が走っているが、そこにたどり着くには再び道なき道を行かねばならない。地形図とGPSをフルに活用し、周辺の地形を読みながら慎重に歩いた。無事登山道に出合ったときは、まだしっかり山中なのに、人里に下りてきたような安堵感を感じた。道がある、というのはやはり安心なのである。

才ヶ原林道から山々を望む。

 才ヶ原池で野鳥を観察してから、登山道を箕面駅へと下り、午後3時前に箕面駅に到着した。うん、大変面白しろかった。ついでにナビゲーションスキルも磨けるから一石二鳥だ。

最後は滝道から阪急箕面駅へ。

 低山ピークハントは遠出がはばかられる昨今の社会情勢の中で、近所の低山でも十分に楽しめる、ちょっとオタクな最高の遊びである。でもマネをして事故に遭っても、僕は一切の責任をよらないよ。