何が日本一なのか——。それは標高の低さである。
アルプスといえば高く険しい山々を連想するだろう。しかし、小野アルプスは標高100m〜200mの山が連なる日本一低いアルプスなのだ。
標高は200m足らずだが、紅山(べにやま)の岩場や稜線上からの抜群の眺望など見所が多い。日本一低いにもかかわらず、連続するアップダウンはなかなか侮れない。
ここでは、日本一低いアルプス「小野アルプス」の縦走レポートをご紹介しよう。
目次
ご当地アルプス【小野アルプス】とは
- 最高地点の標高:惣山(小野富士)198.9m
- 歩行距離:約10km(JR小野町駅〜紅山〜白雲谷温泉ゆぴか)
- 歩行時間:約4時間
- 累積標高差:約650m
- 難易度:初心者向け

小野アルプスとは、兵庫県小野市と加古川市の境界に位置する山々の総称のことである。高山(たかやま)・前山(まえやま)・愛宕山(あたごやま)・安場山(やすばやま)・総山(そうやま)・アンテナ山・惣山(そうやま)・紅山(べにやま)・岩山(いわやま)からなり、標高200m足らずの山々が連なっている。
小野アルプスは日本一低いアルプスとして親しまれ、多くのハイカーが訪れる。その標高から簡単に登れそうだが、縦走路はアップダウンの繰り返しで、大変登りがいのあるコースだ。
紅山では巨大な岩場を登るスリルを味わえ、稜線上からは低山とは思えない風光明美な眺望を楽しめる。小野アルプスの発着点には『白雲谷温泉ゆぴか』があり、ゴール後には天然温泉で汗を流せる魅力的なコースである。
紅山の岩壁に注意!
紅山には大きな一枚岩を3点支持で登る場面がある。見た目以上に傾斜がキツく高度感のあるコースだ。高所が苦手な人は立ちすくむかもしれない。雨で岩がぬれているときは、特に注意が必要だ。
しかし、足場はしっかりしているため気をつければ初心者でも登れる。岩場に適した靴を履いていこう。
- <参考>:小野市観光協会
小野アルプス縦走コースレポート
小野アルプスには縦横に登山道が通っており、好みや体力に応じてコースを選択できる。今回は、紅山の岩場とゴール後の温泉を楽しむため、JR小野町駅スタート〜紅山〜縦走路〜白雲谷温泉ゆぴかの、人気縦走コースを選んだ。
JR小野町駅〜鴨池公園〜紅山

JR加古川駅から加古川線を乗り継ぎ、JR小野町駅に到着すると、多くのハイカーやトレイルランナーが同時に下車した。数年前に訪れたときは小野アルプスはまだマイナーで、このような人混みはなかった。僕が小学生の遠足で登ったときも同じくだ。
そう、僕は兵庫県小野市の出身である。地元の山が愛され、大勢の人が訪れることを素直にうれしく思う。駅の待合室で準備を整え、紅山の登山口を目指して歩き始めた。

小野市は川と里山に囲まれた自然豊かな街で、小野アルプス周辺は、よりいっそう緑を感じられる場所だ。

その中にある『鴨池』は渡り鳥の飛来地として有名で、冬になるとコハクチョウが飛来する。紅山登山口のすぐ近くにあるから、寄り道してみよう。

鴨池の手前、女池の分岐を南西に進み『きすみの見晴らしの森』へと入る。登山口はその先の岩倉峠から始まるのだ。森の入り口にはトイレや案内地図があるので、確認しておこう。

岩倉峠からいよいよ樹林帯の登山道が始まるのだが、標高は200m足らずである。すぐに登り終わり開けた場所に到着すると、目の前に巨大な一枚岩が飛び込んでくる。紅山の岩崖だ。
紅山の岩場

岩崖にはオレンジ色の苔が生え、遠くから見ると赤く染まったように見える。それが紅山と名付けられた所以である。
麓から見上げると簡単に登れそうだが、近づいてみるとその傾斜のきつさに驚くことだろう。手持ちのコンパスで斜度を計測してみると30度近かった。

高度感も相当だ。関西で例えると、須磨アルプスの馬の背や荒地山の岩梯子よりも、よほどスリルを味わえるだろう。
とはいえ、白ペンキを目印に進めば足場はしっかりしている。小学生の遠足で登るような山だから、3点支持でゆっくりと登れば大丈夫だ。

