京都の伝統行事『五山送り火』で知られる大文字山は、手軽なハイキングスポットとしても有名だ。標高わずか465.3mの低山だが、山頂や火床からは京都の街並みや盆地を囲う山々を見渡せ、気持ちの良い展望を楽しめる。
大文字山への登山ルートは複数あるが、おすすめは蹴上〜大文字山〜銀閣寺ルート。初心者でも3時間程度でまわれ、アクセスもいい。
ここでは、大文字山への具体的な登山ルートやアクセス、実際に歩いたレポートをお届けしたい。
目次
大文字山のおすすめ登山ルート
- 標高:465.3m
- 距離:約5.5km
- コースタイム約2時間30分
- コース:京都市営地下鉄 東西線『蹴上駅』→神明山(東山36峰 標高218m)→七福思案処→大文字山→火床→銀閣寺国有林入口
大文字山が位置する京都エリアには魅力的な山々が点在し、天台宗の総本山『比叡山』をはじめ、愛宕山、貴船山など標高400m〜900mの山々が連なっている。
そのひとつである大文字山は、毎年8月16日に精霊(しょうりょう:死者の魂)を送る五山送り火で有名だ。送り火が行われる五山の中で、自由に登山ができるのは大文字山だけである。

大文字山の登山ルートに危険な箇所はなく、初心者でも安心して登れるだろう。ただし、ガイド地図には表記されていない分岐や作業道もあるため、できれば京都一周トレイルガイドマップを用意したい。
大文字山は京都市街を取り囲む山々をつなぐ、京都一周トレイルの一部でもある。地図付きの丁寧な道標が整備され、それぞれに番号が振り分けられている。
道標の位置や番号は京都一周トレイルガイドマップにも正確に記載されており、両者を照らし合わせれば道に迷うことはないだろう。
※参考:山と高原地図『京都北山』/京都一周トレイルガイドマップ『東山』ブリタニカ国際大百科事典『大文字山』/角川俳句大歳時記『大文字』
大文字山への服装や持ち物
その他の持ち物は、動きやすい服装に一般的な日帰りハイキングに必要なものがあれば十分だ。特に、山中には自動販売機がなく、水場があるのはコース終盤である。夏場は熱中症対策のため、十分な飲料を持参しておこう。
また、山頂は都市部より気温が低いため、真夏でも1枚羽織れる防寒着を忘れずに。ハイキングの具体的な持ち物や服装は下記を参考にしてほしい。
大文字山登山レポート
蹴上から日向大神宮

蹴上駅を出発し、三条通を山科方面へと向かう。トンネル『ねじりまんぽ』をくぐり、インクラインを歩いていくと、大神宮橋のたもとに京都一周トレイルの標識がある。この32番の標識から、大文字山山頂手前の45番までをたどればいい。

標識には簡単な地図が記載されているから迷うことはないだろうが、先に述べたように登山道以外の道も走っているから注意したい。
32番の標識から少し歩くと日向大神宮があり、その先からが登山道だ。
七福思案処

日向大神宮から東に登った先に、標高218mの小さなピークがあった。看板に『神明山 東山第19峰』とあり、どうやら東山三十六峰のひとつのようだ。京都の東に連なる緩やかな山々のことを、江戸時代末期ごろから『東山三十六峰』と呼ばれ、現在も京都のシンボルのひとつとなっているのだ。

神明山を下った先は分岐に出合う。この、道が5つに分岐した場所が『七福思案処』である。
ここには38番・39番の道標が設置され、案内に従えば大文字山へとたどり着く。だが、もし道標や地図がなければどうだろうか……。

道を間違えればあらぬ方向へと向かってしまう。なるほど、確かに思案処であった。
大文字山と火床
七福思案処を出発し、大文字山へ続く尾根道を北に進む。木々のトンネルの中を進む登山道だが、徐々に標高が上がるにつれて所々で展望を望めた。

それにしても、倒木が非常に多かった。おそらく2018年に関西を直撃した台風の影響ではないだろうか。重機の入れない登山道の整備は容易ではない。手作業で倒木が取り除かれたらしい痕跡を発見する度に、登山道整備の苦労を垣間見た。
大文字山山頂手前、45番の標識で京都一周トレイルとお別れだ。45番から少し歩いた先に山頂広場がある。
山頂広場には簡単なベンチやテーブルがいくつか設置され、10名ほどのハイカーが休憩していた。今日はよく晴れている。ベンチの先には青空が広がり、その下には京都市街地と京都の山並みが広がっている。京都を囲う京都一周トレイルの様子をうかがえるほどの展望だ。

ひときわ目立つのは京都駅ビルと京都タワーだった。その周辺のビルと比べて格段に大きい……だが、駅の北にある『二条城』だって負けていない。視線を上げると京都北西部、愛宕山方面の山並みが広がり、少し手前には清水山が見えた。大文字山は500m足らずの低山だが、京都有数の展望スポットであるに違いないだろう。

山頂から15分ほど下ると、五山送りの火床に到着する。急な斜面を切り開いたこの場所からの展望も素晴らしい。京都市街地を挟んで、その先にある愛宕山の山頂を鮮明に見ることができた。
平地からは、はるか上空を飛んでいるように見えるトビの姿も、火床からだと手に届きそうなくらい近くに見える。ほとんど羽ばたかず、上昇気流に乗って上空に舞い上がる姿を、双眼鏡を通さなくてもはっきりと観察できた。数名のハイカーが気持ちよい風に吹かれながら休憩している姿は、それだけで絵になっていた。
火床から銀閣寺へ

火床から階段を下り、銀閣寺方面と下山した。火床から登山口まで約30分の道のりだ。途中に千人塚の分岐があり、地図に従って銀閣寺へと向かおう。

川を渡り、しばらく下ると銀閣寺はすぐそばだ。銀閣寺参道には土産家が軒を連ね、大勢の観光客でにぎわっていた。

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アクセスも良く、休憩を含めて3時間弱でまわれる大文字山は初心者にもおすすめのコースだ。それでいて京都市街を一望できる好展望を楽しめるのだから、なるほど、大勢のハイカーが訪れるわけだ。午前中にハイキングを楽しみ、午後から銀閣寺周辺を観光するのも楽しいだろう。
またひとつ、お気に入りの山スポットが増えた1日であった。
大文字山へのアクセス
- 京都市営地下鉄東西線『蹴上』下車→徒歩約15分→日向大神宮の奥が登山道入り口:グーグルマップはこちら