ハイキング入門 ハウツー

ハイキングで疲れない歩き方と上手な休憩の取り方

2020年10月16日

 せっかく自然の中でリフレッシュしようにも、疲れて景色を見る余裕もなかった……。

 初心者の中には、そのあまりの辛さに「二度と登るものか!」なんて心に誓った人もいるかもしれない。

 経験者であれば、山歩きを始めたばかりのころ、歩くのに精一杯で余裕がなかったことを思い出すのは、きっと私だけではないだろう。
 しかし、ちょっとしたコツさえ覚えておけば、バテずに、余裕をもって山を楽しめるようになるかもしれない。

 ここでは、疲れずに山を歩き続ける方法と、適切な休憩の取り方についてご紹介したい。

目次

疲労をためない山の歩き方・休み方がある

 普段私たちが歩く場所は、舗装された平坦な場所か、登り下りがあっても、せいぜい駅やマンションの階段ぐらいのものだ。もっとも、その階段でさえエスカーレーターやエレベーターを使えば登らずに済んでしまう。

 しかし、ハイキングや登山ではそうはいかない。登山道は障害物だらけだし、急なアップダウンだってある。ときには鎖をよじ登ることもあるし、雨や雪で登山道の状況はがらりと変わる。よく整備された登山道であっても、街を歩くようにはいかないのだ。

 ハイキングや登山は、有酸素運動の中でもちょっと特殊な部類なのかもしれない。山歩きはアップダウンがある不整地を長時間歩き続けるスポーツである。それは半日かけて歩くこともあるし、ときには2泊3日や、1週間以上におよぶこともある。

 このような長時間におよぶ有酸素運動に対応するには、ただ”歩く・休む”というシンプルな行動でさえコツやテクニックが必要であり、突き詰めれば、それは技術と呼べるものになる。ただ体力に任せて歩くだけではいけない。疲れ知らずで歩く方法を、ぜひマスターしておこう。 

疲れない歩き方

 たいていの場合、初心者が山でバテてしまう原因は『速すぎるペースで歩くこと』だと、登山運動の研究をされている山本 正嘉(鹿屋体育大学)教授が述べている。
 逆に言えば、ゆっくりと歩くことが大切だということが、以下の文献から読み取れる。

 山本は,登山の上りにおける代表的な疲労原因の一つとして,LTを超える速度で歩くことによ る乳酸の過剰な蓄積を指摘している.そして,LT 水準以下の速度で歩くためのガイドラインとして, 75%HRmax以下,あるいはRPEが13以下のペースで 歩くことを推奨している.

引用:歩行路の傾斜,歩行速度,および担荷重量との関連からみた 登山時の生理的負担度の体系的な評価  萩原正大 山本正嘉 体力科学,60(3): 327〜341 (2011)

 上の引用文を読んでも何のことやらさぱっり……かもしれない。(私も最初はさっぱりだった!)
 要は『その人にとって速すぎるペースで歩くことが疲労のひとつの原因であり、疲労物質がたまらない、適切なペースで歩きましょう』ということだ。その適切なペースの目安が『楽に会話ができること』である。 

会話ができるペースを維持しよう

 会話ができるペースを維持すれば、山中でバテることなく歩き続けられるだろう。では、なぜ”会話ができるペース”なのだろうか。

 例えばマラソンを走る場合、『制限時間以内に完走できるよう、1kmあたり◯分のペースで走る』と、具体的なペースを数字で決められる。だが登山はそうはいかない。
 個人の体力や背負っている装備の重さの違い、登山道の傾斜や難易度、気温や天候などが刻一刻と変化し、あらゆる要素が絡んでくる。だから一概に、時速◯kmで歩く、とは決められないのだ。

 そこで目安になるのが『主観』である。

 運動には、その強度を個人の主観で表現する『自覚的運動強度(RPE)』という基準があり、かなり楽(RPE9)、かなりきつい(RPE17)、非常にきつい(RPE19)、などと表現される。

 山本教授の『RPEが13以下のペースで歩くことを推奨』というのは、本人が『ややきつい』と感じる以下のペースで歩こう、ということだ。そのややきつい以下のペースを言い換えると、会話ができるペース、となるのだ。

