膝の痛みがネックだった。
走りたい気持ちがあるのに、仕事終わりに自宅周辺を20分程度なら走れる体力もあるのに、バスケで痛めた膝がそれを許さない。
今思えば、バスケットシューズのクッションに任せて乱暴なジャンプと着地を繰り返した結果であろう。
せっかく購入したランニングシューズが、下駄箱のオブジェと化すのは時間の問題だった。
それから数年。趣味のハイキングのための体力づくりに、なんとなく走りたいと思った。
ハイキングや登山の教本には、たいてい体力づくりにはランニングが有効だと書かれていたのだ。特別な道具もいらず手軽にできることも大きい。
フルマラソン経験者が語る、挫折しないランニングの始め方
「運動不足を解消するために、ランニングを始めてみようかな。でもつらそうだし、うまく続かなかったらどうしよう……」。 事実、ランニングを始めた人が6ヶ月以内に挫折する割合は68%に上った。( デサント :2014年調査による ) ランニングが続かない理由は、無理をしたり、楽しむための対策をしていなかったり、モチベーションを維持できないのが要因のようだ。 …
当時は裸足感覚シューズの全盛期で、店頭にはさまざまなシューズが並んでいた。「BORN TO RUN 走るために生まれた クリストファー・マクドゥーガル(著)」の影響だろう。
店内を物色しているうちに、あるキャッチコピーが目に留まる。
「膝が痛くならないランニングシューズ」
どうやら、体の本来の力を発揮するための極薄ソールのシューズらしい。試しばきをしてみると、あまりの底の薄さに不安を覚えたものの、購入して少し走ってみることにした。
不摂生がたたり、それこそ1.5km走るのがやっとだったがなんとか走れるではないか。
「確かに膝が痛まない!」
ナチュラルランニングを実践するようになった原点である。

BORN TO RUN には世界トップクラスのウルトラランナーや、著者のクリストファー・マクドゥーガルの他、メキシコの先住民族「ララムリ」が登場する。
走る民族と呼ばれるララムリは、古タイヤと革ヒモで作ったワラーチ(サンダル)を履き、50マイル(約80km)のレースでウルトラランニングのスター、スコット・ジュレクを負かしたのだ。
ルナサンダル は、ララムリの履くワラーチをもう一人の登場人物「ベアフット・テッド」が製品化したものだ。
もちろん、ワラーチは本来なら自作するものなのだが、私の場合、自作してもしっくりこなかった。世界中で愛用されるルナサンダルをどうしても試してみたかったのだ。
ルナサンダルの特徴

実物を見てみると、なるほど完成度が高い。ルナサンダルが愛用される理由がわかった。
ビブラムソール

ルナサンダル には種類があり、私の選んだOso Flaco 2.0はベース7mm + ラグ4.5mmのビブラム・メガグリップソールが使われいる。ルナサンダル特注品だろう。
長らく靴業界に携わった私ならわかるが、このソールだけで数千円はするはずだ。まず個人では手に入らないし、このソールだけで自作ではなくルナサンダルを選ぶ価値がある。

厚みが11mm以上あり、グリップ力に優れるソールはトレイルでも安心して走れる。多少、小石を踏んでもソールの厚みが吸収してくれた。
フットベッドは滑らないMGT(Monkey Grip Technology)

私が思う自作ワラーチの欠点は、ぬれるとフットベッドが滑る点だ。雨や汗が滴ると、サンダルの上で足がツルツル滑り踏ん張りが効かなくなってしまう。
ルナサンダルが届いた時、わざわざシャワーでぬらして試しばきをした。MGTは、その名の通りほとんど滑らないではないか。レースをうまく調整すれば雨でも安心して走れそうだ。
Performance Laces2.0

本来のワラーチは革ヒモだが、ルナサンダルにはPerformance Laces2.0が採用されている。オリジナルのバックルが使われ調整が容易な上に、丈夫で足あたりの良い素材が使われている。
靴ずれの心配がある鼻緒部分は、厚みが他の部分より薄くなっており指の股になじみやすい。縫製がやや荒い部分が見受けられたが、支障をきたす程ではなく、シアトルの工場でハンドメイド生産されている情景が目に浮んだ。
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寒い冬が終わり、春の風が吹き始めるとワラーチランニングの良い季節がやってくる。シューズに閉じ込められた足の力を解放して走るのは、ほんの少し動物に戻った感覚を感じるとともに、シンプルなランニングの魅力を再認識できる。
素朴な道具と走りたい気持ちがあれば、いつでもどこでも楽しめるのがランニングの良さだ。
ーーRUN FREE !ーー
ルナサンダルのキャッチコピーのように、自分を解放して自由に走ろう。ルナサンダルがその一助になることは間違いない。