箕面大滝

箕面公園ハイキングレポート|シカ・サル・野鳥・野生動物が近い豊かな森を歩く

 野生動物は動物園でなければ見られない。

 もしそう考えているなら、それはちょと寂しいことだ。私たちと同じ”地球丸”の一員である動物だちは、都市近郊の里山にだってちゃんといる。
 都会暮らしに慣れ親しんだ人にとっては信じがたいかもしれないが、都心からちょっと足をのばすだけで豊かな生態系に巡り合える場所があるのだ。大阪なら、箕面公園をおすすめしたい。

目次

箕面公園とは

箕面大滝

 箕面公園とは、大阪府北部に位置する北摂山地の一角に整備された森林公園のことで、1967年に国定公園として制定された。箕面公園周辺は標高100m〜600mほどの低山が連なり、ハイキングコースが整備され、そこには約1,100種の植物と約3,000種の昆虫が棲息する。

 大阪の都心から電車や車で30分程度という好アクセスながら、国の天然記念物であるニホンザルをはじめ、シカ、イノシシ、数々の野鳥などが暮らす、豊かな生態系が存在しているのだ。それだけに、ちょっと意識して森を観察することで、さまざまな野生動物の痕跡を発見でき、サルやシカに遭遇することも珍しくない。

 箕面公園の名物は箕面大滝。日本の滝100選に選ばれた落差33mの大滝は、その姿が農具の『箕』に似ていることから命名されたと言われている。春は桜、夏の新緑、紅葉の秋、冬の雪化粧など四季を通じて楽しめ、特に紅葉の季節には多くの観光客やハイカーが訪れる。

箕面公園のハイキングコース例

 都市近郊の自然公園だけあり、アクセスもよく道も整備されている。手軽にハイキングを楽しむにはうってつけだ。
 今回は阪急箕面駅を起点に、昆虫館、才ヶ原池、こもれび展望台をまわり、箕面大滝へと歩いてきた。4時間程度でまわれる初心者にもおすすめのコースである。

  • マップ:箕面山ハイキングマップ
  • コース:阪急箕面駅〜昆虫館〜望海展望台〜才ヶ原池〜こもれび展望台〜雲隣展望台〜箕面大滝〜阪急箕面駅
  • 距離:約8km

箕面公園ハイキングレポート

 阪急箕面駅で準備を整え、滝道を昆虫館まで進む。その先の紅葉橋を渡ると、そこからがハイキングコースだ。谷筋から斜面へと急な階段を上ると、やがて尾根上に出て視界が広がった。尾根の先にある林道との分岐点で休憩していると、頭上からガサガサと物音が聞こえてきた。

国の天然記念物ニホンザル

林道との分岐でサルに遭遇した。

 サルだ——。

 少し離れて周囲を見渡すと、どうやら一匹だけではないらしい。サルの群れが移動しているようだった。
 その中の一匹のサルがしきりに枝を揺らし、そのままもぎ取って木陰に隠れた。一体何のために枝をもぎ取ったのだろうか。

 近づいて観察しようと試みる。すると、ある一定の距離まで近づくと顔をこちらに向け、キバをちらつかせながら鋭い目つきで私をにらみつけてきた。これ以上近づくな、ということだ。

 1歩下がってガードレールの脇に腰掛けた。サルは再び枝を片手に何かをしている。双眼鏡で観察してみると、目的は枝についた栗のようだった。まだ青いイガイガを手足で器用にはぎとり、口元に運んでいたのだ。

 それにしても、サルの縄張りはソーシャルディスタンスなんていう生易しいものではないらしい。1歩でも進入したら力ずくで追い返すぞ。サルの表情としぐさから、このような気迫が感じられた。

 ごくたまにサルに襲われた、荷物を取られた、なんて話を耳にするが、体の小さい女性や子供が狙われやすいという。サルを見かけても、くれぐれも近づきすぎないように注意したい。

