一体いつから、こうもスマホに依存するようになったのだろう。
出先での地図の確認に始まり、動画・SNS・読書までスマホでこなせるから、手元にあると好奇心をくすぐられて仕方がない。
それは、寝る前の時間も同じである。早く寝ないと翌朝後悔するのがわかっていても、ついついスマホを見てしまう人は少なくないだろう。
では、どうすれば”寝る前スマホ”を辞められるだろうか?
答えは「手元にスマホを置かない」ようにすることだ。
ここでは、寝る前スマホが体に及ぼす影響や、寝る前スマホを辞める方法を、参考になった書籍と一緒に紹介していきたい。
目次
寝る前スマホで太りやすくなる!?意思の強い人はそもそも誘惑されていない 結論・寝室にスマホを持ち込まない
寝る前スマホで太りやすくなる!?
「寝る前にちょっとウェブサイト運営のことを調べていて、気がついたらミドリムシが増殖する動画を見ていた」のは最近のことだ。
ミドリムシの動画はともかく、あなたにも思い当たるふしがないだろうか。
これから寝ようとしているのに、手元のスマホが、動画やSNSなどあらゆる手を使って誘惑してくる。
すでに広く知られていると思うが、寝る直前までスマホを操作するのは、健康な睡眠のためにはよろしくない。厚生労働省も警鐘を鳴らしている。
寝床に入ってから携帯電話、メールやゲー ムなどに熱中すると、目が覚めてしまい、さらに、就床後に、長時間、光の刺激が入るこ とで覚醒を助長することになる……
出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針 2014」第7条
睡眠不足は、注意力や作業能率 を低下させ、生産性を下げ、事故やヒューマンエラーの危険性を高めます。
出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針 2014」第8条
寝不足(4時間睡眠)をたった二日間続けただけで食欲を抑えるホルモンである レプチン 分泌は減少し、逆に食欲を高めるホルモンであるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大することが分かっています。ごくわずかの寝不足によって……生活習慣病に罹りやすいことが明らかになっています。
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット
スマホ画面からの強い光のせいで、脳が昼間と勘違いしてしまい、覚醒をうながす。
その結果、睡眠不足におちいれば翌日のパフォーマンスが落ちるのは目に見えているし、太りやすい体質になったり生活習慣病の原因になったりと、良いことはない。
しかし、悪影響を理解しているにも関わらず、筆者は寝る前スマホがなかなか辞められなかった。かれこれ9年も続いた”悪習”である。
なぜ辞められなかったのだろうか?
それには、人が本来持っている性質が関係していることがわかった。
参考書籍「ぼくたちは習慣で、できている。」佐々木 典士(著)と一緒に紹介したい。
意思の強い人はそもそも誘惑されていない

「ぼくたちは習慣で、できている。」では、人の習慣に着目し、人の習慣のシステムや、習慣を身につける方法・辞める方法が丁寧に解説されている。
その中から、この本の中核を担うある実験を紹介しよう。
マシュマロテスト
心理学者ウォルター・ミシェルが行った実験が、有名な「マシュマロ・テスト」である。このテストは1960年代にスタンフォード大学のビング保育園で4~5歳の子どもを”対象に行われた。まずマシュマロ、クッキー、プレッツェルなどお菓子の中から子どもたち自身にいちばん食べたいものを選ばせる。そのお菓子(ここではマシュマロを代表として挙げる)を園児が座るテーブルの上に1つ置く。そして園児たちに次の選択肢から選ばせた。
出典:『ぼくたちは習慣で、できている。』(佐々木 典士 著)
選択肢はこうだ。
- 目の前のマシュマロをすぐ食べる
- 20分待てればマシュマロが2個もらえる
目の前のマシュマロに、苦悩の表情を見せる園児たちの姿が目に浮かぶ。
実験の結果
このような内容だが、実験はその後、園児達が成長するまで追跡し続けられた。その結果、マシュマロを待てた子供のほとんどは、成長後、学校の成績もよく肥満率が低く、より高い給料の職についたというのだ。
双極割引
筆者は間違いなく待てない子供だっただろうが、今さら悔やんでも仕方がないので、ここで待てなかった理由を考えてみたい。
人には目の前の報酬ほど大きく感じ、将来にある報酬や罰則は少なく見積もってしまうという「双極割引」という性質がある。だから、好ましい習慣を身につけるのが難しい。
出典:『ぼくたちは習慣で、できている。』(佐々木 典士 著)
つまりこういうことだ。
- 目の前の報酬=スマホで動画を楽しむ
- 将来の報酬・罰則=寝不足、後悔
「翌日の後悔」と「ミドリムシの動画」をてんびんにかけ、翌日の罰則を小さく見積もり、ミドリムシの動画に軍配が上がっていた。
たった7時間後の将来のことでさえ考えられず、目の前の誘惑には勝てなかったのである。
誘惑されない環境を作る
マシュマロテストで20分待てた園児たちは、どのようにして誘惑に打ち勝ったのだろう。
元々の実験で待てた子どもたちは、待っている間、歌を歌ったり、ピアノを弾くまねをしたり……目の前にマシュマロがあっても、それからうまく気をそらす方法を知っていた。
出典:『ぼくたちは習慣で、できている。』(佐々木 典士 著)
上手にマシュマロから気をそらしていたようだ。
ちなみに、待てなかった子供にも「マシュマロは偽物だよ」とかマシュマロをトレーで隠して再度実験すると、待てるようになったとのこと。
つまり、忍耐はもって生まれた特別な能力だけではなく、環境や学習、考え方ひとつで身につけられる能力なのだ。
だとすれば、筆者も上手にスマホから気をそらせば、寝る前のだらだらスマホを辞めらるのではないか。
結論・寝室にスマホを持ち込まない
結論は「寝る前スマホを辞めるためには、寝室にスマホを持ち込まないことである」。
スマホが手元になければ、そもそもスマホに誘惑されることもない。スマホを見たいと思っても、起き上がって別の部屋に移動しなければならない。
わざわざ起き上がるぐらいなら、そのままベットで寝ていたい。このように、スマホを触るためのハードルを高く設定するのだ。
余談だが、学生時代のプロベーシストの恩師が、自らのある習慣について話してくれたことがある。
「テレビゲームが大好きで、バイオハザードをやり始めると止まらない。だから、プレイステーションはガムテープでぐるぐる巻きにして、押入れの奥にしまっておく。正月休みの間だけ封印を解くのだよ」。
プロのベーシストでも、ベースを弾きたくない時はあったようだ。
油断するとテレビゲームに熱中してしまうから、わざわざガムテープで縛ってプレーステーションを取り出すハードルを上げていた。
十数年前の懐かしい話である。
目覚ましや緊急連絡が気になる!
目覚まし時計で対処しよう。
多忙な人であれば、24時間連絡が入る可能性がある人もいるだろう。であれば、せめて枕元から離れた場所にスマホをおく。
できる限りスマホを手に取るハードルを高くするのだ。多忙な人こそ、睡眠時間を大事に取るべきではないだろうか。
寝る前スマホをやめて快適な睡眠を
寝る前スマホを辞めてから、翌朝の目の疲れがだいぶマシになったと感じている。日々PCの画面を見続けているから、目の疲れがネックであった。
朝からスッキリ目覚められるし、集中して効率よく仕事をこなせるようになった。
もし、あなたが寝る前スマホを辞めたいのなら、今日からスマホを寝室に持ち込むのを控えよう。
快適な睡眠を手に入れ、爽やかな朝を迎える第一歩である。