トラベラーズノートの魅力のひとつは、経年変化による”味”を楽しめることだろう。
日を増すごとに、汗や脂、コーヒーや雨水が分厚い革カバーに染みこんでいく。食事中のテーブルに無造作に放り出し、モノをたくさん詰め込んだバックパックに適当にしまうから、気づいた時には傷だらけである。
そのたびに手入れをし、使い込んでいくその過程の中で、新品のころのよそよそしさが消えていく。そうしてできあがったトラベラーズノートは、世界で一冊のオリジナルノートだ。
トラベラーズノートは、ラフな風合いの革カバーをまとった無骨なノートである。世界のトラベラーズノートユーザーには、その無骨なノートをおしゃれに彩り、作品と呼んでいいほどに昇華させる人がいる。
美しく、個性的に装飾されたノートを目にするたびに、私もこのように使いこなせたらなと羨ましく思うが、とても真似できそうにないと溜息をつく。
だが、すっかり手になじんだトラベラーズノートを開くだびに、少しぐらい飾ってみようかと思えてきた。センスのない私でもできるカスタマイズといえば、チャームだ。
トラベラーズノートにチャームを取り付ける。チャームはトラベラーズカンパニー純正品でもいいし、市販のチャームでもよい。
「どうせなら、チャームも経験変化を味わえるものがいい」と考え、選んだチャームは、トラベラーズカンパニー純正の『ブラスタグ』だ。
さっそくWEBで注文し、届いチャームを取り付けて一言こう思う。
「失敗した」
真新しいブラスタグは、履き下ろしたばかりのスニーカーのような照れくささが滲み出ている。よくなじんだ革カバーには、あまりにも不釣り合いであった。
「――使えばなじんでくれるだろうか」

一抹の不安をかかえながら、自宅で、出先で、トラベラーズノートを今までどおりラフに扱った。汗や脂で汚れ、次第に傷ついたチャームはほどよく酸化し、鈍い輝きを放ちながらノートと一体化した。
風合いを増した革カバーに、くすんだ真鍮製のタグはよく似合う。新品のブラスチャームに抱いた不安は取り越し苦労であった。
トラベラーズファクトリーのブラスタグ

純正ブラスタグは2種類ある。
TFブラスタグ JAPAN TRIP柄
日本の象徴、富士山をモチーフにしたタグだ。私はこちらを選んだ。東京の職人が丁寧に刻印しており、品質は確かである。
- 素材:真鍮
- サイズ:25mm
- MADE IN JAPAN
- 価格:480円(税抜き)
- トラベラーズカンパニー公式サイト
TFチャーム 北斗星
27年間、上野と札幌を結んでいた寝台特急列車をモチーフにしたタグだ。旅するように毎日を過ごすという、トラベラーズノートのコンセプトやイメージにぴったりのタグと言えるだろう。
- 素材:真鍮
- サイズ:25mm
- MADE IN JAPAN
- 価格:1000円(税抜き)
- トラベラーズカンパニー公式サイト
いずれも、トラベラーズノートのゴムバンドにタグを通して結ぶだけ。手軽にオリジナリティーがだせるので、ぜひ試してみよう。