スマートフォンが普及し、誰でも簡単に高画質の写真を撮影できるようになった。しかし、スマートフォンはやはり電話であり、カメラでなければ撮影できない瞬間がある。そこにカメラの存在意義があるのだ。
今回は登山のカメラについて考えたい。私が選んだのは、パナソニック『LUMIX DMC-FZ300』である。カメラ好きなら「高倍率ズーム機なんて……。」と一蹴するだろうが、これがなかなか侮れないのである。
目次
登山のカメラに何を求めるか
登山のカメラに何を求めるだろうか。山にカメラを携行する目的を考え、用途に応じたカメラを選びたい。登山用カメラに求められる性能は、概ね以下の3点であろう。
1.防塵防滴
野外で使う電子機器は、やはり防塵防滴であってほしい。雨や雪、沢の水しぶきはもちろん、夏場ではしたたる汗も心配だ。
カメラを無防備に首から下げていると、いつのまにか浸水して故障しかねない。かといって、バックパックに収納していては撮影の機会が失われてしまう。やはり防塵防滴のカメラが、野外では心強い。
2.小型・軽量
登山装備の重さは疲労に直結する。少しでも軽く、小さなカメラが好ましい。もし山岳写真の作品を撮るなら、撮影機材の重さには目をつぶらないといけないだろう。だが、その目的が登山の記録なら、できるだけ小型のカメラが望ましい。
できればウエアのポケットに収まるカメラが理想だが、画質や望遠性能との兼ね合いがある。写真に何を求めるかによって、好みが分かれるところだ。
3.よく写るカメラ
せっかくカメラを携行するのだ。スマートフォンに負けない、よく写るカメラを選びたい。しかし、前述のように画質を追求すると機材が大型化する傾向がある。どこまでの画質を求めるか。これも個人の好みが分かれるところだ。
記録としてのカメラを選ぶなら
私が山行にカメラを持ち出す目的は、記録である。作品を撮影するためではないから、大型で高画質なカメラは必要ない。
とはいえ、風景や花、野鳥、山仲間とのスナップなど、登山のさまざまな状況に対応でき、確実に撮影できるカメラがいい。仕事として写真を納品することもあるから、スマートフォン並の画質(最近のスマホはよく写るけどね)では困る。だからといって交換レンズ数本を用意するまでもないから、広角から望遠まで1台で対応できるカメラが理想だ。
このような条件でカメラをあさった結果、選んだのがパナソニックの高倍率ズーム機『LUMIX DMC-FZ300』なのだ。
パナソニック:LUMIX DMC-FZ300

- カメラ有効画素数:1210万画素
- 撮像素子:1/2.3型 総画素1280万画素高感度MOSセンサー 原色フィルター
- 手ブレ補正 静止画:POWER O.I.S.(ON/OFF可) 動画:アクティブモード 5軸ハイブリッド手ブレ補正
- モニター:アスペクト比3:2 / 3.0型 / 約104万ドットモニター / 静電容量方式タッチパネル / 視野率 約100%
- ファインダー:有機EL(OLED) LVF(ライブビューファインダー) 0.39型 約144万ドット視度調整付き(-4~+4diopter) 視野率約100%倍率約3.88倍(35mm判換算:約0.7倍)アイセンサー
- 堅牢性:防塵防滴
- 寸法(WxHxD):約131.6 x 91.5 x 117.1mm(突起部を除く)
- 質量:約691g(本体、バッテリー、メモリーカード含む)約640g(本体)



