キッチン・コンポスト、EMバケツの使い方|生ごみが資源に変わる日.1

「たかし、味噌汁の野菜とってきてくれんかぁ」

 祖母にそう言われた小学生の僕は、はさみとザルを手に庭の畑に向かい、ナスやネギの収穫に走った。とれたての野菜は調理され、夕飯の食卓に並ぶ。これは当時の我が家にとって特別なことではなかったが、今思えば、なんと贅沢なことだろう。

 実家の庭には祖母の畑がある。土地の安い田舎暮らしならではだ。そこではナス、トマト、きゅうり、ネギなどが育成されており、その野菜が食卓を彩った。

 調理で出た生ごみは、水気を切ってザルに集める。そのザルを持って再び畑へと向かう。畑の脇にある、大型コンポストに投入するためだ。コンポストで熟成した堆肥でまた野菜が育ち、とれたての野菜を味わえた。

 そんな環境で育ったから、コンポストでの生ごみ処理は、庭や畑がないと無理だと思っていた。それが、マンションのベランダや室内でもコンポストを設置できるというではないか!

 知らなかった——これは僕にとって青天の霹靂だった。知ったからには、やるしかないでしょ。

目次

コンポストとは

コンポスト キッチン

 コンポストとは、家庭から出る野菜くずなどの生ごみから作った堆肥や、生ごみ処理機のことをいう。僕は生ごみをキッチン・コンポストで処理し、我が家のささやかなベランダ菜園の、堆肥に使おうと目論んだのだ。

コンポストの仕組み

EM生ごみ処理剤

 コンポストの仕組みはこうだ。
 土の中には無数の微生物や土壌生物がいる。この「分解者」たちが落ち葉や動物の糞・死骸などを分解してくれるから、地球が死骸や落ち葉で埋めつくされないのである。

 分解された有機物は植物の栄養素として吸収され、ふたたび生態系へと取り込まれる。このサイクルが豊かな土壌を育み、生態系の根幹を支えるのだ。

 生ごみには、例えばワインのポリフェノール、お茶のカテキンなど、生物の優れた栄養源が含まれている。これが、腐敗すると栄養が失われてしまい、実にもったいないことである。

 コンポストは、生ごみを腐敗させることなく、EM菌(有用微生物群)、簡単にいうと善玉菌により発酵させることで、有機肥料として再利用するためのものなのだ。

できた有機肥料は鉢植えや家庭菜園に

 我が家のベランダには、鉢植えの花や二十日大根、ベビーリーフなどが育っている。コンポストでできた有機肥料は、これらの小さな菜園に利用するつもりだ。

 20世紀前半に化学肥料が発明されるまで、廃棄物を再利用し、土壌の栄養を補給することは当たり前のことだった。この自然の理にかなった素晴らしいサイクルを、僕はもう一度見直したい。なんたって、廃棄物から食料を自給できるのだ。考えただけでもワクワクするじゃないか。

  • <参考>
  • やってみませんかダンボールコンポスト 有機農産物普及・堆肥化推進協会
  • だれでもできる生ごみ堆肥化大作戦 有機農産物普及・堆肥化推進協会

コンポストのメリット・デメリット

 コンポストを家庭に設置することで、どんなメリットやデメリットがあるのだろう。

小さなリサイクルの輪

  • 生ごみが資源に変わる
  • 家庭ごみを減らせる
  • 分解にエネルギーを必要としない

 生ごみは堆肥としてリサイクルできる。この時点で生ごみは”ごみ”ではなく”資源”へと変わる。しかもリサイクルには微生物の力を借りるから、エネルギーを必要としない。
 キッチンから出た生ごみをリサイクルし、その堆肥で花が咲き、野菜が育つ。一個人の小さな家庭で、リサイクルの輪が回り始めるのだ。

 近年、持続可能な開発や循環型経済への転換が世界で叫ばれている。地球の限界——もっとも近い限界が2030年(参考:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)1.5℃特別報告書)——に迫っているからだ。

 とはいえ、あまりに壮大な目標・プロジェクトであるから、どこか遠い世界のことのように思える人も多いことだろう。「循環型経済なんて、国家や企業の考えることでしょ?」

 個人では捉えようのない大きな問題、と片付けてしまう前に、まず自宅で小さな循環を体験してみてはどうだろう。持続可能な暮らしを実践してみよう。生ごみ→堆肥→菜園・鉢植え→花・野菜→生ごみ→堆肥……。この流れは循環の基本ではないだろうか。

 それに、生ごみを堆肥としてリサイクルできたら、生ごみ処理用のレジ袋もいらないし(レジ袋、以前は生ごみ袋に重宝したんだよねぇ)、ごみそのものを減らせるのだ。

ごみの減量に貢献できる

 『地球環境のしくみとはたらき図鑑 トニー・ジュニパー著』によると、2003〜2005年のごみ処理方法で、日本のごみの72%が焼却されていた。最終処分場を長く活用できることから、この方法が日本に向いた処理手段と考えらており、焼却や埋め立てが、費用のかからない簡単なごみ処理方法だからである。

