コンビニコーヒーから、いつの間にかプラスチックストローが消えた。
2019年の8月、「日本は対応が遅いな」と僕はつくづく感じていた。旅行に出かけた台湾では、そのころ既にプラスチックストローが廃止され、コンビニのレジ袋はメッシュ状の紙袋へ変わり、タピオカドリンクのストローも紙製だったからだ。
あなたも記憶に新しいことだろう。
2015年の夏、プラスチックストローが鼻に刺さり苦しむ海ガメの姿や、太平洋に浮かぶ大量のプラごみの映像が世界に広まった。2016年のダボス会議で「2050年には海のプラスチックの重量が魚の重量を超える」と報告された。スターバックスがプラスチックストローの全廃を宣言し、今や脱プラスチックは世界共通の目標となった。
プラスチックストローが廃止されたことで、プラごみの排出量も少しは減ったかもしれない——いやまてよ、ふたやカップ本体もプラスチックだよな?
つい先日、コーヒー用にもマイボトルを用意した。もうペットボトル飲料もコンビニコーヒーも、僕は買わない。
目次
無印良品のマイバッグとマイボトル

僕は2019年の秋から買い物にマイバッグを持参するようになった。ニューヨークで開かれた国連の気候変動サミットに、グレタ・トゥーンベリさんが登壇した頃からだ。それで気がついたことがある。
「そもそもレジ袋なんて必要ないんだ。国民的アニメ『サザエさん』では、いつも買い物かごを持参しているじゃないか」と。
その一方で、コンビニでコーヒーを買うことが習慣のようになっていた。コーヒーのカップだってレジ袋と同様、使い終えたらプラごみである。だからコーヒー用のマイボトルも用意したのだ。僕が愛用するのは無印良品の製品である。
ステンレス保温保冷マグ 350ml
- 仕様:本体:ステンレス鋼、蓋:ポリプロピレン・ステンレス鋼、飲み口:ポリプロピレン、パッキン:シリコーンゴム
- 重量:約300g
- 外寸:約直径6.5×高さ17cm
- 容量:約350ml
- 部材ごとの素材:本体:ステンレス鋼、蓋:ポリプロピレン・ステンレス鋼、飲み口:ポリプロピレン、パッキン:シリコーンゴム
- 耐熱仕様:耐熱温度__蓋・飲み口:100℃__パッキン:150℃_、_耐冷温度__蓋・飲み口:-20℃__パッキン:-30℃
コーヒーを持参するのにちょうどいい容量であり、大きすぎず、サコッシュにも収められる。出かける前にドリップコーヒーをボトルに詰めれば、温かい、あるいはよく冷えたコーヒーをどこでも味わえる。加えて本体はステンレス製だ。ステンレスは100%リサイクルできる。
残念な点は、ふたや飲み口にプラスチックが使われていること。オールステンレス製品ではない。
とはいえ、プラスチックの中でも有害物質が浸み出さず、比較的安全なポリプロピレンが採用されている。何よりこのボトルは使い捨てではないことが重要だ。これで私個人から出るプラスチックゴミを少し減らせた。それに、お財布にも優しい。
- Lサイズコーヒー150円×30日=4,500円
- 4,500円×12ヶ月=5万4,000円
5万4,000円あれば、妻と二人で近場の温泉旅行ぐらいは楽しめるだろう。
インド綿横型マイトートバッグ
- 仕様・混率:本体:綿100%, 持ち手:綿100%
- ポケット数:2
- 最大積載量(目安):約14.0L
- 本体重量:300g
そしてマイバッグがこちら。
まず大容量であること。14Lといえば、日帰り登山の装備が収まるぐらいの容量で、大きな白菜ひと玉に加え、もろもろのお肉や野菜を詰め込めるサイズだ。業務スーパーでのまとめ買いに、大いに活躍している。汚れたら洗えばいいし、もし寿命を終えて廃棄することになっても、天然素材である綿は土に還る。
プラスチック製のエコバッグでも使い捨てレジ袋よりはるかにマシだと思うが、どうせエコバッグを選ぶのなら天然素材のものを選びたい。綿、ジュート、麻などは最終的に土に還る。サスティナブル(持続可能)な昔ながらの素材に、改めて注目した。
プラスチックに蝕ばまれる地球