才ヶ原池のカワセミ

 林道を北に進むと再び分岐に出合う。その分岐から東に少し下った場所に才ヶ原池があるから、そこで昼食をとることにした。
 分岐の案内看板には『才ヶ原池の野鳥』と題して、キツツキの仲間やカワセミが紹介されていた。カワセミに会えたらラッキーだな、なんて考えながら池のほとりで弁当を食べていると、水面すれすれを「ツッチー、ツー」と鋭く鳴きながら滑空する青い鳥が視界に入った。それも1羽や2羽ではない。
 素早く双眼鏡で追いかけ、鳥が止まった枝の先に焦点を合わせる。間違いない、カワセミだ。

PexelsによるPixabayからの画像。

 カワセミは漢字で翡翠(かわせみ)とかく。宝石の翡翠(ひすい)と同じ字をあてるのだ。その姿は宝石に例えられるほど美しい。
 高度経済成長期には、経済発展の代償に自然環境が失われ、カワセミは幻の鳥と呼ばれるほど個体数が減った。現在では環境保護の重要性も説かれ、そのおかげでカワセミがまた都市近郊に帰ってきた。比較的身近な鳥だが、会えるとやはりうれしい。

 一見、何をするでもなく木の枝でたそがれているように見えるカワセミ。
 しかし、ひとたび獲物である魚に狙いをつけた瞬間、ミサイルのように水中に突撃した。突撃してからわずか1、2秒の間に再び枝に戻ってきた。双眼鏡でくちばしを見ると、捕らえられた小魚がジタバタともがいていた。どうやらハンティングは成功したらしい。カワセミに出会え、ハンティングの瞬間を観察できるなんて今日はついている。
 何度かハンティングを繰り返したのち、ツー、ツーと鳴きながらどこかへ飛び去ってしまった。

ニホンジカと足跡

 才ヶ原池を出発し、林道の分岐からハイキングコースへ入った。こもれび展望台へと向かう。箕面公園には、こもれび展望台の他にもいくつか展望台が点在している。展望台を巡るだけでも十分に楽しめるだろう。

箕面山 こもれび展望台
こもれび展望台。

 ハイキングコースに入ってすぐ、湿地のような場所を見つけた。このような場所には水場として動物たちが集まってくるから、よく観察してみよう。
 案の定、この日はシカの足跡を発見できた。くっきりと残っているから、まだ新しい足跡だろう。その痕跡は、ハイキングコースではない谷筋を登るように続いていた。もしかしたら、近くにいるかもしれないな。

ただぬかるんだ場所に見えるが……。
よく観察するとシカの足跡を発見できた。

 こもれび展望所で休憩を終え、箕面大滝へと向かった。雲隣展望台を過ぎ、斜面を下る途中、視界の先で黒い大きな物体がザザザッと通りすぎるのが見えた。シカの警戒音がこだまする。やはり近くにいるらしい。
 斜面の先に近づいて目を凝らしてみた。——だが、何も見えない。鳴き声も聞こえたし、近くにいるはずなんだがなぁ。

 諦めて視線をハイキングコースに戻した瞬間、先ほど目を凝らして見ていた場所、私の30mほど先の斜面を、5〜6頭のシカが一斉に駆け上がり、あっという間に見えなくなってしまった。シカは目の前にいたのだ……!

 野生動物の外観は自然に溶け込むよう進化している。たとえ色鮮やかなカワセミでさえ、鳴き声や動きがなければ容易に発見できないのだ。

 シカは私の目の前にいた。だが、私に気づかれまいと息を殺して潜んでいたのだ。私が視線をそらしたのを確認し、その刹那を見はからって逃げ出したのだった。

 シカせんべえをねだる奈良のシカもかわいいものだが、野生動物は本来このような姿である。私のように安全な場所でのうのうと生きている者と違い、その感覚は数十倍、いや数百倍に研ぎ澄まされているに違いない。当然のことと言えば当然だが、森に生きる動物たちの姿を目の当たりにし、つくづくとそう感じた1日であった。

箕面公園へのアクセス

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