2018年に引き続き、2019年も森林植物園で開催されたクロスカントリーリレーマラソンに参加してきた。
森林植物園やクロスカントリーランの解説を交えながら、その様子をレポートしよう。
大会概要
- 主催:ランスタ神戸
- 開催日:2019年5月5日
- 開催場所:神戸市立森林植物園(多目的広場)
- 競技種目:親子ペア-マラソン1.6km /ハーフマラソン個人/42.195kmチームリレー(2名~10名)一般の部・ハーフの部
神戸市立森林植物園で開催される、クロスカントリーランの大会である。個人ハーフの部をはじめ、チームや親子ペアでの参加もできる。
園内の多目的広場にコースが設置され、芝生広場では参加者がテントやグランドシートを用意し、ランに応援にピクニックと、思い思いに時間を過ごす。
こどもの日に開催されるにふさわしい、親子やご家族、ご友人と楽しめる、ほのぼのとした大会であった。
世界の森林を再現した神戸市立森林植物園

レースの会場となった神戸市立森林植物園は、六甲山の山中に位置する総面積142.6haの広大な植物園である。
園内には北アメリカ産樹林区、ヨーロッパ産樹林区、アジア産樹林区、日本産樹林区などが設けられ、世界の森林を再現してることが特徴だ。
木々や植物の観察はもちろん野鳥の観察にも適し、日本野鳥の会が主催する定例探鳥会も開催されている。

また、森林展示館では植物の展示はもちろん、六甲山の開拓の歴史も知ることができ、大変興味深い。
六甲山は日本における近代登山発祥の地とされ、当時の登山家たちが高みを目指してトレーニングを積んだ場所なのだ。
大正時代の六甲山脈大縦走(六甲山全山縦走)の記録や、当時の登山道具、RCC(日本初のロッククライミングクラブ)などの記録が展示されており、六甲山好きや山好きはぜひ一度訪れてみてほしい。
神戸市立森林植物園
- 住所:〒651-1102 神戸市北区山田町上谷上字長尾1-2
- 電話:078-591-0253
- FAX:078-594-2324
クロスカントリーランとは
クロスカントリーランニングとは、起伏のある不整地を走るスポーツである。同じく不整地を走るスポーツにトレイルランニングがあるが、違いがどこにあるのだろう。
トレイルランニングは日本でも認知されているように思うが、クロスカントリーランはなじみが薄いかもしれない。
調べてみると、正確に定義はされていないものの、いくつかの違いをまとめてみた。
クロスカントリーラン
草原や丘陵地、森林公園などに設置された未舗装路の周回コースを走る中距離〜長距離走競技である。起伏はあるものの、歩かねばならないような急な斜面はない。
基本的にはランニングウエアとシューズのみで走り、ここがトレイルランニングとの大きな違いで、マラソンや他の陸上競技に近いといえる。スパイクシューズを使用する選手もいるようだ。
トレイルランニング
トレイルランニングは主に登山道に設置されたコースを走る。
20km程度のレースから100マイル(160km)レース、スカイレース(標高2000m以上の山を走る)と、さまざまな距離・種目があり、山岳地帯を走るので、レインウエアや補給食、その他の装備を背負って走る。
装備を背負って走ることと、走る舞台が山岳地帯であることがトレイルランニングの特徴であろう。
クロスカントリーランはマラソンやトレイルランニングの練習にも最適
クロスカントリーランには、マラソンやトレイルランニングの練習におすすめできる、さまざまなメリットがあるのだ。
まずは、アスファルトの上を走るロードランニングに比べて、土の上を走るクロスカントリーランは着地衝撃が少なく足に優しい。
さらに、不整地に対応するためにあらゆる角度で着地し、バランスをとりながら走ることで、普段使わない筋肉にも刺激が入る。そして、不整地にも対応できる柔軟なランニングフォームが手に入るのだ。
アップダウンで心肺機能も強化できるだろう。
個人的には”走り続ける”練習としてもいいと考えている。
「ランナーが走り続ける練習?何をあたり前のことを」と思われるかもしれない。
実は、トレイルランニングでは急斜面などでは積極的に歩くことも多く、私には、歩く→走る→そしてまた歩くのリズムが体に染み付いている。そのため”歩かずに走り続ける”ことが苦手なのだ。
その点、クロスカントリーランでは起伏を走るものの、歩くことはないため純粋に走力アップを図れるだろう。
クロスカントリーランを練習に取り入れれば、故障のリスクを減らしながら走力アップを望め、結果、マラソンやトレイルランニングの練習にも最適といえるのだ。
2019 神戸 森林植物園クロスカントリーリレーマラソン参加レポート

