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写真とカメラ

RICOH GRⅢ使用レビュー|スマホとは別にカメラを用意するに足り得る理由がある

2020年4月27日

 スマートフォンがあるのに、わざわざカメラを用意する必要があるのだろうか。スマートフォンのカメラが高性能化し、普及品クラスのデジタルカメラを駆逐したことは周知のことだろう。

 そんな現代において、写真家の視線の延長、指先の延長として”深化”し続ける小さなカメラがある。

 リコーGRⅢ——。

 究極のスナップシューターであること。その不変のコンセプトを掲げるGRの魅力とは。

目次

GRとは|フィルム時代から受け継がれるコンセプト

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 GRの歴史は1996年にさかのぼる。

 当時『コンタックスT2』の登場を皮切りに、カメラメーカー各社が『高級コンパクトカメラ』というジャンルに続々と参入していた。高性能レンズを搭載し、写真愛好家をターゲットに開発された高級コンパクトカメラは、写りの良さと所有欲を満たす豪華な外装が売りであり、プロアマ問わず人気を博していた。

 そんな中、リコー『GR1』は他社の高級コンパクトカメラとは異なったコンセプトで登場した。

 マグネシウム合金製の黒いボディーは一見地味だ。だが機能は一級品で、搭載されたGRレンズ28mmF2.8は名品として知られ、現在の中古市場でも高い人気を誇っている。軽く堅牢であり、広角単焦点28mmレンズを搭載し、一眼レフの広角レンズを凌ぐ性能を持つ。プロカメラマンのニーズに耐えうる、実用本意の道具。それがGR1だった。

 時代がフィルムからデジタルへと遷移しても、このコンセプトは変わらない。GR1ですでに完成されていたフォルムが現在まで受け継がれていることみても、コンセプトのブレのなさをうかがえる。GRが目指すのは多機能な優等生ではない。携帯性、高画質、速写性を備えた最強のスナップシューターである。

だからGRⅢを選んだ

場の空気に解け込むコンパクトカメラ

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GRⅢの操作系は右手側に集約されている。たとえ左手で傘をさしていようとも、片手で操作ができる。

 GRはデニムのポケットに収まるコンパクトカメラだ。どこへ行くにも——それこそスーパーに買い物に行くにも——ためらわずに持ち運べる。

 これが一眼カメラだとこうはいかない。

 撮影が主目的なら一眼カメラを選ぶだろう。だが旅行やパーティーに一眼カメラはためらわれる。荷物の多さ、重さで楽しみが削がれてしまっては本末転倒であるし、装備の重さが疲労に直結するのは、何も登山の話だけではない。

 コンパクトカメラはその場に解け込む。場の空気を乱さない。被写体にカメラを意識されないから、自然な表情や、あるがままの街の姿を撮影できる。大きな一眼カメラを構えていては、「ここにカメラマンがいますよ」とアピールしているようなものである。

起動が早い|撮ろうと思った瞬間に撮れる

RICOH GRⅢ 1/60 f16 ISO400

 GRⅢは起動が速い。撮ろうと思ってから1秒で撮影できる、速写性が魅力である。

 10年ほど前に、旧型のGRデジタル3を使っていたことがある。GRデジタル3もコンパクトカメラとしては十分に優れていたが、GRⅢと比べると動作が重たかったようだ。10年の歳月を経てそれだけ進化したということだろう。電源ボタンを押すと約0.8秒で起動し、すぐに撮影できる状態になる。

 GRのコンセプトのひとつ速写性は、起動の速さだけではない。スナップモードを使うことで、速写性にさらなる磨きがかかる。

速写性をさらに高めるスナップモード

 スナップモードとはいわゆる”置きピン”のこと。あらかじめピントを固定することで、ピント合わせの動作をすることなく撮影できる。ピントを合わせないから、普通に撮影するよりさらに速い。

 しかし、それではピンボケ写真を連発するのではないか? もっともな疑問だが、そこは被写界深度を確保して撮影するのだ。

被写界深度を深くして撮影する

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スナップモードの画面。画面左にピントの固定位置と、ピントの合う範囲(被写界深度)がグリーンのバーで表示される。

 被写界深度とは、大まかにいうとピントが合う範囲のこと。これはレンズの絞り設定で、浅くも深くもできる。

 絞りを開ければ(F値を小さくすれば)被写界深度が浅くなり、背景をボカして撮影できる。逆に絞りこめば(F値を大きくすれば)画面手前から奥までピントの合った写真を撮れる。

 スナップモードでピントを5mに設定し、絞りをF8まで絞りこむ。すると、レンズから約1.5m〜∞の範囲でピントが合う。だからピント合わせの必要がないのだ。

 この原理を利用して、レンズ付きフィルム(写ルンです)はピント合わせなしで撮影できる。スナップ写真とライカの名手『アンリ・カルティエ=ブレッソン』が、上記の設定で撮影していたことは有名である。

一眼カメラには適さない撮影方法

 この撮影方法は、ライカなどのレンジファインダーカメラに適した撮影方法だ。一眼カメラはファインダーで映像を確認しながら撮る。ピントを5m先に固定し、2m先の被写体をファインダーでのぞいたとき、その映像はボケている。映像がピンボケでは、いくらピントが合うことが頭で分かっていても、シャッターを切る前にためらってしまうだろう。

