六甲全山縦走

山レポート

六甲全山縦走コースガイド|須磨浦公園〜市ケ原までの前半コースのご紹介

 いつか六甲全山縦走を——。

 これが、私が山歩きを始めたころの目標だった。関西近郊のハイカーで、六甲全山縦走を目標に掲げる人は少なくないだろう。

 とはいえ、公称56kmに及ぶ道のりは厳しく一筋縄では歩き通せない。完走するには事前の準備とリサーチが欠かせないのだ。

 「具体的なコースは?」

 「服装や装備は何が必要?」

 ここではこのような疑問にお答えしつつ、六甲全山縦走の前半コースをご紹介しよう。

目次

六甲全山縦走前半コースの概要

  • 歩行距離:約21.1km
  • 歩行時間:9時間44分(山と高原地図 標準コースタイム)
  • 累積標高差:約1500m
  • 難易度:経験者向け

 六甲山とは、西は神戸市須磨区から東は歌劇で有名な宝塚へと連なる山域の総称のことである。日本の近代登山発祥の地とされ、黎明期には小説「孤高の人」のモデルになった加藤文太郎らが、高みを目指してトレーニングを積んだ場所だ。

 最高峰の標高は931m。北部には有馬温泉を抱き、東西にいくつもの山が連なる。その山々をつなぐ、公称56kmの全山縦走路が走っているのだ。

 もちろん一日での踏破もできるが、初心者にとって、それは現実的ではないだろう。2分割、3分割とコースを分ければ挑戦しやすい。

 この記事では、六甲全山縦走路を途中の市ケ原で区切り、その前半をご紹介する。コースは次の通りだ。

  • 山陽電車『須磨浦公園駅』〜鉢伏山〜旗振山〜鉄拐山〜栂尾山〜横尾山〜馬の背〜東山〜高取山〜菊水山〜鍋蓋山〜市ケ原〜神戸市営地下鉄『新神戸駅』

補給とエスケープポイント

 六甲全山縦走の前半コースは、鍋蓋山の標高486mが最高地点である。500m足らずの山々をつないで歩いていくのだ。

 ただし、低山だからと侮ってはいけない。上記の標高グラフで分かるようアップダウンが連続し、その累積標高差は1500mを超える。

 万が一途中で力尽きた場合のために、エスケープルートを入念に調べておきたい。幸い六甲全山縦走路は市街地を通過する。市街地から公共交通機関でエスケープするのが、安全で確実な方法だ。

 以下は代表的なエスケープポイント。

  • 須磨アルプス下山後:神戸市営地下鉄妙法寺駅
  • 高取山〜菊水山の中間:神戸電鉄鵯越(ひよどりごえ)駅
  • 菊水山から鈴蘭台方面へ下山後:神戸電鉄鈴蘭台駅

 また、歩行が長時間に及ぶため飲料水や行動食も十分に用意しておきたい。とはいえ、先述のように市街地を通過するため、自動販売機やコンビニでの補給も可能だ。

六甲全山縦走
補給は市街地に点在する自動販売機や、コンビニを利用しよう。
  • KOHYO 高倉台店:〒654-0081 兵庫県神戸市須磨区高倉台4丁目13
  • ローソン 須磨妙法寺界地店:〒654-0121 兵庫県神戸市須磨区妙法寺界地80−1
  • ひよどり商店の自動販売機:〒652-0051 兵庫県神戸市兵庫区里山町648-2
  • 住宅街の自動販売機

 以上を参考に、しっかりと準備を整えてから挑戦しよう。

六甲全山縦走の装備・服装

 六甲全山縦走路は、須磨アルプスの岩稜帯を除けばよく整備された登山道が続く。特別な装備は必要なく、日帰り登山の基本装備があれば踏破できるだろう。

 下記は最低限の装備リストである。これ以外に必要な装備は、各自で用意してほしい。

  • 軽登山靴
  • 季節に応じた防寒着
  • レインウエア
  • 軽アイゼンまたはチェーンスパイク(冬季)
  • 地図とコンパス、またはスマホの登山地図アプリ
  • ヘッドランプと予備電池
  • スマートフォン
  • モバイルバッテリー
  • 救急用品
  • 飲料水
  • 行動食・昼食・非常食

 市ケ原で下山せず、そのまま宝塚まで縦走する人は、時期によっては軽アイゼンが必要になる。

 須磨〜市ケ原での積雪の可能性は低いが、その先のガーデンテラスや六甲最高峰、さらに宝塚方面は積雪や凍結の可能性があるのだ。一日で踏破する人は、気象情報をよく確認しておこう。

