六甲山 ドントリッジ

六甲山の登山コース【北ドントリッジ・南ドントリッジ】の概要とハイキングレポート

 六甲山は海岸から山頂までの平面距離がわずか数キロだ。その狭い範囲の中に標高差が900m以上もあるのだが、都市に近く交通が発達しており、アクセスがいい。そのおかげで、関西で有数のレクリエーションの場として親しまれるようになった。

 しかし、人気の高さゆえに、週末ともなれば登山道でさえ渋滞することがある。これでは有名観光地とかわらないではないか……。

 そんな人におすすめしたいのが、六甲山のマイナースポット『ドントリッジ』である。
 ここでは、ドントリッジのコース概要や実際に歩いたハイキングレポートをお届けしたい。

目次

ドントリッジの概要

  • 歩行距離:約12km
  • コースタイム:約5時間30分
  • 難易度:経験者向け
  • コース:新神戸駅〜市ケ原〜高雄山〜南ドントリッジ〜分水嶺越林道〜北ドントリッジ〜森林植物園東門〜トゥエンティクロス〜市ケ原〜新神戸
  • 注意!:トゥエンティクロス崩落箇所あり神戸市の六甲山系登山道 通行止(通行注意)状況

 ドントリッジとは、明治時代後期に六甲山で登山を開始した登山家『H.E.ドーント』が好んで歩いた登山道のことである。高雄山から分水嶺越林道へと続く『南ドントリッジ』と、分水嶺越林道から森林植物園へと至る『北ドントリッジ』がある。山と高原地図・六甲摩耶ではグレー破線に分類される、玄人好みの登山道といえるだろう。

ナビゲーションスキルが必須

 『リッジ=痩せた岩尾根』の字のごとく、ドントリッジは細い尾根道を歩くコースで小さな岩場もある。南北ドントリッジはマイナーなコースであり、踏み跡が不明瞭な箇所もある。特に北ドントリッジは一般登山道ではなく、道標も設置されていない。

 基本的には、道中に点在する石柱を目印に、尾根を外さないように歩けばいいのだが、ナビゲーションスキルが必須である。
 個人的には、地形を詳細に捉えながら歩くには2万5000分ノ1地形図でも縮尺が大きいぐらいだ。1万5000分ノ1地形図や、吉備人出版の『六甲山系登山詳細図・西編』がおすすめである。

H.Eドーントと六甲山開拓の歴史

 1868年(明治元年)に神戸港が開港され、それと同時にイギリス人貿易商『A.H.グルーム』が神戸を訪れ、住み始めた。彼は六甲山で初めての別荘を三国池のほとりに構え、外国人たちに紹介したのだ。これが六甲山開発の始まりである。

 グルームは、それまで生活の糧(例えば薪や水)を得る場所であった六甲山をリゾート化し、1903年(明治36年)には日本初のゴルフ場『神戸ゴルフ倶楽部』を創設した。現在では六甲山開拓の祖として讃えられ、記念碑台に像が建てられている。

 六甲山の開拓史の中で、A.H.グルームと並び『H.E.ドーント』の存在も忘れてはならない。

 神戸ゴルフ倶楽部は積雪や悪天候を理由に冬季閉鎖され、活動ができなかった。その間のレクリエーションとして、H.E.ドーントを中心に、神戸に住む外国人たちが六甲山で登山を開始したのである。ドーントは登山団体『The Mountain Goats of Kobe』を設立し、仲間と共に冬の六甲山や摩耶山に多く登ったのだ。

 ドーントらの六甲山での活動は、日本における近代登山の幕開けであり、六甲山は日本の登山文化の発祥地であるのだ。六甲山各地に現在も残る欧風の地名『トゥエンティクロス』『アゴニー坂』『シェール道』などは、ドーントらにより名付けらた、六甲山登山の黎明期の名残である。

※参考:六甲山における外国人別荘地の成立と展開 上垣 智弘, 安島 博幸

北ドントリッジ・南ドントリッジハイキングレポート

新神戸駅〜市ケ原

新神戸駅のすぐ裏手。長い階段が登山道の入り口だ。

 新神戸駅は再度山(ふたたびさん)や摩耶山への玄関口だ。駅のすぐ裏手が登山口であり、抜群のアクセスの良さが魅力である。

布引の滝
布引の滝。

 長い階段を上り、布引の滝、見晴らし展望台、布引貯水池をへて市ケ原へと向かおう。市ケ原までは観光地の延長であり、遊歩道が整備されている。駅から約1時間で市ケ原に到着だ。

市ケ原〜高雄山

 市ケ原から先が本格的な登山道の始まりである。まずは高雄山山頂を目指そう。

市ケ原
市ケ原の先からが本格的な登山道だ。

 舗装路を西に進むと、道の北側に分岐がある。道標はあるが、2018年度版の山と高原地図には記載されていない分岐だ。

高雄山への分岐を見逃さないように。

 一見廃道のようで、実際あまり歩く人もいないのだろう。やや荒れた登山道を進むと、高雄山の主稜線の分岐に出合う。分岐を北に進めば高雄山に到着だ。

 高雄山の標高は476m。山頂は狭く展望も効かないが、静かな場所である。人混みをさけて山を楽しみたい人にはうってつけの場所だろう。

高雄山

 高雄山からさらに北に進むと、いよいよドントリッジである。

南ドントリッジ

六甲山 ドントリッジ

 高雄山から分水嶺越林道へと進むと、旧字体で『神戸區(神戸区)』と書かれた石柱が現れる。ドントリッジはこの石柱が建てられた尾根沿いの道であり、石柱を目印に進むことができる。

