ハウツー 六甲・摩耶 山旅

六甲山・市ケ原のたき火ハイキング

2020年11月27日

 のんびりたき火でも楽しもうか——。

 たき火には、暖を取る、食材を調理するといった実用的な面だけではなく、精神をホッとさせる不思議な力がある。

 キャンプブーム真っただ中の昨今、動画共有サイトに数々のたき火動画がアップされているのは、たき火の癒し効果を求める人がいかに多いかを物語っているといえるだろう。

 しかし、たき火の暖かさや安心感、煙の臭いや火を得るための苦労は映像だけでは得られない。安全に楽しめる場所があれば、ぜひ実際にたき火を経験してみてほしい。

 ここでは、六甲山・市ケ原でのたき火ハイキングをご紹介したい。

目次

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六甲山・市ケ原の概要

  • 距離:2.3km(片道)
  • コースタイム:1時間(片道)
  • 難易度:入門向け

 市ケ原は、神戸市を流れる生田川の中流域にある河原だ。再度山や摩耶山の麓にあり、ハイカーの休憩場所やレジャースポットとして親しまれている。

 市ケ原にはトイレや自動販売機があり、桜茶屋(おそらく休日のみ)も営業している。それなりの設備があるため、ハイキング入門者や家族連れでも安心して楽しめるスポットだ。

市ケ原でのたき火の是非について

 今回、市ケ原でたき火を行うにあたり、念のため神戸市にその是非について問い合わせてみた。すると、市ケ原を管轄する神戸市・中部建設事務所から「河川ですので自由使用です。ただしマナーは守ってください」との回答が得られた。自然や人さまに迷惑にならないように楽しみたい。

市ケ原たき火ハイクレポート

 新神戸駅の2階で準備を進めていると、大阪湾の異様な光景が目に飛び込んできた。

 「海上に山が浮かんでいる……!?」

 駅の2階からは三宮の街の奥に大阪湾が望めるのだが、この見慣れない光景に僕は目を丸くした。もしかしたら展望台からもっと観察できるかもしれない。

 新神戸駅の裏手から登山道に入り、布引の滝を経て見晴らし展望台へ向かうと、大勢のハイカーがその光景を写真に収めようとカメラを構えていた。

 ——蜃気楼だ。

 本稿の趣旨であるたき火とは話がそれるが、珍しい現象だったため少しお付き合い願いたい。

大阪湾の蜃気楼

海上に山塊が浮かんでいる。望遠レンズで蜃気楼の一部を切り取ったが、実際にはもっと広範囲にわって蜃気楼が見られた。

 「何十年も通っとるけど、こんなん初めてや」と、どこからともなく声が聞こえてきた。僕も摩耶山周辺には数百回の山行経験があるが、こんなのは初めてのことだった。

 蜃気楼とは光の異常屈折による現象のことで、地上や水上の物体が浮き上がって見えたり、逆さまに見えたりする。大阪湾ではたびたび蜃気楼が観察されているようだ。

 ただしこの日の蜃気楼は、はるか遠くに街や船が浮かんでいるように見える……というような、ぼんやりとしたものではなかった。

 大きな山塊が、黄色い雲のようなものの上にくっきりと投影されているようだった。その範囲はかなり広域にわたり、展望台からは蜃気楼の起点と終点が見えなかったほどだ。
 まるで一夜のうちに、大阪湾に突然新しい島が隆起してきたかのような光景が広がっていたのだ。

 辞書で調べると、蜃気楼は春の季語とあった。晩秋の六甲山から確認できたのは珍しいことなのだろうか。いずれにせよ、いいものが見れたと満足して市ケ原へと向かった。

 見晴らし展望台から布引貯水池を経て市ケ原へと到着した。新神戸駅からゆっくり歩いても1時間足らずのお手軽ハイクだ。市ケ原に到着したら、さっそく準備に取りかかる。

たき火のコツ

 まずは薪を集めよう。薪は、たき付け用の細い木から、おき火用の太い木までさまざまな太さを集めておく。通常は地面に落ちた枯れ木を集めるが、なるべく乾燥したものを選びたい。木を折ってみてパキッと乾いた音が出るものが燃えやすく、薪に適している。

集めた薪は太さ別に分けておく。

 集めた木々は、太さ別に分類しておくと作業がしやすい。写真にはないが「スギの枯れ葉」はたき付けに便利だ。わずかな火からよく燃えてくれるため重宝するのだが、この日は見つからなかった。持参した新聞紙やティッシュペーパーをたき付けにすることにする。