 積雪の一例は、『六甲山で楽しむ雪中トレイルランニング|宝塚〜東六甲縦走路〜摩耶山』を読んでほしい。

 具体的な救急用品や服装について知りたい人は、以下のリンクを参考に。

六甲全山縦走コースガイド

六甲全山縦走

 六甲全山縦走は、ここ須磨浦公園駅からスタートする。

 実は正式なスタート地点はもうひと駅先のJR塩屋駅なのだが、神戸市が主催する「KOBE六甲全山縦走大会」のスタート地点が須磨浦公園であることから、現在は須磨浦公園をスタートとすることが多い。

 装備を整え、まずは鉢伏山、旗振山を目指す。

須磨浦公園〜旗振山

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この日は空がかすんでいたが、晴れた日はもっと美しい。

 須磨浦公園から入山すると、いきなり始まる階段の連続にうんざりしてしまう。登り始めで体が温まっていないこともあり、コース上で一番キツく感じるかもしれない。

 そんな辛さを忘れさせてくれるのが、尾根上から望める瀬戸内や神戸市街地の眺望である。海、山、街が近い神戸ならでの眺めで、山にいながら海の景色を楽しめることが、六甲山の特徴であり魅力である。

 須磨浦ロープウェイ山上駅の展望台からは六甲山域でも一二を争う素晴らしい景色が広がっているので、ぜひ立ち寄ってみよう。

 鉢伏山への分岐を見送り、(もちろん鉢伏山山頂に立ち寄ってもよい)旗振山へと向かうと階段はいったん落ち着き、静かなトレイルを歩いていく。

 旗振山の頂上には旗振茶屋があり、休憩適地だ。もちろん旗振山からも好展望が広がっている。

旗振山〜須磨アルプス

六甲全山縦走

 旗振山からいよいよ全山縦走路を歩き始める。須磨アルプスを目指して東に進もう。

 このあたりは全山縦走路以外の登山道が複数走っており分岐も多い。道標が整備されているが、地図でルートを確認しながら進みたい。

 今回は鉄拐山を見送り巻き道を進んだが、余力のある人は登ってみよう。頂上では360度の展望を楽しめる。

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奥の白い建物が『おらが茶屋』

 おらが茶屋を通過し、ここでいったん住宅街に下りる。せっかく登ったのにまた下りるなんて理不尽な気もするが、これが六甲全山縦走だ。この先も登っては下るの連続である。

六甲全山縦走
おらが茶屋の階段を下りきると住宅街に出る。補給が必要な人はスーパーに立ち寄ろう。

 ひとつ目の補給ポイント『KOHYO 高倉台店』を通過すると、縦走名物の400段階段が待ち構える。初めてここを訪れたときは、何度も休憩しながら登ったものだ。

六甲全山縦走

 400段階段を登りきり、その先の栂尾山、横尾山へと進むと、いよいよ須磨アルプスの岩稜帯である。

六甲全山縦走
400段階段の途中からの眺めも素晴らしい。遠くに明石海峡大橋が見える。

須磨アルプス〜妙法寺の住宅街

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 須磨アルプスでは風化した岩場を歩く。南には瀬戸内の海が広がり、北はすぐ住宅街だ。須磨アルプスはその間を東西に貫き、ダイナミックな光景が広がっている。

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 核心部の『馬の背』は、両サイドが切れ落ちたスリル満点の尾根である。人がすれ違えるほどの道幅はない。転落しないよう慎重に進もう。

 馬の背を無事に通過し、東山の分岐を妙法寺方面に下っていくと住宅街に出る。この先は高取山まで『六甲全山縦走路』の案内を目印に進む。

六甲全山縦走
市街地は迷いやすい。道標を見失わないように進もう。

 もしエスケープする場合は、ここから神戸市営地下鉄『妙法寺駅』へ。

妙法寺の市街地〜高取山〜丸山の市街地

六甲全山縦走

 道標を目印に進むと、『妙法寺小学校前交差点』へ到着する。この交差点から南に徒歩3分ほどに『ローソン 須磨妙法寺界地店』があるので、休憩や補給が必要な人は立ち寄ろう。

 交差点から先に進むと高取山にと取り付く。

六甲全山縦走

 高取山の頂上には高取神社があり、登山道はハイカーにまじって多くの参拝客も歩く道だ。頂上一帯は神域とされ、トレイルランの場合は神域は走らず、歩きに徹する。

六甲全山縦走

 高取山への尾根を登りきると、荒熊神社に到着する。さらにその先が高取神社の入り口だ。全山縦走路は高取神社へは入らず、鵯越(ひよどりごえ)方面へと続く。

六甲全山縦走

 月見山茶屋の先の左手に広場があり、トイレの北に全山縦走路が続く。(もし高取山で離脱する場合は、長田方面に下山しよう。)

