自然光での撮影に加え、フラッシュで光をコントロールできれば写真表現の幅は劇的に広がるだろう。それはコンパクトカメラ、GR Ⅲでも同じことだ。
カメラの高感度性能が進化し、フラッシュは必要ないとする人もいるが、GR Ⅲのようなスナップカメラでもフラッシュを使いたいシーンがある。
そこで外付けフラッシュを物色し、選んだのが純正フラッシュ『ペンタックス:オートフラッシュAF201FG』である。
ここでは、AF201FGの使い勝手を解説しつつ、具体的な使い方を、GR Ⅲ との簡単な作例でご紹介したい。
目次
GR Ⅲ は内蔵フラッシュが省略された
先々代のGR、先代のGR Ⅱからフルモデルチェンジを経たGR Ⅲ。ボディーサイズが一回り小さくなり、1/1.17型センサー時代のGR DIGITAL Ⅳと同程度のサイズとなった。そのかわり、これまで搭載されていた内蔵フラッシュが省略されたのだ。
GRは基本的にスナップカメラだし、センサーサイズも1/1.17型からAPS-Cへ大型化され、高感度性能が向上している。「”暗い”を理由にフラッシュを使う」ということは、ほとんどないのかもしれない。
しかし、それでもフラッシュを使いたいシーンがある。
GR Ⅲでストロボを使いたいシーン
その一例が日中シンクロだ。
日中シンクロとは、自然光にストロボの光を混ぜて使うこと。太陽光による逆光で、暗くなりがちな手前の被写体の露出(明るさ)を補う。このような使い方は日中シンクロの典型といえるだろう。上記のシーンで、被写体に露出(明るさ)を合わせると背景が明るくなりすぎてしまう。


また、料理撮影や室内での人物撮影なども、フラッシュを上手に使いたい。
不自然な影をコントロールしつつ肌や料理の質感を美しく再現でき、より魅力的な写真が撮れることは間違いないだろう。
ペンタックスオートフラッシュ|AF201FGの特徴

GR Ⅲはコンパクトカメラだ。その機動性を損なわないためには小型のフラッシュがいい。フラッシュのガイドナンバー(光量を表す数値)は、スナップやお手軽写真なら20もあれば十分だろう。
AF201FGならP-TTL発光(オート発光)にも対応し、バウンス撮影もできる。これがAF201FGを選んだ主な理由である。
- P-TTLオート:対応
- ガイドナンバー:20
- フラッシュ発光モード:P-TTLオート(先幕シンクロ、後幕シンクロ)、マニュアル(FULL、1/4)
- バウンス照明:上下可変式クリックストップ付
- 内部電源:単4形電池2本(発光回数:約80回)

軽くてコンパクト

AF201FGはGR Ⅲにちょうどいい小型フラッシュだ。GR Ⅲよりさらに小型な本体は、持ち出しをためらうサイズでなはい。
外形寸法は約65×72.5×31mm。重量約140g。
この小ささながら十分な光量を有し、防塵防滴に対応している。これでGR Ⅲが防塵防滴ならいうことないのだがなぁ……。

いずれにせよ、GRと一緒に携帯しても荷物にならないのがいい。お気に入りのサコッシュに入れて気軽に持ち運べる。
シンプルな操作性

AF201FGは操作がシンプルで、外付けフラッシュを初めて使う人でも迷わず使えるだろう。
操作は電源ボタンを兼ねたモードダイヤルを設定するのみ。基本的にはダイヤルでオート発光(先幕シンクロ、後幕シンクロ)、マニュアル発光(FULL、1/4)を選ぶだけだ。より細かい明るさ設定は、GR Ⅲ本体で行える。
バウンス撮影ができる

