登山地図の読み方・使い方|地図とコンパスの基本【整置】を覚えよう

登山地図とコンパス

 山の怖さといえば、特に気をつけたいのが道迷いによる遭難事故だ。平成29年の山岳遭難者数は全国で3,111人だったが、そのうち道迷いが原因での遭難は1,252人にものぼる。※参考:警察庁

 道迷い遭難を防ぐためには地図を読んで実際に使うことが一番であるが、地図の使い方に難しさを感じる人は多いことだろう。
 実は、登山者目線で必要な情報をまとめた登山地図なら、誰でも簡単に扱える。

  • 「登山地図ってどんな地図?」
  • 「登山地図とコンパスってどうやって使うの?」

 ここではこのような疑問にお答えしつつ、「山と高原地図」を例に登山地図の使い方を、日本オリエンテーリング協会ナヴィゲーションスキル検定保有者が解説する。

目次

道迷い遭難の多さを認識しよう

IMSARJでは、六甲山系で発生した山岳遭難事故について、兵庫県警察本部、神戸市消防局、芦屋市消防本部、兵庫県山岳連盟の協力により、資料調査を行い地形図にまとめた。引用:日本山岳サーチ・アンド・レスキュー研究機構

 上の地図は、2001年から2011年に兵庫県・六甲山で起きた山岳事故を、原因別にまとめたものだ。数字の1番が道迷い遭難を示しており、いかに多いかが分かっていただけるだろう。

 六甲山は標高1,000mに満たない低山で、道標はしっかり整備されている。ロープウエイも通り、山上の半分は観光地として開発されている。にもかかわらず毎年のように遭難事故が起きているのだ。

 道迷いによる遭難を未然に防ぐには、地図を読むこと。そして使うことである。まずは、昭文社から刊行される「山と高原地図」を参考に、登山地図の使い方を覚えよう。

登山地図の読み方・山と高原地図でできること

登山 地図 
山と高原地図「六甲・摩耶」の一部。コースタイムやさまざまな情報が記載されている。

 登山に使う地図は大きく分けて2種類ある。国土地理院が発行する『地形図』と、ここで紹介する山と高原地図に代表される登山地図だ。
 本来は出かける山の地形図を用意するのが望ましいが、等高線や地図記号を読みこなすには練習がいる。そこでまず、誰にでも親やすい登山地図の使い方を覚えてみよう。

 登山地図とは、地形図をベースに、より見やすく登山に必要な情報を網羅した地図のことである。各山域ごとに執筆者が実踏調査しており、コースタイムや危険箇所、宿泊施設などの概要をまとめているのが特徴だ。

 地図記号が分からなくても直感的に見やすく、地図が全く読めない人でもこれなら扱いやすいだろう
 山と高原地図では、主に次のようなことができる。

  • コースタイムの確認
  • 山中の設備や危険箇所の確認
  • コースの難易度・状況の確認
  • 地形を読む

  以下詳しくみてみよう。

コースタイムの確認

 山と高原地図で、頻繁に確認するのがコースタイムである。目的地までの時間の目安がわかることで、装備や出発時間が決まってくるからだ。
 コースタイムは以下の条件のもと設定されている。

  • 40歳〜60歳の登山経験者
  • 2名〜5名
  • 山小屋利用
  • 夏山の晴天時

 ただし、個人の能力や天候などによりコースタイムは変わる。あくまで参考程度にとどめておきたい。
 例えば、僕がトレランに出かける場合はコースタイムの4割〜5割程度の時間を見込んでいるし、軽い装備での日帰りハイキングの場合は、コースタイムの8割〜9割の時間で計算している。
 メンバーや天候、山行日程により、余裕を持った行動計画を立てよう。

山中の設備や危険箇所の確認

登山 地図

 宿泊施設やトイレ、水場などの情報の他、危険箇所や迷いやすいポイントも確認できる。
 あらかじめルート上の危険が分かっていれば、それに対する心構えも自然と違ってくるものだ。