今、地球のあらゆる場所がプラスチックに汚染され、生態系や人体への影響が明らかになりつつある。これから述べることは『プラスチック・フリー生活:NHK出版』を参考にした。『プラスチック・フリー生活』はプラスチックから浸み出す有害物質の影響や、プラスチックをどう減らしていくか、といったことが分かりやすく記載されている。それらは専門の学術論文を根拠とし、信頼度が担保され、原注はNHK出版で確認できる。
現在、石油の年間消費量の4%はプラスチック製造に利用され、その製造工程に、エネルギーとしてさらに4%の石油を必要としている。リサイクルしきれないプラスチックは埋め立てか、あるいは焼却処分され、焼却されるとむろん温室効果ガスを排出する。そう、プラスチック問題は、地球温暖化とも切り離せない。
さらに、リサイクルの軌道から抜け出した、実に2500万トンものプラスチックが毎年自然界に流出している。もはや大気中からもプラスチックから浸み出す有害物質「内分泌撹乱物質(いわゆる環境ホルモン)」が検出されているのだ。プラスチックのリサイクルについては「ごみ箱を新しくして、ごみの分別について改めて考えた」も参考にしてほしい。
プラスチック汚染が深刻な海洋では食物連鎖にプラスチックが取り込まれ、毒素が濃縮され(生物濃縮)、やがて海産物を経て人体へと蓄積されている。プラスチックが体内に蓄積されるとどうなるか——これはまだ研究段階ではあるが、おそらく人体にとって望ましいことではないことは、容易に想像できる。
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100%プラスチック・フリー生活は不可能
では今すぐプラスチックを撲滅しようと声高らかに呼びかけても、そう簡単なことではない。プラスチックは富裕層の嗜好品ではないからだ。身の回りはプラスチックだらけで、100%プラスチック・フリーな生活は不可能である。
都市型生活を送る現代人にとって、容器包装プラスチックがなければ食料さえ手に入れることができないだろう。スポーツウエアに使われる化学繊維もプラスチックのひとつだ。洗濯により排水溝に流れた出た微細なプラスチック繊維は、浄水場をすり抜け、海へと流出する。
高機能な登山ウエアだって例外ではない。自然を愛でるための道具で、いつのまにかプラスチック汚染に加担していただなんて! 僕はもはやプラスチック汚染の共犯者である。
プラスチック汚染について知ったことで、何を考え、どう行動するかは個人の自由だ。「ちょっと大げさすぎるんじゃないか」とか「自分ひとりが気をつけたって世界は変わらない」と関心を示さない人もいるだろう。あるいは「ほんの少しでも地球環境に貢献したい」と行動する人も、いるかもしれない。僕はたまたま後者を選んだ。それだけのこと。
プラスチックを今すぐ無くすわけにはいかず、かといってリサイクルにも限界がある。だとしたら、たとえ個人レベルの取り組みでも、その使用を減らすしかないのである。
できることから少しづつ
ここまでプラスチックの悪口をさんざん述べてきたが、その全てが悪ではないことを伝えておきたい。
その例のひとつに、新型コロナの感染防止に飛沫防止のプラスチック板が活躍している。新型コロナが落ち着いたころに出かけたレストランのバイキングでは、プラスチック製の手袋が感染予防に使われていた。
それにプラスチックのように丈夫でしなやかで、かつ安価な素材があったからこそ、僕のような一般市民のもとに、さまざまな製品が届けられるのである。
しかし、その素材の特性から半永久的に分解せず、生態系に影響を及ぼし、地球温暖化の要因のひとつであるプラスチックは、徐々に減らすべき素材であることに変わりはない。できることから少しずつ取り組むしかないのだ。その中で、環境負荷の小さいマイボトルとマイバッグを選び、利用することなら誰でもすぐに始められるだろう。
ここまで深刻なプラスチック問題を引きこ起こしたのは、国家や企業だけの責任ではない。SDGs(持続可能な開発目標)の目標12「つくる責任 つかう責任」。そう、使う側にも責任があることを、忘れてはならないのである。