登山 服装

ハウツー

10分で学ぶ登山の服装の基礎テクニック|レイヤリングの基本をマスターしよう

 服を何枚も着込んだのに暖かくない。

 汗が冷えて、夏なのに寒い思いをした。

 野外でこのような経験をしたことはないだろうか。

 いくら高機能なアウトドアウエアを着用しても、正しく組み合わせないと効果を発揮できない。そこで大切なのが、登山の服装の基本『レイヤリング』である。

 ここでは、登山の服装について知りたい人のために、レイヤリングの基本をご紹介したい。この記事でレイヤリングの基礎を学べば、より快適に山を楽しめることだろう。

目次

登山の服装の基本は『レイヤリング』

登山 服装
限られたウエアを最大限に生かす重ね着のテクニック。それがレイヤリングだ。

 登山の服装は、限られたウエアを組み合わせて最大限に生かすことが大切だ。そのためには、アウターレイヤー、ミッドレイヤー、ベースレイヤーの3層からなる重ね着のテクニック『レイヤリング』を構築することが大切である。

レイヤリングの目的は体温を適切に調整するため

 そのレイヤリングの目的は、体温を適切に調整することだ。その極意は『暖かく、しかし汗はかかない』ことである。

 レイヤリングで大切なのは、体をドライに保ち冷やさないこと。水は空気の約25倍の熱伝導率を持ち、汗や雨で体がぬれると、たちまち体温を奪われてしまう。

 それを防ぐには、ベースレイヤーで汗を素早く発散し、ミッドレイヤーで保温し、アウターレイヤーで雨や風を防ぐ必要があるのだ。行動中はこまめにウエアを調整し、汗をかく前に脱ぎ、寒さを感じる前に着ることを繰り返す。

 汗や雨で体をぬらしてしまい、適切な体温調整を怠ると、夏山でも低体温症に陥る危険がある。

夏でも起こりうる低体温症

雨や強風に見舞われれば、夏でも低体温症で命を落とす危険がある。

 低体温症とは、体温が35度以下に下がる症状のこと。体の中心体温が下がることで重要器官の働きが低下し、最悪の場合は死に至る。

 死亡率が高く山岳や海洋遭難時に多いほか、東日本大震災のときには東北地方の被災地に取り残された人々に多く発症した。

 また、2009年7月16日に発生した北海道トムラウシ山遭難事故では、プロガイドを含む参加者9名が死亡する遭難事故が発生した。その原因は低体温症に起因するとみられている。

 北海道とはいえ7月の夏山での出来事。このように、悪条件がそろえば真夏であっても発症するのが低体温症だ。適切な体温調整のためには、レイヤリングのマスターが欠かせないのである。

※参考:ブリタニカ国際大百科事典 低体温症・百科事典マイペディア トムラウシ山

ベースレイヤー

登山 服装 ベースレイヤー

 ベースレイヤーは肌に一番近いウエアで、汗を吸い上げ素早く発散することが目的だ。下着やTシャツ、ロングTシャツなどがベースレイヤーにあたり、素材は速乾性があるポリエステルなどの化学繊維が主流である。

 ベースレイヤー選びに気をつけたいポイントは、綿製品を避けることだ。

綿製品は避けよう

 ベースレイヤー選び、とくに行動中のベースレイヤーは綿製品を避けよう。

 綿は着心地もよく吸湿性もよい。さらに耐久性も高く肌着として優れた素材だ。しかし、ぬれると重たくなり、乾きにくいという短所を持つ。この短所がアウトドアウエアとしては致命的なのだ。