コースの状況を表す実線ルートと破線ルート

 山と高原地図では登山道が赤線で記されているが、赤線の種類によりコースの難易度や状況が分かる。

  • 赤実践ルート=一般登山道
  • 赤破線ルート=経験者向きの難路

 初心者は実践ルートで経験を積み、慣れたら破線ルートに挑戦してみよう。ただし、破線ルートは難路であり踏み跡を見失いやすい場合もある。登山地図ではなく、後で紹介する詳細な地形が読める地形図を携帯すべきだろう。

等高線から標高差や地形も読める

等高線の概念図。等高線の間隔のせまいところは急斜面。広いところは緩やかな斜面だ。 引用:国土地理院

 山と高原地図には、地形図と同様に等高線が書かれている。等高線とは、上の図のように地図で同じ高さの地点を連ねて描いた線のことだ。
 これにより、地形を読むこともできる。例えば以下のとおりだ。

  • 等高線が密集しているところは傾斜が急
  • 等高線が離れているところは傾斜が緩い
  • 等高線が小さく閉じているところはピーク(頂上)である
登山 地図

 上の写真で、摩耶山へと続く「天狗道」「稲妻坂」は等高線が密集しており、急登であることが読み取れる。摩耶山の三角点702m地点では、等高線が小さな円で閉じていることが分かる。

 ただし、山と高原地図のほとんどは縮尺1:50000で刊行されている。等高線は20mおきであり、地図上の1cmは500mである。2万5000分の1地形図と比べると縮尺が小さく、詳細に地形を読むには適さない。

登山地図は計画立案に最適

 山と高原地図は、登山者の目線で有用な情報が詳しくまとめられている。ルートも見やすく表記されている、親しみやすい地図である。この情報を活用すれば、登山計画の立案に大いに役立つのだ。

 ただし、地形図と比べると等高線は読みづらく、実際の現場には登山地図にはない小径がある場合もある。

 とはいえ、低山の赤実践ルートを使った日帰りハイクなら、山と高原地図と小型のプレートコンパスで十分対応できるだろう。
 登山地図を活用し、分岐ごとに現在地の確認と目的地の確認を行えば、道迷い遭難のリスクは相当減らせるはずだ。

登山地図とコンパスの基本の使い方・整置を覚えよう

登山 地図 コンパス

 地図を読む時に必要なのがコンパスである。登山で一般的なプレートコンパスを使った、現場での地図の使い方をご紹介しよう。
 まず覚えておきたいのがコンパスの各部の名称と、真北と磁北の違いである。

プレートコンパスの名称

登山 地図 コンパス

 写真は、プレートコンパスの定番「シルバコンパス レンジャー」の各部の名称である。メーカーが違ってもプレートコンパスの呼び名はさほど変わらないので、この機会に覚えておこう。

真北と磁北

 地図の上は北極点のある「真北」を示しているが、コンパスが指すのは真北ではく「磁北」である。地球の磁力の関係で、磁針は北極点からずれた磁北を指し、このずれを「偏角」と呼ぶ。

 日本では、北極点に対して西にずれることから「西偏◯度」というように、必ず地図に記載されている。

 地図とコンパスを組み合わせて使うにあたり、偏角を修正するためには地図に磁北線を引く必要があるが、2018年以降の山と高原地図にはあらかじめ磁北線が記載されている

登山地図とコンパスの基本は整置(せいち)

登山 地図 コンパス
コンパスの北と地図の磁北を合わせて整置した状態。

 登山地図とコンパスの基本の使い方は『整置』である。整置とは、コンパスの北と地図の磁北を合わせる作業のことだ。
 整置することで、自分が見ている風景と地図の方向が一致する。整置を覚えれば山中のほとんどの場面でナビゲーションができる。

 整置はカーナビやスマホの道案内をイメージしてもらうと分かりやすい。画面の上が常に進行方向で、車の向きがかわるたびに地図が回転してるはずだ。
 登山地図も同じように、進行方向が常に上になるように、地図を回転させながら使うのが基本である。