 高取山を鵯越方面に下山すると、丸山の住宅街だ。

丸山住宅街〜菊水山

六甲全山縦走

 ここからは複雑な住宅街を歩く。地図と道標を確認しながら正確に進みたい。

 さて、通常は住宅街=アップダウンのない休憩ゾーンと考えることだろう。

 しかし、丸山の住宅街は休憩ゾーンではない。道はアスファルトで舗装こそされているものの、急な登り坂が連続するのだ。

六甲全山縦走
鵯越駅のすぐ近く『ひよどり商店』。

 ひとまず鵯越駅を目標に、ゆっくりと進もう。鵯越駅手前には『ひよどり商店』があり、自動販売機で補給ができる。この先の菊水山の急登に備え、十分に休憩しておきたい。

六甲全山縦走
水道施設の脇を進み、菊水山を目指す。

 鵯越駅を出発し、しばらくは平坦な道を進む。水道局の施設を通過し、ダム下の橋を渡ると菊水山の登山口だ。

菊水山〜鍋蓋山

六甲全山縦走
菊水山は階段地獄だ。

 菊水山は六甲全山縦走路の難関のひとつだ。(ということは、まだ難関がある)

 標高は459mだが、山頂まで尾根を直登する階段の連続である。この先の道のりはまだ長い。適度に休憩をはさみながら、体力を温存しつつ登りたい。

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 菊水山の頂上には大きなアンテナがあり、これまで登ってきた山や街並みを見渡せる。よく晴れていれば淡路島や明石海峡大橋も望める好展望地だ。

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菊水山の展望台より。

 菊水山を通過すると天王吊り橋まで高度を下げ、再び鍋蓋山への急登に取り付く。この時点で疲労が激しい場合は、菊水山山頂から鈴蘭台方面に下山しよう。天王吊り橋まで進んでしまうと、鍋蓋山を登らざるを得なくなる。

六甲全山縦走

 菊水山からの下山は、急なガレ場も通過する。慎重に下りきると天王吊り橋だ。ここから鍋蓋山に取り付く。

鍋蓋山〜大龍寺〜市ケ原

六甲全山縦走

 鍋蓋山も菊水山と同じぐらいの急登が続く。急登を登りきり、頂上が近くにつれて徐々に平坦な道となるので、そこまでは我慢だ。

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 鍋蓋山の標高は486m。前半コースの最高峰である。この先も全山縦走路を東に進み、大龍寺山門、市ケ原へと下っていく。

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大龍寺山門。

 全山縦走路は摩耶山、ガーデンテラス、六甲最高峰へと続くが、前半コースはここまでだ。市ケ原から布引貯水池を経て新神戸へ下山しよう。

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市ケ原。トイレがあり、自動販売機での補給ができる。

 お疲れ様でした。

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下山後の立ち寄り湯:神戸クアハウス

神戸クアハウス

 新神戸駅から帰途についてもよいが、その前に汗を流してさっぱりしよう。おすすめの温泉は神戸クアハウスである。

 神戸クアハウスでは天然温泉を楽しめ、食事や宿泊も可能だ。しかも日本で唯一、ふたつの温泉を堪能できるという。

 新神戸へ下山したときは、ぜひ立ち寄りたい温泉だ。

  • 住所:〒651-0093 兵庫県神戸市中央区二宮町3丁目10−15
  • 電話:078-222-3755
  • 営業時間:24時間 年中無休
  • 料金:大人(中学生以上)990円

六甲全山縦走まとめ

 公称56kmにおよぶ六甲全山縦走路も、2分割、3分割すると挑戦しやすい。

 ここでは市ケ原で2分割する前半コースをご紹介したが、登山道が縦横に走る六甲山では個々のレベルに応じてコースを設定しやすい。市街地に近く、抜群のアクセスも魅力だ。

 六甲全山縦走に興味を持った人は、この記事を参考にぜひ挑戦してみよう。

  • この記事を書いた人

Takashi

元靴メーカー勤務の職人、現在はWEBライターとしてアウトドア系メディアで執筆しています。靴業界での10年以上の経験、趣味のアウトドア経験を活かして書きます。大阪府山岳連盟「青雲会」所属・読図ナヴィゲーションスキル検定「シルバーレベル」・2018年「狩猟免許」取得・ランサーズ「認定ランサー」・フルマラソンベスト3時間29分。

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