 さて、たき火を上手におこすには、以下の3点を意識しよう。

  • 熱を逃さない
  • 酸素を効率よく供給する
  • ちいさな炎から大きな炎へ

 熱を逃さず、酸素を効率よく供給するために、石を使って火床を組もう。保温力の高い石が、たき火の熱量を保ってくれる。そこへ2〜3本の、太く芯になるような薪を組み、その隙間に燃えやすい小枝を詰め込んでいく。

 たき火を上手におこせないとき、やりがちな原因のひとつが、いきなり太い木を燃やそうとすることだ。まずは枯れ草や新聞紙など、燃えやすいものから小枝に火をつけ、そこから徐々に炎を大きくしてくのがたき火の鉄則である

太い薪の隙間に小枝と丸めた新聞紙、ティッシュペーパーを詰め込んでいる。

 薪を組んだらいよいよ着火だ。僕はライターや防水マッチを必ず山の装備に加えているが、たき火はメタルマッチでおこすことにしている。

 メタルマッチで火をおこせればライターやマッチでの着火は朝飯前だし、緊急時に慌てずに済むからだ。それにメタルマッチは濡れても使える。僕にとって、たき火は非常事の訓練も兼ねているのだ。

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 この日の火口はティッシュペーパー。マグネシウムを削り、メタルマッチを構え、プレートを勢いよくこすり付けて火花を飛ばす。一度で火をつけようとせず、間髪入れずに数回連続で火花を飛ばすとうまくいく。

うまく火がついてくれた。ここから徐々に太い薪を足していく。

 火がついたら、うちわであおぎ、酸素を供給しながら小枝を足していこう。炎が安定するまで面倒をみる必要がある。

 炎が安定し、手首ぐらいの太さの薪が燃え始めるとそう簡単に消えてしまうことはない。あとはじっくりとたき火を楽しもう。

 炎が安定したところで昼食を用意した。簡単なたき火飯だ。

たき火用のクッカー は、昔ながらの飯盒(はんごう)が、何だかんだで使いやすい。

 この日は、ソーセージとキャベツをコンソメで煮つめ、少量の米を足したリゾットを作った。具材に火が通り、仕上げに塩とオリーブオイルで味を調えれば完成だ。

 11月の寒空の中、暖かい食事は体も心も十二分に満足させてくれた。

たき火の後片付け

 たき火のゆらめく炎を眺めていると、あっという間に時間が過ぎる。時刻は午後14時を過ぎた。そろそろ撤収の時間だ。

 たき火の後は、黒い焼け跡を残さないよう訪れたときと同じ状態に戻したい。
 灰は地面に埋め、黒く焼けた石は、そこがたき火跡だと分からないように片付ける。その場所を訪れたとき、黒い焼け跡が点在していると決して気持ちのよいものではないからだ。

 おっとその前に、確実な消火を忘れてはならない。何度も水をかけ、火床が手で触れる温度に下がるまで消火を行う。石は保温力が高いため完全な消火には手間がかかるが、安全のために確実に消火しよう。

 撤収作業を終えたら、再び布引貯水池を経て新神戸駅へと向かった。

道中の紅葉が美しかった。
布引貯水池。

 その途中、貯水池には渓流から低地へオシドリが飛来しており、冬鳥であるマガモやジョウビタキの姿も見られた。

 六甲はゆっくりと冬の姿へと変わりつつあった。コロナ禍に振り回された激動の2020年も、残すところあとひと月である。

下山後の立ち寄り湯:神戸クアハウス

 たき火はどうしても頭髪や衣服に臭いがつく。臭いが気になる人は温泉で流し、着替えてから帰ろう。

 神戸クアハウスは、都市部では珍しいふたつの天然温泉と、名水『神戸ウォーター』による多彩なお風呂を楽しめる。新神戸駅から徒歩約10分と立地もよい。時間のある人はぜひ立ち寄りたい。

  • 住所:〒651-0093 兵庫県神戸市中央区二宮町3丁目10-15
  • TEL:078-222-3755
  • 料金:大人990円〜
  • 営業時間:24時間年中無休
  • 神戸クアハウス公式サイト

市ケ原へのアクセス

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Takashi

元靴メーカー勤務の職人、現在はWEBライターとしてアウトドア系メディアで執筆しています。靴業界での10年以上の経験、趣味のアウトドア経験を活かして書きます。大阪府山岳連盟「青雲会」所属・読図ナヴィゲーションスキル検定「シルバーレベル」・2018年「狩猟免許」取得・ランサーズ「認定ランサー」・フルマラソンベスト3時間29分。

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