 とはいえ、この付近には複数の登山道が走っており、それだけを目印に進むのは危険である。地形図や登山地図アプリでルートを確認しながら進みたい。

南ドントリッジから摩耶山方面を望む。

 南ドントリッジは思ったより展望がよく、東には摩耶山の稲妻坂や黒岩尾根を望める。送電線以外の人工物は視界に入らず、深山幽谷の稜線歩きを楽しんでいるようだった。

 小さなアップダウンを経て南ドントリッジを下っていくと、分水越林道へと出る。

北ドントリッジ

 分水嶺越林道から先が北ドントリッジだ。この取り付きが分かりにくいので注意しよう。

分水嶺越林道を『行き止まり』へと進む。その先に神戸市水道局の設備があり、そこが北ドントリッジへの取り付きだ。

 林道の行き止まりに神戸市水道局の施設があり、その脇が北ドントリッジの登山口である。ガードレールに書かれた『北ドントリッジ→』が唯一の目印だ。

六甲山 ドントリッジ

 北ドントリッジは序盤から急坂である。まずは460mの小ピークを目指そう。

 北ドントリッジは地形図上でも小ピークのアップダウンが読み取れるが、実際には隠れピークが多数あり、私も騙されそうになった。

赤線で囲った場所が北ドントリッジの尾根である。小ピークとアップダウンが読み取れるが、実際にはもっと多くのアップダウンがある。この地図を見て尾根やピークが分からない人は、訪れないほうが無難だろう。

 等高線間隔が10mの地形図の場合、10m未満の高低差は地図には記載できず、ということは等高線1本の最大の高低差は19mである。等高線がない、あるいは1本分の高低差だからと、平坦な道とは限らないのである。

 460mのピーク付近は、地図上ではアップダウンは少ないように思われるが、実際には10m未満の岩場やアップダウンの連続だった。

六甲山 ドントリッジ
石柱を目印に生い茂った森の中を進んでいく。

 ピークから先は尾根伝いに北北東へと進もう。うっすらと踏み跡があり、尾根や石柱を目印に進めばいいが、くれぐれも尾根を外さないように注意したい。進んだ先に再び小ピークが現れ、道は尾根伝いに徐々に西へ、森林植物園の園内へと進んでいく。

六甲山 ドントリッジ
北ドントリッジのゴールはこの場所。
森林植物園内のトンネルの東に合流する。

 北ドントリッジのゴールは神戸市立森林植物園の園内だ。園内にあるトンネルの東側、展望台への階段に出てくる。

神戸市立森林植物園 長谷池
森林植物園内の長谷池。

 森林植物園には神戸電鉄『北鈴蘭台駅』への送迎バスがある。ここでエスケープしてもいいし、余力のある人はトゥエンティクロスを経由して、再び新神戸駅まで歩いてみよう。

トゥエンティクロス

森林植物園の東門。ドントリッジ経由では入園料を払わずに中に入れてしまうが、森林植物園は有料だ。出口で入園料を払おう。

 森林植物園の東門から先が、登山道『トゥエンティクロス』へとつながっている。沢沿いの爽やかな登山道で雰囲気もいい。ただし、崩落箇所があるので注意したい。

六甲山 トゥエンティクロス
トゥエンティクロスの河童橋。この先、あじさい広場の先が大きく崩落している。

 トゥエンティクロスの一部である高雄山の麓が大きく崩落しており、危険な状態である。通行できなくはないが、なるべく案内にある迂回路を選択しよう。詳しくは神戸市の六甲山系登山道 通行止(通行注意)状況を確認してほしい。

市ケ原に帰ってきた。

 トゥエンティクロスを経由し、森林植物園から約1時間程度で市ケ原に到着する。ここからは朝きたルートを戻り、布引貯水地、布引の滝を経て新神戸駅に下山しよう。

***

見晴らし展望台からの眺め。

 ドントリッジは、六甲山開拓の黎明期にH.E.ドントが好んで歩いた歴史のあるルートだ。現在では一般登山ではないマイナールートであるが、ルートファインディグを楽しんだり、人混みのない静かなハイキングを楽しんだりと、週末に大勢のハイカーが訪れる六甲山域において玄人好みのルートである。

 一般登山では物足りない、そんな人にぜひおすすめしたいルートだ。地形図と登山地図アプリを用意して、ぜひ出かけてみてほしい。

下山後の立ち寄り湯:神戸クアハウス

 都市部では珍しいふたつの天然温泉と、名水『神戸ウォーター』による多彩なお風呂を楽しめる。新神戸駅から徒歩約10分と立地もよい。時間のある人はぜひ立ち寄って汗を流そう。

  • 住所:〒651-0093 兵庫県神戸市中央区二宮町3丁目10-15
  • TEL:078-222-3755
  • 料金:大人990円〜
  • 営業時間:24時間年中無休
  • 神戸クアハウス公式サイト

ドントリッジへのアクセス

※この記事の情報は2020年10月現在のものです。

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