 ベースレイヤーの役割は、汗を素早く発散して肌をドライに保つことにある。そのため、汗が乾きにくい綿はベースレイヤーとしては適さないのだ。

 汗でぬれたウエアを着続けることにより体が冷やされると、低体温症になりかねない。そのため、行動中のウエアは必ず速乾性をもつ機能素材のウエアを選ぼう。

 もちろん、汗の心配がないキャンプでのリラックスウエアや、下山後の着替えなどは綿製品でも問題ない。

ミッドレイヤー

登山 服装 ミッドレイヤー
ソフトシェルは、ミッドレイヤーにもアウターレイヤーにも使える優れもの。

 ミッドレイヤーは暖かい空気の層を作り出し、保温することが目的だ。加えてベースレイヤーが吸収した汗を発散させるための、速乾性や通気性も欠かせない。

 ミッドレイヤーの代表はフリースやダウンジャケット、中厚手の登山シャツなどである。近年は、ミッドレイヤー兼アウターレイヤーとしても使えるソフトシェルも人気が高い。

 ミッドレイヤーにはさまざまな種類があり、季節や山域に応じて最適なものを選びたい。状況によって、フリース+ダウンベスト、登山シャツ+フリースなどと、複数を組み合わせて使うといいだろう。

 ただし、ダウンジャケットは行動中のウエアには適さない。その理由を次項で解説しよう。

ミッドレイヤー(保温着:インシュレーション)

登山 服装

 保温着もミッドレイヤーのひとつなのだが、ここではあえて別に取り上げた。というのも、行動中の保温着と、休憩中の保温着は用途が少し異なるからだ。

 ここで言う保温着は、休憩中やテント場で体温を保持する目的のウエアを指す。

 季節や山域にもよるが、行動中のウエア+休憩時の保温着があれば、レイヤリングはより完璧なものになる。万が一、山中での緊急野営を迫られた場合でも、保温着があればより快適に過ごせるだろう。

 その保温着におすすめなのが、コンパクトに収納できるダウンジャケットである。

 ダウンジャケットは大量の暖かい空気を蓄えられ、しかも軽くて保温性が高い。ミッドレイヤーとして最適なのだが、ぬれると保温力を失ってしまう。さらに、行動中のミッドレイヤーとしてダウンジャケットを羽織ると、暑くて大汗をかいてしまうだろう。

 つまり、ダウンジャケットは優れた保温力を備えているが、その特徴から行動着には適さないのだ。

 ダウンジャケットは保温着として、防水対策を施したうえでバックパックに忍ばせておくとよい。休憩時や宿泊時に活用しよう。

アウターレイヤー:レインウエア

登山 服装 レインウエア

 アウターレイヤーは、風や雨などの外的要因から身を守るためのウエアだ。レイヤリングの一番外側に着用し、無積雪期の登山ではレインウエアがアウターレイヤーの役目を果たす。

 レインウエア選びも素材に注目したい。コンビニやホームセンターで売られている雨ガッパもたしかにレインウエアだが、登山やアウトドア用途において、それらは役不足である。

上下セパレート、防水透湿素材のレインウエアを選ぼう

 レインウエアは防水透湿素材のものを選ぶことが大切だ。

 防水透湿素材とは、水滴は通さないが水蒸気は通す素材のこと。

 その素材には、水滴は遮断するが、水蒸気は通すマイクロメートル(1mmの1000分の1)単位の穴が無数に開けられている。それにより、雨の侵入を防ぎ、汗蒸れを逃すという一見相反する機能を実現させたのだ。

 防水透湿素材の代表格はゴアテックス(GORE-TEX)だ。レインウエアをはじめ、登山靴やグローブなどあらゆる道具に採用されている。

 レインウエアは、必ず防湿透湿素材が採用されたものを選ぶこと。ビニール製の雨ガッパは防水性能を備えているが、蒸れを逃す透湿性能がない。

 雨ガッパを羽織ったところで、ウエア内に蒸れがたまると結局ぬれてしまう。体がぬれると低体温症の危険があるのは、前述とおりである。

グローブ・帽子

登山 服装

 レイヤリングの目的は、体温を適切に調整することだ。そのためには、頭部や手足の末端部分の保温も考える必要がある。グローブや帽子などの小物も欠かせない。

 夏場の帽子は日差しを遮るキャップやハットを。雨のことを考えて、防水透湿素材の帽子を選べばより安心だ。春秋や冬季は保温力の高いニット帽を選ぶといいだろう。

 指先は心臓から遠い部分にあり、特に冷えやすい箇所だ。特に冬季は保温力の高いウールやフリースのグローブを用意しておこう。

 グローブや帽子で末端部分を守ることで、より高い保温力・安全性を備えたレイヤリングが完成する。

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登山の服装例

 レイヤリングの基礎を踏まえた上で、私が実際に着用していうるレイヤリング例をご紹介しよう。

<ベースレイヤー>

  • モンベル:クールハーフスリーブジップシャツ
  • パタゴニア:キャプリーン・サーマルウェイト・ジップネック・フーディ

<トレッキングパンツ>

  • モンベル:マウンテンガイドパンツ

<ミッドレイヤー>

  • モンベル:ノマドパーカ
  • モンベル:スペリオダウンジャケット(保温着)