標高182.8mの紅山の山頂からは、小野市や加古川方面の素晴らしい景色が広がっていた。
紅山〜展望デッキ

縦走路を歩くには紅山の岩壁を下るのが近道だが、登りより下りのほうが難易度が高い。そこで、別のルートから下り、展望デッキと惣山を目指すことにした。

いったん登山口へと下山し、展望デッキ方面の尾根を登っていく。惣山は小野富士とも呼ばれる小野アルプスの最高峰だ。標高はわずか198mだが、この尾根が本コースでもっとも長い登り道である。

途中の展望デッキは景色良好で、小野市の街並みはもちろん、遠くには明石海峡大橋や淡路島、六甲山の山並みまで見渡せる。

ちょうどお昼どきに到着したので、ここで昼食休憩とした。
展望デッキ〜惣山〜アンテナ山〜総山

展望デッキからもうひと登りで惣山に到着である。山頂は小さな広場で休憩適地だが、木々に遮られて見通しが悪い。休憩するなら展望デッキがおすすめである。
ここから小野アルプス縦走路を歩き、温泉を目指して歩いていく。次なる山はアンテナ山だ。

惣山からの縦走路、アンテナ山の山頂と、眺望の良い縦走路が続く。標高171.6mの山頂には名前のとおりアンテナがあった。一見テレビのアンテナのように見えたが、詳細は不明である。

いったん高度を下げ、総山へと登り返す。ここからは標高差50mを登ったり下ったりの繰り返しだ。この小さなアップダウンがあるから小野アルプスは侮れない。縦走の累積標高は650m程度になり、なめてかかると後悔することになる。
惣山〜アザメ峠〜安場山〜愛宕山〜前山

総山からアザメ峠へと下り車道に出合う。そして再び縦走路へと入ると、前半のアルペンムードから静かな樹林帯の縦走路へと雰囲気が変わる。

少し急な階段を登り、いったん下って登り返したところが安場山だ。よく整備された登山道を辿り、アップダウンを経て愛宕山へ。愛宕山から大きなアンテナが見える場所、それが前山だ。

前山にはNTTの中継所があり、巨大なアンテナがそびえ立つ。いくつかのベンチが設けられ休憩にぴったりの場所だ。

ここまで来れば残す山はあとひとつ。ゴールには温泉が待っている。
前山〜高山〜白雲谷温泉ゆぴか

前山からやや急な登山口を下り、登り返して尾根に乗る。その先が高山である。

高山は標高127.1mと、小野アルプスでもっとも低い。しかしながら、そこから広がる景色は良好で、里山の風景を楽しめる。
高山からゆぴかまでは800歩! そう道標にあった。つづら折れの登山道を下ると白雲谷温泉ゆぴかの脇に到着する。このままJR市場駅まで歩いてもよいが、せっかくだから温泉で汗を流して帰りたい。

下山後の立ち寄り湯:白雲谷温泉ゆぴか

白雲谷温泉ゆぴかでは、約1億年前の地層から湧き出る天然温泉を楽しめる。
令和元年12月に大規模改修工事を経て、リニューアルオープンされた施設は美しく、温泉や岩盤浴の他、マッサージなどを受けられる。レストランも併設され、登山の打ち上げにもぴったりの施設だ。
- 住所:小野市黍田町1000-1
- 電話:0794-70-0261
- 開館時間:AM:10:00~PM:10:00(PM9:30 受付終了)
- 休館日:年中無休(施設点検日・年末年始は除く)
- 料金:大人1人700円〜
小野アルプスへのアクセス

小野アルプスの最寄り駅はJR加古川線にある。電車の本数が少ないため、乗り継ぎや帰路の時刻は確実に調べておこう。
- 行き:JR小野町駅
- 帰り:JR市場駅
*
小野アルプスは日本一低いアルプスながら、岩場や眺望など見所の多いコースである。縦走路はアップダウンの繰り返しで、登りごたえのあるコースは登山者を飽きさせない。
下山後の温泉や、ローカル列車『加古川線』の旅も魅力のひとつだ。気になる人はぜひ、僕の故郷、小野アルプスを訪れてみてほしい。
※この記事の情報は2020年3月執筆時のものです