リコー GR3

写真とカメラ

リコーGR Ⅲ|20年以上ブレずに”深化”を続けたカメラ

2020年4月5日

 iPhone 4 が好きだった。ステンレスとガラスの精巧な質感は、それがデジタル製品であることを忘れさせてくれた。緻密に設計された工業機械のようだった。

 「新しいiPhone 4 は、クラシック・ライカのように優美で美しい」

 故スティーブ・ジョブス氏はiPhoneを機械式ライカに例えた。それはおそらく、外観の美しさだけをなぞらえたのではないだろう。

Ricoh GR3 1/800 f8 ISO400 Lightroomで色調補正。

 iPhone 4 の手になじむサイズ感、シンプルな操作性はライカそのものだった。

 世界初の35mmフィルム式カメラであるライカには、写真を撮るためだけの機能しかない。シャッタースピードと絞りをダイヤルで決める。ピントを合わせる。シャッターを切る。フィルムを巻き上げる。よく整備されたライカを手にしてみれば分かるが、この一連の動作が実にスムーズに行えるのだ。

 写真館のカメラマンが使うような大型カメラが主流であった時代に、上着のポケットに収まるライカの登場は世界に衝撃を走らせたことだろう。日本に初めてiPhoneが上陸したときのことを思いだす。

 だが、画面サイズが肥大化したiPhoneは迫力のある映画を楽しめるようになった代償に、ジーパンの後ろポケットでは足りなくなった。センサーサイズの大きい一眼カメラは超高画質の写真を撮れるが、毎日持ち歩くには覚悟がいる。

GRは小さく速く、よく写る

Ricoh GR3 1/50 f8 ISO200 Lightroomで色調補正。

 1996年に誕生したリコーGRシリーズは、フィルムからデジタルへと遷移した現在においても、”4Sまでの” iPhone やライカのようにコンセプトがブレない。GRが目指すのは、高画質、携帯性、速写性であり、それらは使えば使うほど手になじみ”深化”していく。

 GRは流行の機能を詰め込んだ便利なカメラではない。高画質とはいえ、搭載される28mm(35mm版換算)単焦点レンズは撮影者のフットワークが試される。カメラマンをサポートする機能はほとんどない。

 シャッターを切ればそこそこの絵が撮れるカメラとは違い、ただただ、その瞬間を記録するだけのカメラだ。例えば高価な万年筆を使っても、文章は書けるがベストセラーが書けるとは限らないように。

 コンセプトが変わらない限り、毎年の製品発表に踊らされることはないだろう。製品サイクルの早いデジタルカメラ業界において、20年以上ほとんど外観が変わらず、尖ったコンセプトを貫いているカメラは他には見当たらない。GRは日本で一番、ライカに近いカメラなのかもしれない。道具が歳を重ねても、古びることがないのだ。

GRは写真が撮りたくなるカメラ

Ricoh GR3 1/500 f7.1 ISO100 Lightroomで色調補正。

 すでに述べたとおり、GRを使ったからといって良い写真が撮れるとは限らない。しかし、毎日持ち歩いて、毎日フィルム1本分(36枚)を撮影し、それを10年も続ければ物になるかもしれない。果たして10年も続くだろうか――。だが、やってみようかと思わせるのが、GRというカメラであるのだ。

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Takashi

元靴メーカー勤務の職人、現在はWEBライターとしてアウトドア系メディアで執筆しています。靴業界での10年以上の経験、趣味のアウトドア経験を活かして書きます。大阪府山岳連盟「青雲会」所属・読図ナヴィゲーションスキル検定「シルバーレベル」・2018年「狩猟免許」取得・ランサーズ「認定ランサー」・フルマラソンベスト3時間29分。

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