登山の必須アイテムのひとつが時計である。目的地までの時間を予測し、安全にたどり着くためには時間管理が欠かせない。
そのために必要なのが登山時計だ。しかし、登山時計はどのモデルも多機能で、初めて選ぶ人には、使うのも選ぶのも難しいかもしれない。
そこで、この記事では私が愛用する『カシオ:プロトレック』を一例に、登山時計の使い方や選び方をご紹介しよう。あなたにぴったりのモデルが見つかれば幸いだ。
目次
登山時計の代表的な3つの機能
登山時計には多種多様の機能が備わっているが、時計を除く代表的な機能が以下の3つだ。
- 高度計(Altimeter:アルチメーター)
- 気圧計(barometer:バロメーター)
- コンパス(compass)
その頭文字をとって、登山時計はABC時計とも呼ばれる。それぞれの機能を詳しくみてみよう。
高度計

登山時計には高度計が備わっており、現在地の高度を調べることができる。その仕組みは次の通りだ。
ICAO(国際民間航空機関)の定める「国際標準大気」は、海面上(標高0m)の気圧を1013.25hPaとしている。
ここから高度が上がるにつれて、法則に従い気圧が低下していく。この気圧の変化から、現在地の高度を導きだすのだ。
実は、登山時計で最も活用する機能が高度計である。登山時計の使いこなしは高度計の操作を覚えること、と言っても過言ではない。
詳しい使い方は後述する。
気圧計

気圧計で現在地の気圧やその変化を読み取ることで、天候の予測に役に立つ。
例えば、現在地の気圧が急降下すれば天候が崩れる可能性があり、気圧が上昇傾向であれば好天を見込める。モデルによっては気圧の急激な変化をアラームで知らせてくれるので便利だ。
テレビやWEBの天気予報は、基本的に都市部のものである。天候の変わりやすい山中、スマートフォンで天気予報を調べようにも電波が届かないことも珍しくない。だからこそ、手元の気圧計が役に立ってくれるのだ。
コンパス

コンパスは方位を調べるだけでなく、地図と組み合わせたナビゲーションに使う。具体的には、紙地図を整置(正置)して現在地と進行方向を確認するのだが、その方法は簡単だ。

写真のように、コンパスが指す北(正確には磁北)と、地図の磁北線を並行に合わせるだけ。
これだけで、自分が見ている風景と地図の方向が一致する。分岐やその他のチェックポイントごとに整置をし、現在地と進行方向を確認すれば道迷いを防げるだろう。
その他の機能
上記以外にも、登山時計にはモデルによってさまざまな機能が備わっている。
- 温度計
- 日の出・日の入り時刻機能
- 月齢や潮の満ち引きの表示
- GPS機能
- カラー地図表示機能
- 心拍計
温度計で現在地の気温が分かれば、標高差から山頂付近の気温を予測できる。(高度が100m上昇するにつれて、気温は0.6度下がる)これはウエアの用意に役立つ機能だ。
GPS機能やカラー地図機能を搭載したモデルは、手元で地図と現在地を確認でき、遭難防止に役立つ。心拍計はトレーンングや登高ペースの確認に役立つだろう。
しかし、全ての機能が必須であるわけではない。自分に何が必要かの見極めが大切だ。
次項で登山時計の選び方をご紹介しよう。
登山時計の選び方とおすすめモデル5選
自分にとって必要な機能は?
すでに述べたが、登山時計は多機能なほどいい、というわけではない。多機能であればあるほど、大きく重く、高価になるのが道具の常だ。
登山時計に最低限ほしい機能は、これぐらいだろう。
- 時刻
- 高度計
- 気圧計
- コンパス
- 温度計
- 日の出・日の入り時刻
あとは自分が活動するフィールドやGPS機能の有無など、好みに応じて選べばいい。
釣りを楽しむならフィッシング機能付きモデルを。地図機能が必要ならGPS機能搭載モデルを、という具合だ。
視認性

