手を出してはいけない領域に手を出したのかもしれない。
万年筆の本体や紙質のほかに、インクの種類によっても書き味が変わることを知ってしまった。『インク沼』への入り口が不敵な笑みを浮かべて待っている。
好みのインクを使えるのが万年筆の楽しみでもあるが、初めての人はインク交換を難しく感じるかもしれない。しかし、手順通りに進めれば簡単な作業である。
ここでは、万年筆のインク交換が初めての人のために、その手順を詳しく紹介しよう。
目次
インクによって書き味が変わる!?
「インクの出が悪い気がする」と思ったのが事の始まりだ。
国産万年筆『#3776センチュリー』を使っていて、時々かすれ気味になることがあったのだ。一度気になると調べずにはいられない。
その結果わかったのが、それまで使っていた『ラミー・ブルーブラック』は乾燥気味で渋めなインクであることだ。どうやら、インクの種類によってインクの流れ方に違いがあり、筆記感が変わるらしい。
そこで、国産インクの定番『パイロット・ブルーブラック』を試すことにした。補足しておくがラミー・ブルーブラックが悪い訳ではない。万年筆との相性があるということだ。
万年筆のインクの種類と混ぜてはいけない理由
同じ色でもインクの成分が違うから
インクと一口にいっても種類があり、同じ色や同じメーカーでも種類によって成分が異なる。それを混ぜるとインクの成分が変わってしまう。
最悪の場合、万年筆の内部でトラブルが起こることもある。だからインクを交換する前には万年筆の洗浄が必要になるのだ。
インクの種類
以上のように、インクには種類があり、交換する前には万年筆の洗浄が必須である。まずは、インクの種類を確認しておこう。
染料インク
一般的なインクで、染料が使われている。水に溶けるインクなので、万年筆内でトラブルが起きにくい。「ラミー・ブルーブラック」「パイロット・ブルーブラック」は、ともに染料インクである。
顔料インク
水に溶けない顔料を使ったインクで、染料インクに比べて長期保存に適しているのが特徴だ。水に溶けないため、内部で乾燥させないよう注意が必要である。
古典インク
化学変化を利用して、黒色を沈殿させるインクである。こちらも、水に強く長期保存が可能で、長らく公文書などの記録書類に用いられてきた。顔料インクと同じく、扱いには注意が必要である。
万年筆を洗浄する手順
- 万年筆を分解する
- 古いインクを捨てる
- 水にひたす
- 乾燥させる
万年筆の軸を回転させて、万年筆を分解する。古いインクはもったいないが捨ててしまおう。ティッシュペーパーなどで吸い取ると良い。
ペン先をどぼんと水に浸す。コンバーターや吸入式の万年筆は、ピストンを上下させて内部に水を循環させよう。汚れた水は交換して、水が透明になるまで繰り返す。


よく乾燥させて完了だ。内部に水が残ると、書き出しのインクが薄くなってしまうので気をつけよう。

カートリッジ交換の手順
ここからは、インク交換の手順を解説しよう。まずはカートリッジ交換の手順から。
- 万年筆を分解する
- カートリッジを差し込む
- 組み立てる
万年筆の軸を回転させて分解する。

古いカートリッジを外し、向きに注意して新しいカートリッジを差し込こもう。


軸を組み立てて完了。

最初はインクが出にくいが、しばらくすれば書けるようになる。特に新品の万年筆はペン先にインクがなじむまで時間がかかる場合がある。詳しくは「新品なのに書けない!? 万年筆のインクが出ないときの対処方法」を参考にしてほしい。
コンバーターを使ったインク吸入の手順
続いて、コンバーターを使ったインク吸入の手順を解説しよう。
- 万年筆を分解する
- コンバーターをセットする
- コンバーターでインクを吸入する
- 組み立てる
- 余計なインクを拭き取る
まずはカートリッジ交換の要領で軸を分解する。カートリッジの代わりにコンバーターを差し込もう。

コンバーターのつまみを回してピストンを下げる。インク瓶にペン先を浸し、ゆっくりとピストンを上げるとインクが吸い上げられる。



軸を組み立てた後は、余分なインクを拭きとって完了だ。

*
- インクは混ぜてはいけない
- 簡単な手順でインクは交換できる
インクを変えた結果、以前よりインクの出がよくなり筆記感も向上した。
実際にやってみるとインク交換は簡単な作業だと分かる。扱いが難しそうだ二の足を踏をふんでいる人は、ぜひ試してみてほしい。あなたにも『沼』の入り口が見えてくるはずだ。