「こっちのルートへ行こう。霧氷が見られるかもしれない」
そう言われて向かった先には、霧氷をまとった木々が宝石のように輝いていた。
霧氷は冬山を代表する景観のひとつだが、いつでもどこでも見られるわけではない。関西では金剛山が、手軽に雪山や霧氷を楽しめる山として人気を博している。
ここでは、金剛山で楽しむ雪山ハイキングをご紹介しよう。
目次
金剛山の概要
- 標高:1125m
- 歩行距離:約3km(片道)
- 歩行時間:約1時間30分(夏山の片道)
- 難易度:所要時間や難易度は積雪の状況による
金剛山は、大阪と奈良の府県境にある大阪府の最高峰である。山頂には葛城神社や転法輪寺(てんぽうりんじ)がある信仰の山であり、冬は霧氷、夏は涼をもとめる多くの登山者から親しまれている。

霧氷とは、樹木の表面に水蒸気や水滴が凍結してできる氷の層のことだ。氷の結晶が花を咲かせたように見え、日光を浴びて美しく輝く姿は印象的である。

金剛山への登山コースは複数あるが、ここで紹介する『千早本道』がもっとも人気だ。また、回数登山が盛んであり、登山回数を記録する仕組みがある。
多い人では1万回を超えているから驚きだ。山頂の売店で回数表を販売しており、記録に挑戦するのも楽しみのひとつである。夏山の金剛山は下記を参考に。
金剛山に必要な装備と服装

本格的な雪山登山とは違い、太平洋側の標高1000m程度の低山は雪山リスクが少ない。夏山装備+アルファで楽しめる。
とはいえ、夏山よりリスクが大きいことに違いはない。入念な準備としっかりとした装備で挑もう。ここでは、その装備の一例をご紹介する。
- 3シーズン対応の登山靴
- 軽アイゼン(6本爪以上、またはチェーンスパイク)
- ロングスパッツ
- トレッキングポール(スノーバスケットに交換しておく)
- 防水アウターレイヤー上下(レインウエアで代用可)
- 保温着
- グローブ(インナーと防水グローブを組み合わせる)
- 耳まで覆える帽子
- サングラス
- 救急キット
- 保温ボトル
- 地図とコンパス
- ヘッドランプ(予備電池も)
- スマートフォンとモバイルバッテリー
- 水と食料
金剛山の雪山ハイキングレポート

電車とバスを乗り継ぎ、到着した登山口では小雪が舞っていた。
2019年から2020年にかけては異例の暖冬で、各地のスキー場から悲鳴が聞こえている。
「秋に用意した軽アイゼンとハードシェルも、もう出番はないだろう……。」そう思っていた矢先、今季最大の寒気の到来を告げるニュースがテレビから聞こえてきた。
「今しかない!」

土日に仕事を片付け、平日の早朝に金剛山へと向かった。
今回はメインルートである『千早本道』から山頂を目指す。登山口で準備を整え、ゆっくりと歩き始めた。

登山口からはいきなり急坂が続く。積雪が少なく、まだアイゼンは必要ない。汗をかかないように、ウエアと登高スピードを調整しながら登っていった。

標高約630m、千早城跡との分岐を過ぎると、少しずつ積雪量が増えてきた。稜線に出たことで風も強さを増している。適当なところで軽アイゼンを装着した。
「アイゼンの取り付けに手間取るようでは、本格的な雪山は厳しいなぁ」
そのとき、たまたま居合わせた老齢ハイカーが、にこやかに声をかけてきた。どうやら、アイゼンに不慣れなことがひと目でバレてしまったようだ。
80歳を過ぎたそのハイカーは、北アルプスを踏破してきたベテランだった。山頂まで同行させてもうらうことにする。

山頂までの中間地点『のろし台跡』に着くころには、登山道は雪に覆われていた。木々の間から垣間見る、麓の街は晴れているようだが、こちらはうっすらと霧がかかっている。
金剛山には夏に登ったことがあるが、今は夏山とは別世界だ。例年に比べて積雪は少ないものの、地面は凍結して冷たい風が吹きすさぶ。アイゼンが地面に刺さる音が、心地よく響いていた。

金剛山は、山頂に神社や寺を抱く信仰の山である。千早本道はその参詣道であるため、ひたすら階段が続く。
夏山ではいささか単調なこの道も、雪が積もれば雪山ハイク入門にちょうどよいレベルとなるのだ。
「すこし遠回りになるけど、こっちのルートへ行こう。霧氷が見られるかもしれない」

ベテランハイカーの誘いで、本道を外れて登ることにした。千早本道は山頂付近で分岐しており、まわり道のほうが霧氷ができる確率が高いという。

その先には、冒頭で述べた美しい景色が広がっていた。霧氷は気象条件がそろってこそ楽しめる。私は運が良かった。
今季最大の寒波が到来し、金剛山は雪と霧に覆われ、霧氷が発生する条件がそろった。金剛山に詳しいベテランと偶然に知り合い、穴場を教えてもらった。
一度この景色を知ってしまうと、雪山のとりこになってしまうかも——。

山頂に到着すると、売店でコーヒーを飲みながらベテランハイカーと談笑し、お礼を伝えて別れた。

マイナス4度の気温の中、山頂付近を散策し、国見城跡広場からのんびりと雪景色を楽しむ。山の楽しみが、またひとつ増えた一日であった。

金剛山へのアクセス
- 南海高野線、または近鉄長野線『河内長野』駅下車
- 南海バス〜約40分〜『金剛山登山口』下車
金剛山まとめ
金剛山はアクセスも良く、手軽に楽しめる低山だ。だが、雪がふれば夏山とは違う景色が広がり、雪山ハイク入門にうってつけのコースとなる。
ただし、低山とはいえ雪山だ。十分な装備とリサーチをしてから出かけたい。この記事が、少しでも金剛山雪山ハイクの参考になれば幸いだ。
※この記事の情報は、2020年2月執筆時のものです