トレイルランナーにとって、アップダウンは慣れたもの、というより当たり前のものだ。ロードランナーが嫌がる起伏のあるコースでこそ、登りや下りで坂で加速して、ロードランナーに差をつけたい。
トレイルランニングのアップダウンと比べれば、クロスカントリーランのそれはわずかなものだ。しかし。
「クロスカントリーランの起伏など大したことはないだろう」
などと高をくくっていると、後半にジワジワと疲労がたまり痛い目にあう。
2018年の5月、森林植物園にて開催された同大会に、私の所属する千里ランランクラブの先輩と共に参加した。
前原 氏は看護師として勤務されるかたわら、さまざまなレースに出場し、富士登山競争では4時間をきり、六甲山全山縦走路を5時間台で駆け抜けるなど、実力の持ち主である。
2018年大会ではスタート直前から天候が急激に崩れだし、雷雨の中でのレースとなった。水たまりのようなコースを泥を跳ね上げながらジャブジャブと走り、それはそれで楽しかったのを覚えている。
ピクニック気分で参加できるほのぼのレース

2019年大会は天候に恵まれ、少し暑いぐらいだった。新緑に色づいた木々や植物が、華やかに初夏の訪れを知らせてくれる。
受付を済ませ芝生広場で準備を始めた。
参加者は思い思いにテントやグランドシートを広げ、ピクニックを楽しみながら大会を満喫する。

親子ペアに家族で参加し、お父さんと子供が走り、お母さんが応援する。そんなほっこりとした風景を見られる大会なのだ。
親子ペアは2名でゴールするのがルールだが、お父さんを置き去りにしてゴールする男の子の姿も見られ、会場が笑いに包まれる。スタート前の緊張をすっかりほぐしてくれた。
レーススタート!
「始めの1周はペーサーがつきますから、抜かないようにお願いします」
いよいよスタートの時間。合図とともに個人ハーフの選手、チームリレーの選手が入り混じって一斉に走り出した。
さすがにチームリレーの選手は、走る距離が短い分ペースが速い。ペーサーにぴったりと張り付く先頭集団は、ほとんどがタスキをかけたチームリレーの選手たちだ。その中に前原 氏がほぼ先頭をキープしながら走っているではないか。個人ハーフの選手の中ではダントツのスピードである。
私にはこの時点でオーバーペースだったため、ペースを落として自分の走りに徹することにした。
個人ハーフの部は1.6kmのコースを13周する。記憶が曖昧ーー途中から周回数を数えられなくなったーーだが、前原 氏に周回おくれにされながらも、7〜8周目まではいいペースで走れたように思う。
それにしても暑かった。気温が高すぎることはなかったが、日差しがまぶしく、暑さに慣れていない体にこたえる。
1周おきに給水所で水分を補給するも、ジワジワと疲労がたまってきた。さらに、前半は何とも思わなかったわずかな起伏が、着実と体力を削いでいく。これが平坦な道を走るマラソンとの違なのだ。
ふと前を見ると、トライアスリート風の選手がコース脇にある水道に近づいた。おもむろにスポンジを取り出し、水道でぬらしてから頭や首筋を拭いている。
なるほど、その手があったか。
その選手は暑さを予想し、あらかじめスポンジを用意していたのだ。
それ以降、1周おきに水道に立ち寄り、顔や頭をぬらしてから走ると調子がいい。それでも練習不足でペースが上がらなかった私は、気がつけば前原 氏 に2周回遅れにされていた。
「個人ハーフの部トップ選手のゴールです!!」
場内にアナウンスが入り、ゼッケン番号から前原 氏がトップでゴールしたことを知る。私も早くゴールしなければ。
しかし、ラスト2周は本当に辛かった。
体中が重く、なかなか前に進まない。ほんの少しの登りが分厚い障壁のように立ちはだかった。
それでも足を前に出し続ければゴールできるだろうと、無心になって走り続ける。
【結果】
- 私:1時間48分
- 前原 氏:1時間26分(優勝)
ゴール後の無料ストレッチブースが最高だった

ゴール後に記録証を受け取り、すぐさま芝生に寝っ転がった。
水分を補給し、食べ物をつまみながら「そういえばストレッチブースがあったな」とそちらへ向かう。
担当してくれたのはどうやら学生さんで、専門学校で整体の勉強をしているらしかった。
長兄靭帯の故障のことを伝えると、的確にストレッチでほぐしてくれ、足がだいぶ軽くなった。なかなか将来有望ではないか。15分ほどの施術をしっかりと受けられ、しかも無料。ブースで施術してくれた学生さん、本当にありがとう!
また来年も参加したい

トレイルランニングと違い、クロスカントリーランはレース全体を俯瞰(ふかん)できるのが楽しい。
特に、本大会は大人も子供も入り混じって一生懸命に走る・遊ぶ、温かい大会であった。主催のランスタ神戸代表の永瀬 氏 が逐一実況してくれ、見ている方も楽しめる。
しかも、不整地を早いペースで走るので練習にも最適。
私と前原 氏のゴール後の感想は「こんな練習コースが近所にあればいいのに」であった。
また来年も参加しよう。2人でそう話しながら、神戸の温泉へと足を運んだ。