ジェットボイルを使いはじめて約3年が経過した。ジェットボイルと共に屋久島をはじめ色々な場所を訪れた。もはやジェットボイルは山旅に欠かせない存在だ。
ここでは、私が愛用する『ジェットボイル MiniMo:ミニモ』を中心に、ジェットボイルを詳細にレビューしたい。
- ジェットボイルで料理はできる?
- そもそもジェットボイルってどんなバーナー?
このような疑問にお答えしつつ、ジェットボイルの使い勝手や魅力に迫る。
目次
- ジェットボイルとは
- 今回ご紹介するジェットボイル・ミニモとオプショナルクッカー
- ジェットボイル・ミニモの特徴とおすすめポイント
- ジェットボイルのシリーズをチェック
- 着火装置が使えないときの対処方法
- ジェットボイルのここが残念
- ジェットボイル・レビューまとめ
ジェットボイルとは

ジェットボイルとは、アメリカ合衆国のアウトドア用バーナーメーカー、およびそのブランド名のことだ。2001年に、Dwight AspinwallとPerry Dowst により設立された。
ジェットボイルはそれまでの重たい無骨なバーナーにうんざりしていた創設者により、”小さな火力に最大限の仕事をさせること”をコンセプトに開発された。
そうして生まれたのが『フラックスリング』を装備したオールインワン設計のバーナーだ。
熱効率をアップさせるフラックスリング

ジェットボイルは一般的なガスバーナーと比べて格段に高い熱効率を誇る。それは、クッカー底部に備えられたフラックスリングの効果なのだ。
フラックスリングがバーナーの熱を伝え、熱損失を最小限に抑えてくれる。そのため、”高速湯沸かし器”の異名をとるほどの沸騰スピードと低燃費を実現させた。
寒冷地でも使える!サーモレギュレートテクノロジー

サーモレギュレクトテクノロジーも、ジェットボイルを語るうえで欠かせない装備だ。※ただし、搭載されていないバーナーもある。
通常、ガスバーナーは低温に弱い。ガスカートリッジが冷やされることで、ガスの気化が妨げられるためだ。

しかし、ジェットボイルにはサーモレギュレーターが搭載され、低温環境でも安定した火力を得られるのだ。公式にはマイナス0.6℃まで対応とある。実際に気温0℃の環境で使用したことがあるが、火力にはまったく問題がなかった。
また、サーモレギュレターは細やかな火力調整も可能にした。トロ火から急速沸騰まで自在にあやつれる。ということは——もちろん調理も可能だ。
まとめると、ジェットボイルはフラックスリングによる熱効率の良さとサーモレギュレーターによる耐寒性能を備えた、オールインワン設計のバーナーだ。では、実際の使い勝手はどうだろうか?
今回ご紹介するジェットボイル・ミニモとオプショナルクッカー
- ジェットボイル・ミニモ
- 容量:1.0L
- 重量:500g(ガスカートリッジを除く)
- サイズ:直径12.7cm×高さ15.2cm(収納時)
- 沸騰到達時間:2分15秒(0.5L)
- 出力:1,512kcal/h
- ガス消費量:約120g/h
- 素材:アルミニウム(カップ本体)
- スペアカップ0.8L
- 素材:アルミニウム(カップ本体)
- 総重量:220g
- サイズ:直径10.4cm×高さ16.5cm(収納時)
- 容量:0.8L
ジェットボイル・ミニモの特徴とおすすめポイント
高速湯沸かし器の異名は伊達じゃない

ジェットボイルは沸騰のスピードがとにかく早い。公式では500mlのお湯を2分15秒で沸かせるとある。
まぁこの数字は環境のよい無風状態での計測だろうから、実際にはもっと時間がかかるだろう……と思ったら、本当に2分少々でお湯が沸いたから驚いた。
これまで、大雨の中や低温下、強風下など多様な環境でジェットボイルを使ってきたが、その性能は安定しており湯沸かしスピードの大差はなかった。
500mlのお湯は、カップ麺の調理やフリーズドライ食品を戻すのにちょうどよい分量だ。主食を調理して余ったお湯はスープやコーヒーに使える。一回の食事に沸かすお湯の量として、500mlはかなり現実的な数字ではないか。
それを3分かからずに用意できるのだから、ジェットボイルは野外において大きなアドバンテージとなるのだ。
すべてがシステム化されたオールインワン設計

ジェットボイルは湯沸かしに必要なものを、本体にすべて収納できる。収納した状態は円柱型だから、ひっかかりもなくパッキングも容易だ。
一般的なガスバーナーは、バーナー本体の他にクッカーや風防が必要だ。それぞれに相性があるから、パッキングと使い勝手を考えて悩まなければならない。
もちろんそれは楽しい作業なのだが、ガス缶が収納できなかったり、バーナー本体がクッカーからはみだしたりして、面倒なこともある。

ジェットボイルならそのような心配は皆無だ。バーナー、クッカー、ガス缶、風防(フラックスリングが風防の役目を果たす)、スタビライザー、すべてが本体にきれいに収まる。
カートリッジひとつで約12Lのお湯を沸かせる
フラックスリングの効果は前述したとおりだが、燃費の良さも注目に値する。その性能は、小型のガス缶『ジェットパワー100G』ひとつで約12Lのお湯を沸かせるほどだ。
仮に1食につき500mlのお湯を沸かすとしよう。すると24回分、1日3食として8日分のお湯をまかなえる。つまり、1週間の山行なら予備のガス缶は必要なしだ。
ジェットボイルは料理ができない!?