 日本のごみ焼却施設は、高度な環境保全技術を有し、厳しい排ガス規制をクリアしている。
 しかしながら、どんなごみでも燃やすと大気汚染の原因になりうるし、プラスチックやその他の合成物を燃やした灰には有害な物質が残留している。そのほとんどが、最終処分場でそのまま埋め立てられているが現実だ。

 焼却や埋め立ては環境への負荷が大きく、これからの社会が目指すべき持続可能性とは相容れない。個人できることは、ごみを分別し、減らすこと。コンポストはこれに貢献できる。

管理を怠ると悪臭や虫が発生する

  • 管理に手間がかかる
  • 適切に管理しないと悪臭・虫が発生する

 コンポストのデメリットは、管理が必要であることと、悪臭や虫が発生する可能性があることだ。これらについては、次のコンポストの使い方で解説したい。

コンポストの使い方

コンポスト キッチン

 コンポストにはさまざまな種類、種々の方法がある。僕はマンション住まいである我が家の実情を踏まえ、虫や悪臭が万が一発生したときのことを考慮し、蓋で密閉できる、室内で使えるコンポストを選んだ。株式会社伸和のキッチンコンポストである。

 用意するものは次の通り。

  • キッチンコンポスト
  • EM生ごみ処理剤
  • スコップ  

 これらを用意すれば、今日からコンポスト生活を始められる。使い方はシンプルで、だれでも扱えるだろう。

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  1. 水切りを十分にした生ごみを入れる
  2. EM生ごみ処理剤を適量ふりかけ、まぜる
  3. 蓋をして密閉する
  4. 容器がいっぱいになるまで1〜3を繰り返す
  5. 1〜2週間熟成→有機肥料の完成
コンポスト キッチン

 まず水気を十分に切った生ごみをコンポストに投入する。1回の分量は三角コーナー1杯分、約500gが目安だ。

コンポスト キッチン


 その上からEM生ごみ処理剤をスプーン3杯分ほどふりかけ、スコップでよくまぜる。これを容器いっぱいになるまで繰り返し、満タンになったら1〜2週間熟成させる。これで有機肥料の完成だ。  

コンポスト キッチン

 この過程で、コンポストの底には液がたまるから、蛇口から取り出そう。これは「EM活性液」であり、トイレや排水溝に流すと消臭効果があり、2000倍程度に薄めると液体肥料として活用できる。

コンポストに入れてはいけないもの

 注意すべきは、コンポストに入れてはいけないものを入れないことだ。

  • タバコ
  • プラスチック類
  • 金属類
  • 腐敗したごみ
  • ガラスなど

 上記のものは堆肥に分解できない。生ごみ以外のものは投入しないように気をつけよう。

もし虫や悪臭が発生したら

 コンポストには、悪臭や虫が発生する可能性がつきまとう。これを防ぐには、どうやら試行錯誤するしかないようだ。

 我が家のコンポストはまだ数日の運用ではあるが、今のところ悪臭や虫が発生する気配はない。キッチンコンポストの蓋を閉めていれば臭いが室内に充満するようなことはなさそうだ。蓋を開けると甘酸っぱいぬか漬けのような香りが漂うが、これは発酵が上手く進んでいるあかしである。もし悪臭や虫が発生したら、以下のことを試してみよう。

  • 一度に投入する生ごみは500g・三角コーナー一杯分
  • EM生ごみ処理剤を多めにふりかける
  • 脱臭効果のあるコーヒーがらを入れる
  • 最悪、土をかけて2週間ほど放置する

 虫の発生については、成虫が飛来して卵を産みつけることが原因だから、室内で運用している限りその心配はないだろう。腐敗臭を出さないように、適切に管理したい。

生ごみを土に還す循環型生活を始めよう

 化学肥料が普及する以前、廃棄物を再利用して、土壌の栄養を補給するのは当たり前のことだった。この自然のサイクルには、何も大がかりな設備は必要なく、庭や畑も必要としない。バケツ大ほどの家庭用コンポストがあれば、室内やベランダでも運用できるのだ。

 ごみが資源へと変わる、この事実をぜひ体験してみてほしい。廃棄物から食料を自給でき、花が育つのだ。自然の理にかなった素晴らしいシステムではないか。この体験のために用意するものは以下の3つ。

  • キッチンコンポスト
  • EM生ごみ処理剤
  • スコップ

 あとは実践あるのみである。「キッチン・コンポスト、EMバケツの臭い対策|生ごみが資源に変わる日.2」はこちら。

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