ファッションではなく、登山で実用する時計としては視認性の良さも欠かせない。疲れ切った状態でもひと目で情報を確認できることと、見間違える可能性が低いモデルを選びたい。
個人的には、白い文字盤のデジタル表示が見やすいと感じている。強い日差しの中、サングラスをかけていても情報を読み取ることができる。
GPS機能
近年はGPS機能を搭載したスマートウォチも人気が高い。アナログの登山時計では不可能な地図の表示や、PC・スマートフォンと連携して、さまざまな用途に活用できる。
特に、手元に地図を表示でき、現在地が分かるのはメリットが大きい。紙地図では現在地把握が難しい場面があるからだ。
地図機能が必要な人は、GPS搭載モデルを選びたい。
バッテリー方式
登山時計のバッテリー方式も確認しておこう。バッテリーには、ソーラー、電池、充電式の3つがある。
ソーラー式は電池切れの心配がなく、多くのモデルに採用されている。ただしソーラーバッテリーには寿命があり、ほとんど心配ないにせよ、ソーラーバッテリーが故障する可能性がゼロではない。
その点、電池式は交換のわずらわしさがあるが、電池が切れてもその場で交換できるのが強みだ。電池式を使うなら、予備電池や交換キットも用意しておこう。
充電式はスマートウォッチに採用される。他に比べて駆動時間が短いのが欠点だが、モバイルバッテリーや山小屋で電源を確保できれば、充電の心配はないだろう。
このように、バッテリー方式にも特徴があるので購入前に確認しておこう。
筆者おすすめの登山時計
基本機能や選び方をふまえ、私のおすすめ登山時計をご紹介する。
プロトレック:PRG-270-1JF
私が愛用しているのがこのモデルだ。 方位、高度/気圧、温度を計測可能なトリプルセンサーを搭載した、プロトレックの廉価モデルである。
廉価モデルとはいえ基本機能は備わっており、これ以上の機能の必要性は感じない。4年ほど愛用しているが、一度バネ棒が折れたぐらいでまだまだ現役だ。このタフさも気に入っている。
プロトレック:PRW-7000FC-1JF
カシオプロトレックシリーズの上位モデルだ。プロトレックで最高の20気圧防水を備え、タイドグラフ/ムーンデータ表示機能、フィッシングタイム機能など、釣りに便利な機能も搭載している。
山、海、川とマルチに楽しむ人におすすめモデルだ。
プロトレックスマート:WSD-F30-BU
Wear OS by Googleを搭載したスマートウォッチである。ミルスペック『MIL-STD-810G(米国国防総省が制定した米軍の物資調達規格)』に準じたタフさを備え、GPS機能とカラーマップ機能を装備している。
山のみならず、自転車やランニング、パドルスポーツ、釣りなどあらゆる用途に活躍する。
スント:CORE All Black
スント・コアはアウトドアウォッチの代名詞と呼ばれるほどの定番モデルだ。最大の特徴は電池交換式であること。
万が一、ソーラーバッテリーがフィールドで故障すると手に負えないが、コアは電池交換をその場で行える。コアを選ぶなら、電池交換キットも用意しておこう。
シチズン:BN0121-18X
正確な時刻を刻み、ずれない。この時計の基本機能を突き詰めたモデルがシチズン・プロマスターシリーズだ。これはモンベルとのコラボレーションモデル。スーパーチタニウム製のボディーに防水・防塵性能を備えた耐久性に優れている。
さらに『衝撃検知機能』を搭載し、本体に衝撃が加わるとICによって針を制御し、針ズレを瞬時に防止する。
シンプルに正確な時間を知りたい、そんな人におすすめのモデルだ。
登山時計の具体的な使い方|高度補正を覚えよう

高度計は登山中にもっとも使う機能であり、登山時計の使いこなし=高度計の使い方と言えるだろう。そして高度計は、現在地の確認や登高ペースの確認に使うのだ。
高度計は前述の通り気圧の変化により現在地の高度を表示する。気圧は刻々と変化するため、朝自宅で高度をセットしたとしても、低気圧や高気圧の接近により影響を受け、正しい数値が得られない。
そのため、三角点、山小屋、分岐点など、標高が分かる場所でこまめに高度計を補正する必要がある。

高度計は現在地把握やペースの確認に使う
現在地の高度が分かれば、地形図と照らし合わせて現在地確認の補助に使える。
例えば、何の特徴物もない尾根では現在地把握が難しいが、標高が分かれば現在地を絞りこめるのだ。
また、1時間でどのくらい登ったか、登山ペースの確認もできる。つらい登りが続くときは、高度計の表示がモチベーションのアップにつながるだろう。
登山時計まとめ
登山時計は登山に欠かせないアイテムのひとつ。操作が複雑ではなく、基本機能を搭載したシンプルなモデルがおすすめだ。
そして、使いこなしのポイントは高度計にある。高度計の使い方を覚えれば、登山時計を使いこなせるだろう。この記事を参考に、実際のフィールドで登山時計を活用してみてほしい。