大岩ヶ岳

北摂・京都西山

大岩ヶ岳のバリエーション登山、三角点ハント

 山の難易度は標高に比例する——。一般的に標高が高ければ高いほど厳しい自然環境にさらされ、より強固な装備や体力に加え、登頂に日数を要するからだ。

 では標高384.1m の低山ならば目をつぶってでも登れるぐらい易しい山か——そうとも言い切れないのが、山歩きの奥の深いところである。

 低山とはいえ、道標のない登山道で現在地を正確に把握し続けられるだろうか。

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大岩ヶ岳とは

ポイント

  • 標高:384.1m
  • 行程:東山橋→P269.6→P384.1(大岩ヶ岳)→丸山湿原→P281.4→P250.2→東山橋
  • 難易度:経験者向け
  • 1/25000地形図を表示

 北摂の水源、千苅ダムの東部に広がる丘陵地の最高峰が大岩ヶ岳だ。複雑な地形から成り立っており、地形図を読み解きながら歩くのが楽しい。里山らしい自然林や展望の開ける裸地が特徴的で、天然記念物である「丸山湿原」を山中に抱く。

 大岩ヶ岳は神戸市と宝塚市にまたがるが、神戸市側には公設道標はなく、道迷いには十分に注意したい。『山と高原地図 北摂・京都西山』におさめられているが、1/50000地形図では心許なく、1/25000以上の地形図やGPSを携帯しておきたい。

 ここで紹介するルートは登山道を外れるため、もし出かける場合はあくまでも自己責任で。

大岩ヶ岳三角点ハント登山レポート

 大阪駅から電車に揺られること約1時間、阪神間の喧騒を離れ、緑に囲まれたJR道場駅に到着した。駅からは見わたす限り里山の風景が広がっており、田舎育ちの僕にはなじみのある光景だ。むしろ都会の人の多さ——僕もそのうちのひとりだけれど——には未だになじめず、里山を目にするとホッとする。

 駅前には大型バックパックにピッケルや各種登攀具を備えたクライマーが多数いた。どうやらアルパインクライミングの練習らしく、道場周辺には不動岩、鳥帽子岩など関西でも有数の岩場がある。彼らは駅から少し歩いた場所で登攀具の用意を始めたが、僕はそれを横目にそそくさと東山橋へと向かった。武庫川のせせらぎが心地よい、爽やかな朝だ。

スタート地点の東山橋。

 今日の目的地は大岩ヶ岳、それも登山道のない三角点を踏むピークハントだ。東山橋をスタートし、P269.6、P384.1(大岩ヶ岳)、P281.4、P250.2の4つのピークを踏む予定である。東山橋から入山すると、さっそく破線ルートを歩く。

尾根からの眺め。

 山と高原地図の赤破線ルートは一般登山道ではない難路であるが、このルートは道標こそないがよく整備されており、おまけに見晴らしもなかなかのもの。村有林として管理されているようだ。執筆者による毎年の実踏調査が売りの山と高原地図だが、執筆者の主観に影響される点も多分にあり、難易度は参考程度のもの、なのかもしれない。

 春先の低山の尾根歩きを楽しみながら鉄塔を通過し、さて本番はこの先からだ。P269.6を踏むためいったん北西の谷へ下り、コルを探す。そこから尾根伝いにP269.6へと向かう。

うっすらと残る踏み跡を目印に進む。

 この道は地形図に記載こそされているものの、あまり歩く人はいないらしい。草木が繁茂し、踏み跡は薄い。が、P269.6付近までわずかに踏み跡が続いていたから、どうやら僕のような物好きが他にもいるのか。むふふっ。仲間を見つけたみたいで、なんだかうれしくなった。

