ヒノデ6×30-B+

道具

バードウォッチングの双眼鏡に6倍という選択肢

2020年9月14日

 大阪の都市部にも数々の野鳥が生息していることを知った。それも自宅から徒歩10分圏内にだ。
 マンションのちょっとした花壇にはシジュウカラやメジロが集まり、河川敷にはカワセミがいる。アシ原からはウグイスのさえずりが聞こえ、そのはるか上空ではタカ類とカラスがバトルを繰り広げている。

 ジョギングでただ通りすぎるだけの風景だったが、そこにある生態系に気がつくと、ただの河川敷のようだが豊かな生態系を育む場所であることを知った。自然とは、何も3000m級の山々だけではないのだ。

 バードウォッチングが趣味に加わり、そうなると気になるのが双眼鏡だ。バードウォッチングでは8倍〜10倍の双眼鏡が定番ではあるが、ここではあえて6倍の双眼鏡をご紹介したい。

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守備範囲の広い6倍の双眼鏡

ヒノデ6×30-B+
コンパクト双眼鏡より大きく重たいが、旅行や散歩に持ち出しても苦にならないサイズと重量だ。それでいて見え味は格段にいい。

 双眼鏡は何もバードウォッチングだけの道具ではない。風景、スポーツ・ライブ観戦、美術品の鑑賞など、遠くにある鑑賞物全てが双眼鏡での観察対象になり得る。このあたりは鳥・旅・散歩・アウトドア。オールラウンドに使える双眼鏡が手放せない理由|ヒノデ5×21-A5も参考にしてほしい。

 6倍の双眼鏡、特に口径30mm(6×30)の双眼鏡は、中型の本格双眼鏡の部類に入る。口径20mmクラスの小型双眼鏡より大きく重くはなるが、その分視野は明るくクリアで解像感の高い像を得られる。単純に、小型双眼鏡よりワンランク上の双眼鏡と言えるだろう。

 双眼鏡の性能は倍率で決まるわけではなく、高倍率=高性能では決してない要はバランスが大切で、6×30の双眼鏡はこの点が大変優れており、各国の陸軍の双眼鏡にも採用されているスペックだ。その守備範囲は広く、風景、スポーツ・ライブ観戦、遠くの動植物、天体観測、散歩や旅行にと幅広く対応できる。

 もちろんバードウォチングにおいても、6倍という低倍率がメリットになる場面が多々あるのだ。

広い視野で野鳥を容易に捉えられる

 バードウォッチングをやってみたことのある人なら分かってもらえるだろう。まず鳥がどこにいるか分からない。目で見つけられても双眼鏡で捉えられない——。

 そう、野鳥をじっくり双眼鏡で観察するのはけっこう難しい。そこで、視野が広く明るい『6×30機』の出番だ。

「バードウォッチングの双眼鏡は8倍〜10倍がおすすめです」というのが定説だ。これは手ブレの影響を受けにくく、視界いっぱいに野鳥を捉えられる倍率だからだろう。実際にバードウォッチングでは『8×30』や『8×40』の双眼鏡が主力と言える。
 ただし、これは双眼鏡の扱いに慣れ、野鳥の動きや習性を理解していることを前提にした場合ではないだろうか。

 例えば、少し暗い森の中で、枝から枝へと素早く飛び回るエナガ、シジュウカラ、ムシクイなどを追いかけるのは簡単ではない。初心者の場合、同じような木々が生い茂った場所で視野の狭い双眼鏡では、今どこをのぞいているのかさえ分からなくなることがある。

 これが6×30機だと、比較的簡単に野鳥を見つけられる。それは8倍の双眼鏡と比べ倍率が低いことで視野が広く、しかも明るいからだ。
 野鳥の声が聞こえた方向に双眼鏡を向け、広い視野を生かして周辺をよく探してみよう。すると意外とすんなり野鳥を見つけられる。

「そんなに低い倍率で野鳥を観察できるのか?」と疑問に思うかもしれないが、森の中に限って言えば倍率に不足を感じたことはない。なんなら5倍の双眼鏡でも十分なぐらいだ。
 よくできた双眼鏡を選べば低倍率でも、いや、低倍率だからこそ、羽の1本1本まで解像した素晴らしい像を得られるのだ。普及品クラスの下手な8倍機より、よほどよく観察できると実感している。

日の出光学の『ヒノデ6×30-B+』

ヒノデ6×30-B+
本体の他に、ストラップ、ケース、接眼レンズキャップ、写真にはないが対物レンズキャップが付属する。

 双眼鏡という特殊な道具についての正しい知識を持った人は多くはないだろう。
 「双眼鏡の性能は倍率に比例する」という誤った認識のため、市場には50倍ズーム双眼鏡のような粗悪品レベルの双眼鏡が堂々と販売されているのが実情だ。
 そのため6倍機の選択肢は少ない。その中から選んだのが、ヒノデ6×30-B+である。

