アルプスと聞くと高く険しい山々を想像することだろう。日本アルプスの峻峰や、アルプス山脈のモンブラン、マッターホルンなどなど……。
おおよそ素人では近づくことさえ許されない場所。そんなイメージを抱くかもしれない。しかし、誰もが気軽に登れる、標高わずか300mのアルプスが兵庫県高砂市にある。
ここでは、播磨アルプスの名峰『高御位山』と『桶居山』の縦走ハイキングレポートをお届けする。
目次
ご当地アルプス【高御位山(たかみくらやま)・桶居山(おけすけやま)】の概要
- 標高:高御位山300m 桶居山248m
- 歩行距離:約14km
- 歩行時間:約5時間
- 難易度:一般向き
- 参考:関西周辺 週末の山登りベスト120

高御位山と桶居山は、兵庫県高砂市と姫路市の境界に位置する低山だ。岩稜で構成される山々は『播磨アルプス』と称され、最高峰の高御位山は播磨富士とも呼ばれ人気を博している。
高御位山の山頂には高御位神社が鎮座し、山全体を御神体とした信仰の山でもある。桶居山は高御位山の北西に位置する円錐形の目立つ山だ。

縦走路は展望が開け、素晴らしい景色を楽しめる。送電線や麓の街並みがなければ、3000m級の稜線歩きと錯覚するかもしれない。
その道のりは標高300m未満の小さな山々が連なり、アップダウンの連続で歩きごたえがある。岩稜歩きの練習にもおすすめのコースである。
高御位山・桶居山縦走レポート
山歩きに慣れてくると、整備の行き届いた一般登山道では少し物足りなく感じることがある。
歩きやすいよう遊歩道が設けられ、道標を頼れば地図がなくてもたどり着ける山。もちろんそれはそれで良いことなのだが、これでは観光地と変わらないではないか——。
高御位山・桶居山は、一般登山道に物足りなさを感じてきた人にもおすすめである。
標高こそ低いものの、岩稜で構成される山々は岩が露出し、その道のりは荒々しい。桶居山の分岐以降は道標がないため地形図やGPSアプリが欠かせず、ほんの少しの技術が必要だ。
高御位山への登山口は複数あるが、今回は北池登山口から北山奥山、中塚山、小高御位山を経て山頂を目指す。JR宝殿駅を出発し、旧山陽道を西に向かった。
北池登山口〜高御位山

国道2号線の『北池』交差点を北に進み、北池登山口へと向かう。北山鹿島神社の鳥居付近が登山口だ。
しかし、登山口の道標は探しても見当たらなかった。少し分かりにくい場所にあるため、地形図やガイドブックをよく確認しておこう。

登り始めは樹林帯だがすぐに岩陵歩きへと変わった。目の前には北山奥山や中塚山がそびえ、北に高御位山のどっしりとした山容をうかがえる。

稜線には視界をさえぎるものがなく、播磨アルプスを一望できる。
尾根を登りきると分岐に出合い、進路を北にとる。ここから小さなアップダウンの連続が始まり、これはゴールの桶居山登山口まで続く。

第一の鉄塔のある場所は、道標はないが中塚山で、第二の鉄塔が小高御位山だ。高御位山山頂に近くほどに傾斜は急になり、山頂直下の尾根を見上げると壁のようだった。

一見難易度が高く見えるが、白ペンキをたどれば足場はしっかりしている。そこそこの高度感もあり、先日出かけた小野アルプス山行を思い出す。岩場から振り返ると高砂市の街並みが広がり、遠く瀬戸内海まで見渡せた。

岩場を登りきると高御位山の案内板があり、もう一息で山頂だ。
山頂の高御位山神社では多くの人が休憩していた。本殿で、ここまで登ってこれた健康への感謝を伝え、ひととおりの眺めを楽しんだ後、昼休憩とした。山頂にはベンチや仮設トイレが設けられ、休憩適地である。



高御位山〜桶居山

高御位山山頂から主稜線を西に進む。桶居山への分岐までの間、いくつかの無名のピークを踏んでいく様はまさに縦走登山である。桶居山分岐を北に進み、桶居山へと向かう。

ここからは道標が設置されていないので地図をよく確認しよう。たどる尾根を間違えないよう注意したい。

桶居山縦走路も相変わらずアップダウンの連続だが、高御位山とは少し雰囲気が違った。多くのハイカーでにぎわう高御位山と異なり、こちらは静かでほとんど人がいない。先ほどまで見渡せた街並みも遠くなり、どこか高山の山奥にいるような錯覚を覚えた。

鉄塔を2本通過すると桶居山が山容を現す。円錐状の桶居山は周囲のどの山よりとがっており、ひと目でそれと分かった。

桶居山の登山道は岩が荒々しく露出しており、傾斜も急だ。近づいてみるとやはり岩壁のようで、ときには3点支持でゆっくりと登っていく。

山頂に山名板がないのは残念だったが、三等三角点標石が埋まっていた。360度に開けた展望は素晴らしく、姫路市の街並みを見渡せた。

桶居山〜桶居山登山口

下山は西に伸びる縦走路の尾根をたどり、桶居山登山口を目指す。ピークを踏んだからといって、下山は下り調子ではない。最後までアップダウンが連続するところが、このコースの面白いところだ。

終盤にさしかかると縦走路は樹林に覆われ、見通しが効きにくくなる。稜線から枝尾根がいくつも分岐しており、一本道ではあるが、尾根を間違えないように気をつけよう。

尾根の終点の急な斜面を下ると、竹林をぬけると桶居山登山口だ。県道を南に進み、御着駅から帰途についた。
高御位山・桶居山へのアクセス
行き:JR大阪駅〜(約60分)JR宝殿駅〜徒歩またはバスで北池登山口
帰り:桶居山登山口〜(徒歩約20分)〜JR御着駅〜(約70分)JR大阪駅
高御位山・桶居山縦走レポートまとめ
高御位山は低山ながら、岩場や抜群の眺望など魅力にあふれた山だ。道標の整備されていない桶居山では地図やGPSによる現在地把握が必要で、一般登山道に少し物足りなさを感じる人にうってつけのコースだろう。
岩で構成せれる登山道は歩きごたえがあり、岩場の練習にも最適ではないか。この記事を参考に、ぜひ出かけてみてほしい。
※この記事の情報は2020年3月執筆時のものです。