P269.6。ええ、他に何もありません。

 P269.6を踏み、再びコルへと戻る。さらに北西へ谷筋を進むと千苅ダムからの登山道に合流する。

 いやいや、道があるっていいものですね。僕は好き好んで悪路を選んでいるのだが、登山道に合流するとやはり安心するのである。

 しかし油断はできない。大岩ヶ岳の神戸市側には公設道標はなく、地形図に出ていない分岐もある。地形図を読み解きながら次なるピーク、大岩ヶ岳に到着した。

大岩ヶ岳

 大岩ヶ岳は展望の山だ。

 400m足らずの標高だが360度の視界が広がっており、灌木の影響で、特に北方の眺めが素晴らしい。さっきまでヤブがちな登山道を歩いていたのが遠い昔のようだ。

 山と高原地図の広域地図を広げ、近くの布見ヶ岳や羽束山、遠方の大船山から千丈寺山など、三田市、丹羽篠山市方面の山々を山座同定して遊んだ。

 その間にシングルバーナーにかけておいたパーコレーターからポコッ、ポコポコッと、まるで理科の実験に使うバーナーで熱せられた試験管のような音が聞こえてきて、コーヒーが入ったのを知らせてくれた。

 ひと口飲んでみる。

 うん、まずい。

 山の空気と景色を前にすれば何でも美味しく感じるなんてのは嘘である。山座同定に夢中で、煮出しすぎたコーヒーはただただ苦かった。

 気を取りなおしてP281.4を目指して出発しよう。途中、すぐ隣の東大岩岳への分岐があったが、そこに三角点はないためあっけなくスルーした。そう、そこに三角点はないのだよ。

丸山湿原
木道が設置された丸山湿原は、さながら高原の湿地帯のようだ。

 天然記念物に指定される丸山湿原をさっさと通過し、その先の登山道脇にあるP281.4をなんなく踏破。我ながら、僕のナビゲーション能力もなかなかのものじゃないかと、鼻歌まじりで川下川ダム方面へと南下した。残るピークはあとひとつだ。

P281.4。ここまでは順調だった。

 P250.2へと向かう分岐で、ルート選択を誤った。

 念のためにいうと、道に迷ったのではなく、ルート選びを誤ったのだ。

 その分岐からは、尾根道と、谷へと下るふたつのルートが分岐していた。どちらの道も地形図にも記載されている。僕は”近道だから”と谷筋のルートを選んだのだが、この道がもう、ひどいのなんの。

ヤブに覆われた道。この先もっとひどくなる。

 そこは完全に廃道だった。

 完全にヤブに覆われ、視界が塞がれて周囲の地形も見えづらい。

 それもササヤブならまだいい。イバラまじりのヤブなのだ。トゲが容赦なくウエアやバックパックを切りつけてくる。長袖シャツでよかったよ。

 全体重をかけ、ヤブをなぎ倒しながら進む。多少のヤブ漕ぎは覚悟していたが、これならナタを用意するべきだったか。

 こうなったら手にした地形図でさえ邪魔だ。

 ポケットにしまい、GPSで切り抜けよう——とそのとき、左足が足首まで沼にはまり、泥に捕まった! そして思わず転倒しそうになったところを、間一髪でこらえたのだ。

 左足のブーツは泥まみれ。ここで完全に気力を削がれた管理人・川口は、端から見たらきっとボロ雑巾のように見えたことだろう。すっかりやる気をなくし、最後のピークは次でいいやと、あっけなくルートを修正した。

写真で見ると美しい場所に見えなくもないが、足元は泥だらけの沼である。

 見るも無残な姿のブーツも、小川で泥を落とすと「あぁさっぱり、まったく無茶をしてくれたもんだよ」、そして僕にも再び気力が湧いてきた。ここでナビゲーションの基本を思い出す。

 “ルート選びに迷ったら尾根道を選ぶ。谷に下りてはいけない”

 ヤブがひどくなった時点で引き返せばいいものを、無理に突っ込むからこうなるのだ。地形図とGPSで現在地を把握していたものの、こういう歩き方は褒められたものではないな。ヤブを抜け、徒歩道に合流すると30分ほどで出発地点・東山橋に到着した。

 時刻は15時。残すP250.2と、せっかくだから東大岩岳とその先の「馬の背」も次回の課題として、再び電車に揺られて帰宅した。大岩ヶ岳周辺は、低山だからと侮れないのだよ。

大岩ヶ岳へのアクセス

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Takashi

元靴メーカー勤務の職人、現在はWEBライターとしてアウトドア系メディアで執筆しています。靴業界での10年以上の経験、趣味のアウトドア経験を活かして書きます。大阪府山岳連盟「青雲会」所属・読図ナヴィゲーションスキル検定「シルバーレベル」・2018年「狩猟免許」取得・ランサーズ「認定ランサー」・フルマラソンベスト3時間29分。

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