 レンジファインダーカメラでは、レンズを通さない素通しのファインダーで撮影する。被写界深度を深く設定してれば、構図とタイミングに集中できる。だから速い。瞬間を逃さない。GRのスナップモードはこれと同等のことができる。

 優秀な一眼カメラも、スナップ撮影における速さではライカやGRには敵わないのだ。

一眼カメラと同等の画質:歪みのないシャープなレンズ

 GRⅢに搭載される約2424万画素APS-Cサイズセンサーは、一眼カメラと同等の高画質を誇る。そして、新開発されたGRレンズが歪みのない画像とさらなる高解像力、高コントラストを実現した。

 センサーサイズが大型になり、レンズの開放F値が2.8とそこそこ明るい。ここで注目されがちなのが、背景のボケ具合だ。

 スマートフォンの小さなセンサーでは背景ボケが難しい(デジタル合成でボカす機能はあるが)から、よけいに取り上げられるのだろう。だが注目したいのは、隅々までくっきり歪みなく写るシャープさである。

 広角レンズは画角が広くなるほど、周辺視野に歪みが生じやすい。出来の悪いレンズは、建物を撮影したり、人物を画面の隅に配して撮影したりすると、歪んで真っ直ぐ写らない。

 だが、GRⅢは広角レンズにありがちな歪みはほとんど見られず、真っ直ぐに写る。F値開放からシャープに写る。歪まずに真っ直ぐ写ることが、もっと話題になっていいと思うのだ。

GRⅢの作例

 カラー写真はRAWで撮影後、Lightroomでわずかに露出補正をして現像している。モノクロ写真はLightroomのプリセット『白黒 コントラスト(高)』で現像した。

GRⅢと一緒に用意したいアクセサリー

リコー純正ストラップ:ネックストラップST-2

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 GRⅢの付属ストラップは、やや貧弱と言わざるを得ないだろう。気に入ったストラップを別途用意したほうがいい。

 GRⅢはコンパクトカメラながらストラップの取り付け位置は3点あり、ネックストラップでの横吊りと縦吊りに対応している。私は縦吊りが好みだから、ハンドストラップではなくリコー純正のネックストラップを購入した。

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 ST-2はナイロン製のストラップである。素材は柔らかく、首からかけても手首に巻きつけてもなじむ。GRⅢをポケットにしまっても、ナイロンストラップなら、さほどかさばらない。首にかけたストラップをピンと張ってカメラを構えると、三脚の代わりにもなる。

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予備バッテリーと充電器

 GRⅢの撮影可能枚数は約200枚だ。1日しっかり撮影するには心許ないから、予備バッテリーと充電器を用意しておきたい。

 USB給電にも対応しており、充電が足りなくなったらモバイルバッテリーからの充電も可能だ。ただ、スナップシューターとしての性格を考えると、充電しながらの撮影は現実的ではないだろう。充電がなくなったら、バッテリーを交換したほうが扱いやすい。

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GRⅢはこんな人には向かない

ごまかしが利かないカメラ

 GRⅢは、最新のデジタルカメラやスマートフォンのように、シャッターを切りさえすれば美しい絵が撮れるカメラではない。GRの写りは自然の見た目に忠実で、悪くいえば地味である。光の条件をよく考えないと、印象に残る鮮やかな写真は撮れないのだ。

 搭載されている28mmの単焦点レンズはズームができないから、足で構図を考えなければならない。28mmはごまかしの利かない画角で、何も考えずにシャッターを切ると、何を撮りたかったのか分からない散漫な絵になってしまう。

 逆にいえば、自然に忠実な絵作りと広角単焦点レンズという縛りのおかげで、腕磨きには適したカメラだろう。GRⅢでうまく撮影できるようになれば、写真の腕も上達しているはずである。

カメラに多機能を求める人

 GRは誕生以来、最強のスナップシューターとして進化してきた。軽さと堅牢性を備え、広角単焦点レンズを搭載した高画質なカメラ、というコンセプトは1996年からブレていない。万人受けはしない尖ったカメラである。風景、ポートレート、旅、乗り物、建築など、1台で全てをまかないたい場合は、GRは適さない。

 私はGR以外に、万能カメラとしてルミックスDMC-FZ300を愛用している。用途に応じて使い分けるのだ。

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GRⅢまとめ

 GRⅢは1996年にフィルムカメラGR1が登場して以来、一貫したコンセプトのもとに進化してきた。他では代用できない尖ったカメラである。

 コンパクトなサイズに大型センサーと高性能レンズを搭載し、優れた画質と速写性を有している。まさに最強のスナップシューターだろう。

 決して優等生ではないが、スマートフォンとは別にわざわざカメラを用意する理由が、GRⅢにはあるのだ。

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Takashi

元靴メーカー勤務の職人、現在はWEBライターとしてアウトドア系メディアで執筆しています。靴業界での10年以上の経験、趣味のアウトドア経験を活かして書きます。大阪府山岳連盟「青雲会」所属・読図ナヴィゲーションスキル検定「シルバーレベル」・2018年「狩猟免許」取得・ランサーズ「認定ランサー」・フルマラソンベスト3時間29分。

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