AF201FGはフラッシュの角度を上下方向に動かせ、バウンス撮影も可能だ。
バウンス撮影とは、フラッシュの光を壁や天井にバウンス(反射)させる撮影方法のこと。フラッシュを直接照射するより、柔らかく自然な雰囲気で撮影できる方法だ。
バウンス撮影はフラッシュの角度を調整できるモデルでないとできない。小型フラッシュは、バウンス撮影に対応していないモデルも少なくない。
そんな中、AF201FGは上135度〜下10度の範囲で可動し、バウンス撮影に対応している。その威力は作例を見て欲しい。
P-TTLオート発光に対応
AF201FGは、ペンタックスブランド、またはリコーブランドのTTLに対応したカメラで、オート発光ができる。
TTLとは「Through the Lens」の略。シャッターを切ると本発光前にテスト発光し、レンズを通した光を計測してから最適な明るさを自動で導き出してくれる。(つまり2回発光する)
複雑なマニュアル設定を必要とせず、オートモードに設定さえすれば標準の明るさで撮影できるのだ。この手軽さが、コンパクトカメラであるGRとも相性がいいと思っている。
GR Ⅲ+AF201FGの使い方と作例
外付けフラッシュでどの程度写真が変わるのか。いくつかの簡単な作例を見てみよう。
天井バウンス撮影の方法

バウンス撮影のやり方は簡単だ。写真のように、フラッシュを上に向けて、天井に光が跳ね返るように調整すればOK。
注意すべきは、白い天井を選ぶこと。白以外の天井に光を反射させると色を拾ってしまい、”色かぶり”という現象が起きる。色がかぶると見た目どおりの色が再現できないから気をつけよう。
フラッシュを使ったライティングは、とりあえず天井にバウンスさせればOK、という世界では、もちろんない。突き詰めると非常に奥が深く難しい。
しかし天井バウンスを使えば、アマチュアの僕でもそこそこの絵は撮れる。つまり、だれでも扱えるという点がAF201FGの良さなのだ。
作例

部屋のLED照明だけで撮影した。RAWで撮影後、Lightroomで補正をせずに書き出すとこうなる。カメラが決めた露出はこんなにも暗いのだ。

そしてこれが、フラッシュなしでRAW撮影(露出補正をプラス)し、Lightroomで補正をかけたもの。まぁ悪くはないが——。

フラッシュを天井にバウンスさせて撮影した。天井から降り注ぐ光が被写体にまんべんなく当たり、影が消えて柔らかい印象になった。


これに比べると、フラッシュなしの写真はLightroomで補正したものの、影が目立って硬い印象の写真だ。そう、RAWで撮影して後から補正をかけても、影を消せるわけではない。今回は観葉植物を撮影したが、それは人物でも同じこと。
顔にかかった影をなくし、肌を美しく撮影するにはフラッシュ光が欠かせないのだ。

ちなみに、これがバウンスをさせずにフラッシュを直接照射した写真。いかにもフラッシュを焚きました、という写真だ。バウンスができないフラッシュを使うとこ、概ねこのような絵が撮れる。
フラッシュを印象的に使った作風もあるのは確かだが、多くの人は、天井バウンスで撮影したような自然な写真が撮りたいのではないだろうか。
AF201FGの気になるところ
発光回数が少ない
AF201FGは本体が小型で、電池は単4電池2本のみだ。そのため、発光回数が約80回と、ガイドナンバー40前後の一般的なストロボ(機種にもよるが1000回程度発光できる)と比べると、少ない。
だが、そのようなフラッシュはAF201FGよりはるかに大きい。コンパクトさをとるか、光量や発光回数をとるか。
積極的にAF201FGを使う場合は、予備電池を忘れずに用意したい。
マニュアル発光がフルと1/4の2択しかない
AF201FGは基本的にオートモードで使うものだろう。マニュアル発光はフルと1/4しか選択できない。まぁGR ⅢとAF201FGの性格を考えれば、十分な仕様といえるだろう。
フラッシュの光量を細く調整して、光を完全にコントロールするような撮影には向かない。
*
カメラの性能が進化し、光量の足りない暗い環境でも、それなりの写真を撮影できるようになった。それでも、より美しい写真を撮るにはぜひフラッシュを利用してみよう。
AF201FGはアマチュアの僕でも簡単に扱えるフラッシュだ。これでライティングの効果を学び、ステップアップするのも悪くないだろう。
GR Ⅲに限らず、カメラを所有している人でバウンス撮影をやったことない人は、ぜひ外付けフラッシュを用意してみてほしい。