 歩くペースを主観で決定すれば、体力の違いや登り下りの傾斜の違いなどにも、常に個人にぴったりの、一定の基準をもって対応できるのである。
 急な登り坂を歩くとき、会話ができないほどに息を切らせて”きつい”と感じるのであれば、それはペースが速すぎる。たいていの場合、通勤で駅の階段を上がるペースでは速すぎると考えたほうがいいだろう。

 息を切らさず楽に登っていると「こんなに遅いペースで大丈夫だろうか」と不安になるかもしれないが、大丈夫、歩いていれば必ず山頂に到着する。会話ができるペースを維持することが、バテずに歩き続ける秘訣であるのだ。

created by Rinker
¥2,970 (2020/10/28 14:43:09時点 Amazon調べ-詳細)

休憩の取り方

 山を疲れずに歩くためには、まず歩行のペースに注意を配り、そして休憩の取り方にもコツがある。
 そのコツとは、疲れる前に体を休めること。登山道の状況やメンバーの疲労度にもよるが、1時間ごとに5分〜10分の休憩をはさむのが基本である。

1時間おきに5分〜10分の休憩を

 大きな休憩を一度より、歩行中、景色がよい場所に立ち止まって小休止をはさむなどして、こまめに休憩を取ることがバテないコツだ。下は日帰りハイキングのスケジュール例である。

  • 09:00 登山口出発
  • 09:30 小休止(靴ひもやウエアの確認)
  • 10:30 チェックポイントA 小休止
  • 11:30 チェックポイントB 小休止
  • 12:00 山頂到着 昼食休憩30分
  • 12:30 山頂出発
  • 13:30 チェックポイントC 小休止
  • 14:00 登山口下山

 まず、登山口を出発して早い段階で短めの休憩をとろう。ここで靴紐の締め具合やウエアによる体温調整、当日の体調などを確認するといい。その後は1時間おきに小休止をとるのがコツだ。

 小休止中には水分補給やエネルギー補給を行い、喉が乾く前に飲み、お腹が空く前に一口食べることも大切である。

 なにせハイキングや一般登山はジョギングに相当する運動※であり、それを数時間から数日も続けるスポーツである。消費エネルギーは相当であり、簡単なハイキングコースだからと休憩や補給をおこたると、痛い目に合うのだ。

休憩の取り過ぎには注意

 かといって休憩を取りすぎるのも考えものである。あまり頻繁に休憩をはさむと、せっかく温まった体が冷えてしまい、冬季や悪天候時は冷えが疲労の原因にもなる。また、歩くリズムが崩れると余計に疲れることもあるのだ。

 一般的に、登山道を登るペースは1時間で標高差300m、下りは500m程度とされている。経験を重ねるごとに自分のペースが標準より速いか遅いかを把握し、予定より遅れている場合は休憩時間を短くするなど、時間のやりくりも考えたい。

 ひとまずは、1時間おきに5分〜10分ほどの小休止をはさむ、この基本に忠実な山行計画を考えてみよう。そうすれば疲労で動けなくなるリスクを軽減でき、自然を楽しむ余裕ができることだろう。

created by Rinker
¥1,980 (2020/10/29 02:18:30時点 Amazon調べ-詳細)

まとめ

 登山やハイキングは”歩く”というシンプルなスポーツだが、奥が深く、山には山の歩き方・休み方がある。その基本は以下の2点だ。

  • 会話ができるペースで歩く
  • 疲れる前に休憩をとる

 簡単なことのようだし、実際に誰でも実践できることだ。しかし、突き詰めていけばこれは技術と呼べるものであり、山歩きの基本中の基本であると言えるだろう。

 山を歩くときは、上の2点を意識してみてほしい。きっと今まで以上に自然を楽しめるはずである。

ハイキング入門

まずはここから

ハイキングの持ち物と服装

具体的な計画の立て方

山の上手な歩き方

登山地図と登山地図アプリの使い方

関連記事

  • この記事を書いた人

Takashi

元靴メーカー勤務の職人、現在はWEBライターとしてアウトドア系メディアで執筆しています。靴業界での10年以上の経験、趣味のアウトドア経験を活かして書きます。大阪府山岳連盟「青雲会」所属・読図ナヴィゲーションスキル検定「シルバーレベル」・2018年「狩猟免許」取得・ランサーズ「認定ランサー」・フルマラソンベスト3時間29分。

-ハイキング入門, ハウツー

© 2020 Takashi Blog Powered by AFFINGER5