登山 地図 コンパス
地形図とサムコンパスを使った整置の例。コンパスが指す磁北と、地図の磁北線を並行に合わせる。

 注意したいのが、整置にプレートの向きや回転板の赤矢印向きは一切関係がないということ! 磁針の向きに集中することが大切である。

 文章で書くと難しそうだが、ようはコンパスの北と地図の磁北を合わせるだけなので、実際にやってみるとすぐに理解できるだろう。

分岐や休憩ポイントのたびに整置すること

 地図を常に整置しながら現在地を追うことが理想ではあるが、それは初心者にとってはなかなか難しい。だから最低限、分岐や頂上、休憩ポイントで整置をして、現在地や進行方向を確認しよう。そのためには、地図とコンパスを取り出しやすい場所に携帯することが大切である。

 登山地図と一緒に使いたいコンパスは『登山地図と使いたいコンパスおすすめ6選|失敗しない登山用コンパスの選び方』でご紹介しているので参考に。

登山地図の携帯方法

トレランザックと地図
ベスト型ザックの胸ポケットに、地図とコンパスを収納すればすぐに取り出せる。コンパスのストラップはザックのベルトに結んである。

 写真はトレランザックでの携帯例である。山と高原地図は合成紙を使用しており、水にも強いので、小さく折りたたんでそのまま携帯している。

 地図をザックに入れっぱなしでは、10年たっても20年たっても読めるようにならない。シャツのポケットや、バックパックのショルダーベルトのポーチなど、すぐに取り出せるように携帯しておこう。

 心配な人はナイロンケースや市販のマップケースなどに収納しよう。コンパスにストラップを取り付け、ザックにくくっておけば落下の心配もないのでおすすめだ。

地図に慣れたら登山地図と地形図を使い分けよう

登山 地図
先ほどの山と高原地図と同じ摩耶山を表示させた地形図。等高線が読みやすく「稲妻坂」から「天狗道」の急登の度合いがよく分かる。

 地形図とは国土地理院が発行する地図のことで、登山では主に2万5000分の1の地形図を用いる。航空写真を元に地図を作成しているため概ね正確ーー航空写真に写りにくい部分は怪しい時があるーーでる。
 先述した登山地図は人気山域のみ刊行されているのに対して、全国の地図を網羅しているのが特徴だ。

 大型書店や登山用品店が主な販売先だが、現在では地理院地図などから無料でプリントアウトできるから、そちらの方が便利だろう。地図のプリント方法については『登山の地形図をわずか10円で入手する方法|TrailNote(トレイルノート)の使い方』を参考に。

登山地図より読みやすい詳細な等高線

 地形図の最大のメリットは、等高線が見やすく詳細な地形を読めることである。

 登山地図と地形図を比べてみれば明らかだが、地形図は登山情報がない分スッキリと表示され、等高線を読むのに適している。尾根や谷、ピークなどの地形の特徴を読みやすい。

 また、登山地図にはない徒歩道も記載されるなど、現場で使う地図としては地形図が最適である。

 現在地の特定に有用な堰堤(えんてい)や電波塔、送電線なども記される。昔習った地図記号を思い出しながら使ってみよう。

登山地図で計画を立て地形図で現場確認

 登山地図で計画を立て、現場では地形図を使う。地図の扱いに慣れたらこの方法がおすすめだ。
 登山地図の情報を地形図に書き込み、現場でのルート確認に地形図を活用する。こうすることで、登山地図の情報と地形図の読みやすさの両方を活かせるのだ。

登山地図の使い方まとめ

 登山地図の基本の使い方を記事にまとめた。一見難しそうな地図読みだが、慣れると地図読みそのものが、ひとつの楽しみになる。

 僕は毎週のように、地形図を片手に、関西の低山歩きを楽しんでいる。時には道のない、バリエーションルートを歩くこともある。少しずつ地形が読めるようになり、等高線が立体的に見えてくるのが愉快だ。

 あまり難しく考えずに、地図とコンパスを手にとってみてほしいと思う。この記事が地図を手に取るきっかけになれば幸いだ。

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