<アウターレイヤー>

  • モンベル:ストームクルーザージャケット
  • モンベル:ストームクルーザーパンツ

<小物>

  • モンベル:ワッチキャップ
  • モンベル:メドーキャップ
  • モンベル:レイヤードグローブ

 上記に紹介したアイテムで、春〜秋から積雪のない冬季低山登山まで対応できる。

夏山登山の服装例

登山 服装
  • モンベル:クールハーフスリーブジップシャツ
  • モンベル:マウンテンガイドパンツ
  • モンベル:メドーキャップ

 夏山登山の場合、通年使える中厚手のトレッキングパンツに、Tシャツで過ごすことが多い。もちろん、悪天候に備えて上下レインウエアや、休憩時の保温にダウンジャケットも用意している。

 日差しが強いため、キャップとサングラスも欠かせない装備だ。

休憩時の服装例

登山 服装
  • モンベル:クールハーフスリーブジップシャツ
  • モンベル:マウンテンガイドパンツ
  • モンベル:スペリオダウンジャケット

 例え夏場でも、稜線上で風に吹かれたり、標高があがったりすると寒さを感じることがある。特に休憩で立ち止まると、一気に体が冷える。

 写真ではダウンジャケットを着ているが、状況に応じてレインウエアやミッドレイヤーを羽織り、冷える前に保温に努めよう。

春秋登山の服装例

登山 服装
  • パタゴニア:キャプリーン・サーマルウェイト・ジップネック・フーディ
  • モンベル:マウンテンガイドパンツ
  • モンベル:ノマドパーカ

 春や秋の登山では、通年使える中厚手のトレッキングパンツに、保温力の高い厚手のベースレイヤーを組み合わせる。

 ミッドレイヤーは、アウターレイヤーとしても使えるソフトシェルをチョイスした。さらに気温が下がればレインウエアを着用し、休憩中はダウンジャケットを羽織る。

 この組み合わせで、積雪のない冬季低山登山まで対応できる。

悪天候時

登山 服装
  • パタゴニア:キャプリーン・サーマルウェイト・ジップネック・フーディ
  • モンベル:マウンテンガイドパンツ
  • モンベル:ノマドパーカ
  • モンベル:ストームクルーザージャケット
  • モンベル:ストームクルーザーパンツ
  • モンベル:メドーキャップ

 悪天候時には、上下レインウエアを着用する。夏場はTシャツの上にレインウエアを羽織るし、寒い時期はミッドレイヤーの上に着る。

 意外と便利なのが、防水透湿性を備えたキャップだ。小雨程度なら防げるし、周囲の音もよく聞こえるので重宝する。レインウエアのフードをかぶると、音が聞こえにくくなるのだ。

登山の服装まとめ

 登山では、限られたウエアを上手に組み合わせて、環境に対応する必要がある。その重ね着のテクニックがレイヤリングだ。

 ベースレイヤー、ミッドレイヤー、アウターレイヤーの役割を理解し、季節に応じたレイヤリングを考えよう。特に、汗を逃すベースレイヤーと、風雨から身を守るレインウエアの選択は大切だ。

 登山の服装について悩んでいる人は、この記事を参考にレイヤリングを構築してみよう。きっと、より快適に山を楽しめるようになるだろう。

この記事で紹介したアイテム

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Takashi

元靴メーカー勤務の職人、現在はWEBライターとしてアウトドア系メディアで執筆しています。靴業界での10年以上の経験、趣味のアウトドア経験を活かして書きます。大阪府山岳連盟「青雲会」所属・読図ナヴィゲーションスキル検定「シルバーレベル」・2018年「狩猟免許」取得・ランサーズ「認定ランサー」・フルマラソンベスト3時間29分。

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