ジェットボイルは湯沸かし専用だと思われがちだが、料理もできる。ただし条件があり、それはスープ状のものに限られることだ。
写真は関西の低山『ポンポン山』で、もやしと豚肉の鍋を作ったときのもの。鍋はもちろん、リゾットやラーメン、パスタ、煮込み料理などは問題なく調理できる。
このあたりは、幅広い火力調整を可能にしたサーモレギュレーターの恩恵が大きいだろう。ジェットボイルは湯沸かしだけではなく、料理もできるのだ。
充実のオプションパーツ

ジェットボイルには豊富なオプションパーツが用意されていることも見逃せない。私はその中のひとつ『スペアカップ0.8L』を愛用している。
ジェットボイル・ミニモを購入した当初の目的は、妻との屋久島山行で2人分の調理をまかうことだった。もくろみどおり、広口で調理向きのミニモは目的を十二分に達成してくれた。
だが、ミニモはソロ山行には少し大きい。そこで購入したのがスペアカップである。
ジェットボイルはクッカーとバーナーの口径が統一されている。そのため、容量を簡単に変更できるのだ。
他にも、コーヒープレスや交換用コジーなどさまざまなオプションパーツが用意されている。自分好みにカスタマイズできるのも魅力のひとつだ。
ジェットボイルの人気モデルをチェック
ジェットボイルには、ミニモ以外に数種類がラインナップされている。
ジェットボイル・フラッシュ
ジェットボイルのスタンダート商品。500mlを1分40秒で沸騰できる、驚異の性能をもつ。ただしサーモレギュレーターは搭載されていない。
寒冷地で使用する予定がなく、調理より湯沸かしを優先するなら、ミニモよりフラッシュをおすすめしたい。
ジェットボイル・マイクロモ
サーモレギュレーターを搭載し、ミニモと同等の性能をもつのがマイクロモだ。500mlを2分15秒で沸かせ、寒冷地でも安定した性能を発揮できる。
カップが0.8Lと小型なので、ソロ用途に最適だろう。
ジェットボイル・zip
最低限の機能のみを装備したシンプルなモデル。ジェットボイルの特徴である熱効率のよさはそのままに、機能をしぼり、コストパフォーマンスに優れる。
着火装置やサーモレギュレーターは装備していないが、税別9,900円でジェットボイルを入手できるのは大きな魅力だろう。
ジェットパワー100G
ジェットボイル専用のガス缶。原則、ジェットボイルにはジェットパワー以外のガス缶を使ってはならない。これひとつで10L〜12Lのお湯を沸かせる。
着火装置が使えないときの対処方法
ジェットボイルの着火装置が使えない——。
これはジェットボイルに限らず、着火装置を搭載したガスバーナーでよくある問題だ。故障かな? と思うかもしれないが、その前に以下の調整方法を試してみよう。
着火装置を適正に調整する

着火装置がうまく使えないときは、着火装置の先端の金具を調整する。金具の先端とバーナーの距離には適正値があり、ジェットボイルは3mmが適正だ。
着火装置の先端がずれてしまうことは、よく起こりうる。バーナーとの距離を適切に調整すれば解決するだろう。
フリント式のライターやマッチを用意する
ガスバーナーの着火装置は『圧電式』である。そして、圧電式の着火装置は気圧の低い高所や低温時は点火しにくい。おおむね標高2500mを越えると点火できなくなるようだ。
そこで予備のライターやマッチを用意しておきたい。ライターは石で火花を飛ばす『フリント式ライター』を選ぶこと。電子式ライターも圧電式であるため、高山では使えない。フリント式ライターの他に、メタルマッチもおすすめである。
着火装置を適切に調整し、予備のライターを用意しておけば、より快適にジェットボイルを使えるだろう。
ジェットボイルのここが残念

ジェットボイルは汎用性の高い高性能バーナーだが、残念なところもある。それは、限られた調理しかできない点と、ガスバーナーにつきもののガス缶の諸問題だ。
焼き物や炒め物ができない
ジェットボイルで料理はできる。ただし、それはスープ状のものに限られてしまう。山行の目的が山飯で、焼き物や炒め物など色々な料理を楽しみたい人には、大きなデメリットとなるだろう。
オプションパーツが用意されているとはいえ、調理に合わせてフライパンや鍋を使い分けたい人には、ジェットボイルは不向きである。
ガス缶の諸問題
中途半端に残ったガス缶は、多くのガスバーナー愛用者を悩ませる問題だ。ガス缶の残量は分かりにくく、残りが心配なときは予備のガス缶を携帯せざるをえない。また、使いきったガス缶はゴミとなる。
飛行機での遠征の場合、ガス缶を飛行機に持ち込めないから現地で調達しなければならない。ジェットボイルのガス缶は、おそらくアウトドアショップでなければ扱っていないだろう。入手が面倒だ。
屋久島の山行でジェットボイルを使ったのは数回だった。現地で調達した新品のガス缶は、ほとんど減っていない。しかし、飛行機には持ち込めないから、アウトドアショップで中途半端に残ったガス缶を引き取ってもらった。
ガス缶の諸問題はジェットボイルに限った話ではない。ガスバーナーを購入する前に考慮しておこう。
ジェットボイル・レビューまとめ
ジェットボイルは、高い熱効率による低燃費と高速湯沸かし機能を備えたバーナーである。必要な物をすべて本体に収納でき、制限はあるが料理だってできる。
私にとってジェットボイルは山行に欠かせない道具となった。ジェットボイルが気になる人は、この記事を参考にぜひ手にしてみてほしい。きっと、その魅力のとりこになるはずだから。