  • 対物レンズ有効径 : 30mm
  • 倍率 : 6倍
  • 実視界 : 8.4度
  • アイレリーフ : 20mm
  • 明るさ : 25
  • レンズ、プリズムのコーティング: 全面マルチコート(7~9層) 撥水・ハードコート
  • 最低合焦距離 : 4m
  • 重さ : 482g
  • サイズ : 横 161mm × 縦 105mm × 厚さ 51mm
  • 防水性能 : 深さ3mの水中で、3分間(窒素充填防水)

 『日の出光学』という日本の双眼鏡メーカーが手掛けたモデルで、安価ながら大変に優れたモデルだ。
 ニコンやキヤノンと比べると知名度のないメーカーかもしれないが、真に実用的な双眼鏡を追い求め、非常によく見える双眼鏡を手の届く価格で提供してくれる良心的なメーカーである。

 そのヒノデ6×30-B+であるが、実は他社から似たようなモデルが販売されている。Vixen(ビクセン)の『アトレックライト BR6X30WP』とKowa(コーワ:あのキャベジンコーワで有名だ)の『YFⅡ30-6』である。
 この3台の双眼鏡は外観がそっくりで、おそらく同じOEMメーカーが生産する同じボディーをベースに開発されたモデルだろう。複数のメーカーがこぞって採用するボディーということは、その素性が優れていることを示唆する。
 実際に大手家電量販店でビクセンとコーワの6倍機を試してみたが、どちらも十分な見え方だった。

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 それでも僕が選んだのはヒノデ6×30-B+。その理由はこうだ。

優れたコーティングと非球面レンズの採用

ヒノデ6×30-B+
対物レンズのコーティングの様子。黄色がかったコーティングで、内部反射がよく抑えられていることがうかがえる。

 ヒノデ6×30-B+には、非球面レンズを採用し、20万クラスの高級双眼鏡に匹敵するレンズやプリズムのコーティングを施している。

 難しい光学設計の話は『日の出光学公式サイト』を確認してもらうとして、つまり、非球面レンズを採用したことで視界の隅まで歪みのない像が得られ、全てのレンズやプリズムに7〜9層のフルマルチコーティングを施したことでカラーバランスが良く、スペック以上に明るく、シャープでクリアな像が得られるということだ。

 初めてヒノデ6×30-B+を使ったときは、確かに良いとは感じるが、この凄さが分からなかった。それは『ヒノデ5×21-A5』の、非の打ちどころのない視界に慣れていたせいだろう。何度かバードウォッチングで使用してみて、ようやくその実力を実感できた。
 その見え方は、一瞬、目がちかちかするような鋭い解像感と明るい視界、それでいて自然な見え方に、突然視力が上がったように感じるほどだ。

 眼鏡を使用してものぞきやすく、防水で丈夫な点も見逃せない。
 ビクセンやコーワの6倍機より高価だが、双眼鏡は家電製品のように毎年新モデルが発表される訳ではなく、良い双眼鏡は一生モノと言っても過言ではない。
 安物を買って後から買い換えることを考えると、初めから上位モデルを選んだほうが、結局かしこい買い物になるのだ。

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6倍という低倍率がメリットでありデメリットである

 守備範囲が広く、バードウォッチングにも十分使えるヒノデ6×30-B+ではあるが、その倍率の低さはメリットでありデメリットでもある。
 干潟や大きな湖、河口から海鳥の観察、上空を舞うタカ類の観察など、野鳥がはるか遠方にいる状況では力不足と言わざるを得ない。そのような環境では8倍〜10倍の双眼鏡、または望遠鏡の出番であろう。
 大阪南港の開けた干潟にヒノデ6×30-B+を持ち出したが、ただでさえ識別の難しいシギ類の観察では6倍機は非力であった。

 バードウォッチングに使うが、それ以外の用途にも幅広く使いたい場合は文句なしにヒノデ6×30-B+をおすすめする。
 ただし、主にバードウォッチング用途に使い、開けたフィールドでの使用がメインなら、やはり8倍〜10倍の双眼鏡がおすすめである。

バードウォッチングに6倍の双眼鏡を

 バードウォッチングには8倍~10倍の双眼鏡を、というのが定説だが、6倍機も観察に十分耐えうる。広い場所での観察や、または経験年数を重ねることで迫力不足を感じるかもしれないが、明るく広い視野で野鳥を捉えやすいことや、守備範囲が広いことが6倍機のメリットだ。
 僕の主力双眼鏡は、長きにわたってヒノデ6×30-B+になることだろう。だまされたと思って一度6倍機を使ってみてほしい。この素晴らしさは、実際に使ったことがある人でなければ分からないのだ。

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Takashi

元靴メーカー勤務の職人、現在はWEBライターとしてアウトドア系メディアで執筆しています。靴業界での10年以上の経験、趣味のアウトドア経験を活かして書きます。大阪府山岳連盟「青雲会」所属・読図ナヴィゲーションスキル検定「シルバーレベル」・2018年「狩猟免許」取得・ランサーズ「認定ランサー」・フルマラソンベスト3時間29分。

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