詳細なスペックは公式サイトを確認してほしい。ここでは、このカメラでどんな絵が撮れるのか、その使い勝手はどうなのかをレビューしたい。まずは作例――というほどではないけれど――をご紹介しよう。なお、撮影はすべて手持ちである。
ƒ/4 1/400 4.5 mm(35mm判換算: 25mm相当) ISO 100 ƒ/4 1/320 4.5 mm(35mm判換算: 25mm相当) ISO 100 f4 1/400 4.5mm(35mm判換算: 25mm相当)ISO100 ƒ/2.8 1/640 12.5 mm(35mm判換算: 70mm相当) ISO 100 f3.2 1/400 108mm(35mm判換算:603mm相当)ISO100 ƒ/3.2 1/800 106.1mm(35mm判換算: 592mm相当)ISO 100 f2.8 1/1250 108mm(35mm判換算:603mm相当)ISO100 ƒ/2.8 1/800 108 mm(35mm判換算: 603mm相当) ISO 100 トリミング ƒ/2.8 1/2500 24.4 mm(35mm判換算: 136mm相当) ISO 100 ƒ/4.5 1/400 13 mm(35mm判換算: 73mm相当) ISO 100 ƒ/2.8 1/80 9.1 mm(35mm判換算: 51mm相当) ISO 100
ライカレンズ|全域F2.8・24倍ズーム

FZ300の特徴は何といっても高倍率ズームである。搭載されるレンズは、LEICA DC VARIO-ELMARIT(バリオ・エルマリート)。超一流光学機器ブランド『ライカ』である。35mm版換算で広角25mmから望遠600mmまで対応し、それも全域にわたり開放F2.8を実現しているのだ。
F2.8とは、大まかにいうとレンズの明るさを示す数値であり、数字が小さくなるほど明るくなる。通常、倍率が高くなるほどレンズは暗くなり、600mmの望遠レンズでは、プロ用でもF4が限度だ。そこをFZ300は広角から望遠600mmの全域でF2.8を実現させた。
レンズが明るいと光量が少ない状況でも撮影しやすく、背景のボケ具合もコントロールしやすい。通常は明るいレンズほど高性能とされ、価格も上がり、レンズ本体も大きくなる。
ズーム倍率は24倍。これだけの倍率があれば、撮影できないものはないと言っても過言ではないだろう。広角スナップから遠くの野鳥まで撮影できる。ズームの威力は作例で確認してほしい。


ちなみに、一眼レフの600mmF4単焦点レンズは100万円を優に超え、その大きさからバズーカなどと揶揄される。
FZ300はプロ用機材には勝てないものの、600mm相当のレンズが小さなボディーに収まり、数万円で手に入るのだ。
電子ビューファインダーを搭載
ファインダーを覗いて撮影できるメリットは大きい。背面液晶が見づらい状況でもファインダーで構図を確認できるし、しっかり構えることで手ブレを抑えられる。
スマートフォンの画面が、晴天下で見づらい経験をしたこはないだろうか。それと同じく、カメラの液晶も日差しが強いと非常に見にくい。今まで、画面が見づらい状況では勘で撮影していたが、ファインダーがあることでしっかり構図を決められる。
また、両手に加えてファインダーの目当て部分を額に押し付けるため、ブレを最小限に抑えられる。やはりカメラはファインダーを覗いて撮るものなのだと、つくづく実感した。それに、ファインダーがあったほうが気分が高まるではないか。
防塵防滴ボディー
FZ300は防塵防滴ボディーであり、少々の雨なら心配いらない。アウトドアの心強い味方である。
コンパクトカメラでいえば、防水と対衝撃性能に優れたモデルもあり、購入前に検討した。だが、それらのカメラはズーム倍率が足りなかったのだ。
山行では野生動物に遭遇することも珍しくなく、撮影するためには望遠性能が欠かない。
これまでニホンジカやイノシシ、ニホンザル、各種野鳥などに遭遇してきたが、ズーム倍率が足りずに撮影機会が損なわれてしまった。野生動物は人間を避けて遠くにいるものだ。
望遠性能とサイズ感、防塵防塵性能を天秤にかけ、最終的に選んだのがFZ300である。
登山カメラまとめ
どのような写真を撮りたいか、登山に最適なカメラは目的により異なる。その主な目的が記録であり、スマートフォン以上、一眼カメラ未満を求める人に、FZ300はおすすめのカメラだ。
防塵防滴ボディーにライカレンズを備え、広角から望遠まで対応し、撮影できない対象はないと言っても過言ではない。気になる人は、ぜひ実機を手にしてみてほしい。