「手軽にアウトドアを楽しみたい」
「インターネットやSNSから離れてリフレッシュしたい」
そんな人におすすめしたいのが『バードウォッチング』である。
しかし、バードウォッチングは自然豊かな森でないと楽しめない、というイメージが先行することだろう。
実はバードウォッチングは都市部でも十分に楽しめ、それも特別な道具を必要とせず、今日からすぐに、誰でも楽しめるアウトドアであるのだ。
ここでは、自宅から徒歩10分圏内で楽しむバードウォッチングの魅力をご紹介しよう。
目次
都市部で楽しむバードウォッチング|その鳥は本当にスズメだろうか?

バードウォッチングを楽しむには、深い山や森の中、または屋久島や知床など世界的に有名な大自然に出かけなければならない——。
多くの人がそう考えていることだろう。実はそんなことはなく、バードウォッチングは都市部でも楽しめてしまう。
普段気がつかないだけで、身の回りには多くの生態系が存在している。街路樹や道端に生きる雑草、昆虫、それに野鳥だ。身近な自然を楽しむには、そのことに気がつけるかどうかがポイントだろう。
野鳥はヒトにとってもっとも身近な野生動物といわれている。朝、目を覚ましたら窓を開けて、野鳥のさえずりに耳を澄ませてみよう。そして、声が聞こえる方向を注意深く観察する。一点に集中するのではなく、全体を俯瞰するように漠然と見ることがコツだ。
意外と自宅の近くに野鳥がいることに気がつくことだろう。鳥を見つけたら、驚かさないように静かに観察する。そしてこう考える。
「この鳥は本当にスズメだろうか」

電柱や街路樹にいる鳥を『スズメ』とひとくくりにしてしまいがちだが、そんなことはない。
都市部にもいる代表的な野鳥は、スズメの他にムクドリやヒヨドリ、ハクセキレイ、私の自宅付近にはメジロも姿を現す。

日本には600種以上の野鳥が存在するとされ、なるべく多くの種類を観察し、コレクションを増やすのも楽しみのひとつだ。
これは日本百名山の制覇や、ポケモンのコレクションを増やす感覚に近いかもしれない。
スマートフォンを片手にポケモンを集めるのもいいが、今ここに生きている野鳥を追い求めるのも、なかなか楽しいものである。
河川敷や都市公園は絶好のバードウォッチングスポット

都市公園や河川敷は絶好のバードウォッチングスポットだ。散歩がてらに鳥を探してみてほしい。
これは、2020年3月12日、大阪市の淀川河川敷での記録だ。
- ムクドリ
- スズメ
- ハクセキレイ
- ドバト
- カルガモ
- アオサギ
- キンクロハジロ
- カワウ
- ハッカチョウ
- ヒドリガモ
- トビ
- モズ
- ジョウビタキ
- ツグミ
- ヒヨドリ
- オオバン
- ハシボソガラス
- ハシブトガラス
ほんの1〜2時間、散歩のついでに私が確認しただけでも18種類の野鳥を確認できた。鳥たちが好む環境が整う、都市公園や河川敷には多くの野鳥が生息していることが分かる。
わざわざ遠くに出かけなくても、徒歩圏内でバードウッォッチングは楽しめるのだ。

周囲の迷惑にならないように
手軽に楽しめるバードウォッチングだが、周囲への配慮は忘れてはならない。観察に夢中になるあまり、道路や通路をふさいだり、立ち入り禁止の場所に立ち入ったりしないよう気をつけよう。
ごくまれに——本当にまれだ——撮影したいがあまりに大型のカメラや三脚で道をふさいでいる”集団”を見かけることがある。そんな光景を見ると、同じ自然を愛する者として悲しくなってしまう……。
もちろんゴミを捨てるなんて論外である。
バードウォッチングに必要な道具

昨今アウトドアを便利に快適する道具が巷にあふれており、私も便利に活用している。しかし、バードウォチングに特別な道具は必要ない。
特別な道具は必要ない
まずは身近な自然を目で見て耳で聞いて、自然の臭いを感じとろう。
ウグイスの鳴き声で春の訪れを感じることもあれば、カモの飛来に秋を感じ、「そろそろ冬物のコートが必要かな」などと思う。
そうかと思えばヒヨドリのように年中うるさくさえずる野鳥もいるし、公園によくいるドバトは緊張感がなく、人が近づいても逃げない。ドバトは伝書バトが野生化した、ニワトリやアヒルのような家禽(かきん:人が飼う鳥)であるからだ。

このように、家の周辺をぐるっと散歩するだけで自然の多様性を感じることができる。
身近な自然に気がつけば手ぶらで歩いても十分に楽しいし、まず目や耳で野鳥を見つけられないと、道具も役に立たないのだ。
とはいえ、野鳥は警戒心が強く近づいて観察しようとすると飛び去ってしまうし、鳥の名前や種類を知りたくもなる。そうなったら図鑑や双眼鏡を用意しよう。
図鑑があれば鳥の種を判別できる

バードウォッチングに必要なのは、道具よりも、むしろ知識かもしれない。ほんの少しの知識があれば身近な自然に感動できる。知識を与えてくれる図鑑があれば、よりバードウォッチングを楽しめることだろう。
書店に出向けばさまざまな図鑑があるが、大別するとイラストと写真の図鑑に分けられる。私のおすすめはイラストの図鑑だ。
写真の図鑑ももちろんいいのだが、掲載される写真によって、色やシルエットなどに多少のバラつきがある。
一方、イラストの図鑑にはその種の平均的なイラストが掲載されており、特徴をつかみやく判別にも使いやすい。
イラスト図鑑の中でも、一押しは『フィールドガイド日本の野鳥』である。美しく描かれたイラストを眺めるだけで、十分に楽しめる一冊だ。
双眼鏡があれば鳥の細部を観察できる

近づくのが難しい野鳥との距離を縮めてくれるのが双眼鏡だ。双眼鏡があれば、遠くの野鳥を細部まで確認できる。
個人的には、登山や旅行、博物館と多様な用途に使える4倍〜6倍の双眼鏡がおすすめだが、野鳥観察にはもう少し倍率が欲しい。
バードウォッチングに最適な双眼鏡の倍率は8倍〜10倍、口径は30mmクラスの双眼鏡がおすすめである。双眼鏡のスペック表には『8×32(8倍、口径32mm)』などと表記されており、携帯性と明るく見やすい視界とのバランスがいいクラスだ。
双眼鏡の性能は価格に露骨に比例する。3万円〜5万円クラスの双眼鏡を用意すれば見え方は素晴らしく、普通の人は満足できるだろう。
これが光学機器マニアになると周辺視野の解像度が云々と語りだし、ウン十万の双眼鏡に手を出すことになり、そのまま沼にはまって抜け出せなくなる。
そして、間違っても50倍や100倍のズーム双眼鏡など買ってはいけない。カメラで有名なニコン、オリンパス、ペンタックス、キャノンや、望遠鏡メーカーのビクセンなどから選べば、間違いはないだろう。
双眼鏡についてはこちらの記事も参考に。
筆記具があれば記録をつけられる

その日観察した場所や天候、見つけた鳥の名前などを記録しておくと、後で見返して楽しめるばかりか、自分だけの貴重な記録になる。
記録をつけながら歩くことで、自宅から徒歩10分圏内にも多くの野鳥がいることに驚くことだろう。
筆記具は気に入ったものであれば何でもよいのだが、おすすめは鉛筆とフィールドノートの組み合わせである。これについては別途記事を書こうと思う。
アウトドア必需品、雨具や防寒着、水筒など
その他、バードウォッチングは野外でのアクティビティーであるから、半日や1日をかけて楽しむときは雨具や防寒着が欠かせない。水分補給の水筒や、ちょっとした軽食も用意しておくといいだろう。
足元はトレッキッグシューズやウォーキングシューズがおすすめだが、歩きやすい靴があれば十分だ。今持っている道具でまず始めてみて、それから必要に応じて道具をそろえていけばいいと思う。
そもそも、バードウォッチングはそんなに道具を必要とする遊びではないのだ。
今日からバードウォッチングを始めてみよう
普段気がつかないだけで、自宅周辺にも多くの野鳥が生息している。ほんの少し視野を広げて身近な自然に気がつけば、徒歩10分圏内でバードウォッチングを楽しめる。
その手軽さから、アウトドアを楽しみたい人や、仕事やインターネットから離れてリフレッシュしたい人におすすめの趣味である。
この記事を参考に、さっそくバードウォッチングに出かけてみよう。